コロナ禍での通販・EC 各社の対応と行動

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難局をいかに乗り越えていくか

新型コロナウイルスの感染拡大はネット販売事業者を含む通販業界全体に大きな影響を及ぼしている。コロナ前後で大きく変わった状況に、各社とも対応に追われた。コロナ禍の中で通販・EC実施事業者はどのように対応し、どう行動してきたのか。各社の取り組みを見ていく。

「顧客対応」や「働き方」をどう変えたのか?

オンラインカウンセリングでリレーション強化

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令されて以降、通販実施企業における顧客コミュニケーションのありようも変化しているようだ。

例えばオルビスでは、自宅待機中の店舗スタッフから有志を募り、自社ECで有人チャットサービスを始めた。休業が続く店舗同様の購入体験の提供を図る。顧客から「画期的」「安心して購入できる」「このような状況で仕事をしていただいてありがとうございます」といった声が寄せられており、増員も予定。専任のチャットオペレーターを育成し、定番化も検討する。

ゴールデンウィークには「Zoom」でオンラインカウンセリング(事前予約制)を実施。「当初(顧客の)緊張もみられたが、会話が弾むにつれて積極的に質問してもらえるようになった」(同社)と、関係強化につながっているようだ。今後、追加実施も検討していくという。

インスタグラムを活用した交流では、200を超える質問を受け、マスク着用時のメーク法や肌ケアなどについて回答。アプリでもマスクで崩れないメーク、自宅での快適な過ごし方を提案するコンテンツを配信している。

店舗スタッフが動画配信

ファンケルではインスタグラムを活用して店舗スタッフが美容方法や限定キットの紹介動画を配信。ラインは販促から店舗の休業告知中心の情報配信に切り替える。ツイッター、フェイスブックは過去のコンテンツを活用して「自宅で健康ストレッチ」、「おうちレシピ」など、在宅中の運動不足や体調管理に役立つ情報発信を強化する。

化粧品は、マスク着用時の肌ケア等のコンテンツを配信。健康食品は、必須栄養素、免疫や抗ストレス等、栄養摂取に適した発芽米・青汁の提案を強化。肌着雑貨は、腰の疲れないクッション、運動不足解消アイテムを取り揃える。抗菌手袋・ウェアの開発、抗菌スプレーなどウイルス対策商品も緊急で調達を進める。

一方、急な収入減で支払い困難な状況を鑑み、督促関連の対応を一時的に停止している。

このほか、新日本製薬では会報誌で手作りマスクの作り方を企画。乳酸菌、青汁などヘルスケア商品の提案を増やす。キューサイは、会報誌で在宅時に簡単にできる体操の紹介を予定している。粉末ケールをプレゼントするSNSキャンペーンも行っており、料理への活用など自宅での過ごし方を提案する。小林製薬はビタミン類や乳酸菌、DHAなどベースサプリの提案を強化。ディノス・セシールも巣ごもり需要を受けた商品提案を強化する。

ランクアップは、ゴールデンウィークに毎日、インスタグラムでアイブローやアイライナーの使用法、小顔マッサージ、アイメークやハンドケアマッサージの方法など自宅で過ごす顧客の状況を意識したテーマでライブ配信した。今後も毎週金曜日に配信を行う。

アスクルは、在庫不安定な商品の販促を行わないようにしている。また、衛生・介護用品の定期配送サービスの新規申し込みは停止している。一方、医療・介護施設のBtoBの顧客も多く、安定した医療物資供給への期待が高まっている。このため2020年4月以降は、医療・介護施設の顧客のみ特定の商品を購入できるシステム改修を行い、特定の商品を販売するスキームを構築した。

「置き配」要望が増加

また、コロナの感染拡大に伴い、顧客からは増えている要望は「置き配」など受け取りに関するもので、これに対応する事業者も増えている。

ファンケルは、「指定場所ダイレクト」の配送案内の情報発信の強化。アスクルは4月22日に非対面の配送に対応。ランクアップは、製造や梱包、配送の対策をメルマガ等で開示する。山田養蜂場も自社通販サイトに特設ページを開設。製造から出荷までの取り組みでは、同業務にかかわる社員全員が定期的にコロナウイルス抗体検査を行い、商品の取り扱いは、コロナウイルス検査で陰性となった者のみが行っている。工場内へのウイルス侵入を防ぐため、原材料や資材入荷では、荷受け時にアルコール溶液等を噴霧して消毒を行うなどしている。

オルビスが自宅待機中の店舗スタッフから有志を募って開始した自社 EC での有人チャットサービス(画像はイメージ)

テレワーク推進で環境整備等が課題に

新型コロナウイルスの感染拡大は通販実施企業を含め各社の働き方に大きな変化をもたらしている。端的な例は在宅勤務を含めたテレワークの導入だ。すでにテレワークを導入してきた事業者も存在していたが、やはり、コロナを受けて本格的に導入したり、初めて導入した事業者も多く、未知の働き方に企業も従業員も戸惑うこともあったようだ。

「Zoom」などのシステムを活用

ファンケルはテレワークのツールに「Teams」を利用。資料共有のしやすさ、安定性の面から選択した。在宅勤務の増加に伴い、システム負荷を下げるため、こまめなネットワーク切断や参加者を絞ること、音声のみの参加などを判断している。出社時も社員間の距離を保ちコミュニケーションに利用する。オルビスは、社内コミュニケーション、情報共有に「Slack」を利用。公開チャンネルの利用で情報伝達が早く、連携しやすいなど使い勝手の良さから選択した。音声通話も容易で内線代わりに活用する。グループ全社では、通信品質の安定性を短期間で導入が可能なため会議に「Zoom」を活用。セキュリティリスクに配慮して、パスワード設定など社外アクセスを制限する。

新日本製薬は、「Teams」を使う。セキュリティ担当が運用を管理。部署間のグループ作成は、申請を必須にする。キューサイは「SkypeforBusiness」を利用。ビデオ・音声通話、画面共有など複数の機能を使い分ける。スカイプ会議が主流になり、資料共有は事前にメールで行う。

ディノス・セシールは、従来から使うチャット、テレビ会議アプリケーションを利用。運用面では、事前に誓約書を提出して社内PCを使い行う。テレワーク勤務者は、関係者への始業・終業の連絡、業務内容の報告やスケジュールの共有化を義務にしている。また、外部取引先とのコミュニケーションは、ウェブ会議のみ許可している。

アスクルは、「Teams」、「Slack」、「Confluence」などを使い分ける。汎用性が高いことから、コロナ以後に「Zoom」を導入。外部とのウェブ会議に使う。もとも全社員はノートPCを支給していたが、在宅勤務推進に伴い、業務内容によって業務委託や派遣社員にもノートPCを貸与する。

ユーグレナは、社内会議に「Meet」と「Zoom」を併用。「Zoom」は資料共有、大人数の対応、録音に適しており、週1回200人規模の朝礼に使う。アカウントを制限し、予約で使う。

テレワーク長期化でケア重要に

多くの企業がマネジメント層の意識的なコミュニケーションを推奨する。ファンケルは「健康状態の把握など積極的に声がけ」、オルビスは「仕事のリズムの作り方や、休憩の仕方、適度な運動の呼びかけを配信」をする。

2社は店舗スタッフの多くが自宅待機する。各店長がケアしつつ、ファンケルは、社内ニュースの全社メール配信、「Youtube」配信を実施。オルビスも在宅で行える学習の提供、美容部員向けに、定期的に経営層から感謝激励のメッセージを届ける。

アスクルは、4月から朝礼の代替手段として「社長動画メッセージ」を配信。キューサイも在宅勤務以降、社内SNSを活用するようになった。面談でのコミュニケーションが行えないため、社内SNSを活用し、社長から定期的にメッセージを投稿する。また、各自の業務予定や体調を報告しあう朝礼を行い、業務終了時は日報を提出する。

ジャパネットホールディングスは、役員や部署間の情報共有のため、配信による全社朝礼を実施。医師等の指導によるストレッチも行う。週1回の選択式研修、各課で毎日、顔見せたコミュニケーションを行う。業務外でも、会社主導でテーマごとの「オンライン飲み会」を企画する。

ランクアップは、「Zoom」で全社員が出席する朝礼で「オンラインラジオ体操」を行うほか、1人1000円支給する「オンラインランチ会」で社員間の交流をサポートする。また、従来からある部活制度(一人あたり2000円を補助)もオンラインで定期的に開催している。顧客との交流を目的に「オンライン小顔講座」なども企画する。

フェリシモは出退勤時にチャットによる情報共有、朝礼・昼礼をグループで行う。在宅に配慮し、「音声会議が原則」(キューサイ)、「男女問わずビデオONは強制しない」(アスクル)とする会社もあるようだ。

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