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ベルーナ、携帯通販を大幅見直し 集客強化に向け他社サイトの”コーナー”に

モバイル通販を行う企業にとっての最大のテーマは恐らく「モバイルからの新規客の獲得」だろう。これはモバイル専業に限らず、既存のカタログ系総合通販企業にとっても同じこと。モバイルは、カタログを読んだ顧客の受注ツールとしての活用は進んでいるが、モバイル単独での新規顧客の獲得は進んでいないのが現状ではないだろうか。モバイル通販は10~20代前半の顧客が多いこともあり、これまで各社が培ってきたブランドや信頼は、パソコンを利用したネット販売以上に通用しないのがネックとなっている。
50~60代の中高年層が顧客の中心ということもあり、これまでネット販売への対応が遅れていたベルーナ。しかし、近年は取り組みを強化しており、中でもモバイル通販に関しては外部企業との連携を進めるなど積極的な施策を打ち出してきた。
2009年5月27日、ベルーナはGNTとモバイル通販事業で協業すると発表した。両社は、ベルーナが展開する、全6ブランドのモバイル通販サイトを共同で運営。実際のサイト運営や集客、マーケティングはGNTが手掛けるほか、ベルーナは商品調達や配送、決済などを行うという形を取った。

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ソーシャルメディアに移行

協業の発表から1年弱。ベルーナは、モバイル通販事業のさらなる見直しを決めた。独立した通販サイトとしての展開をやめ、3月18日、GNTが運営するソーシャルメディア「mobion(モビオン)」のショッピングコーナーとしたのだ。
モビオンは日記や掲示板などを備えたソーシャルメディアで、アバター(ネット上の分身)やゲーム、着うたなどのデジタルコンテンツを提供している。会員は約120万人で、GNTが運営する「モビオンショッピング」では健康食品を中心に、雑貨や衣料品などを販売している。
モビオンの利用者はF1層が中心だ。
ベルーナのモバイル通販サイトをモビオンのコーナーと位置付けることで、集客力を大幅に向上させる狙いがある。一方、GNTではモビオンにさまざまなサービスを追加していく方針で、ベルーナの通販サイトを取り込むことで販売する商品のジャンルや点数が増えるというメリットがある。

利用者の意見吸い上げる

モビオンのコミュニティー機能を使った取り組みも行う。GNTの「公式グループ」としてベルーナの掲示板を立ち上げ、会員が商品の情報交換などを行う場とした。モビオンにはこうした掲示板が6700ほどあり、このうちGNTの用意した公式グループは60程度。GNT公認とすることで、利用者は安心感を持って利用することができるわけだ。
登録者を集めるための手段として用意したのがアバター用のアイテムだ。掲示板に登録した会員には、ベルーナで販売する衣料品などをモチーフとしたアイテムをプレゼントする。そのため、開設から10日程度で登録者数は2000人を超えたという。書き込む際におすすめする商品のタグをコピーして、リンクを表示できるようにする形も計画しており、将来的には購入に結びついた際に疑似通貨での還元も考えている。
ベルーナでは、顧客の声を拾う場としてコミュニティー機能を活用する考えだ。これまで、顧客の声を直接聞けるのはコールセンターに限られていた。ただ、SNSなどのCGM関連は、自社で管理・運営するのはリスクがつきまとい、新規の集客も難しい。そこで、よりモビオンのCGM機能をダイレクトに活用できるように、サイト自体を移行したというわけだ。
アバター用のアイテムに関しても、今後はベルト、ワンピースなど人気の商品をアイテム化して、利用者がコンプリートしたくなるような仕組みとしていく。「カタログに掲載されている、人気モデルと同じようなコーディネートができるのも面白いのではないか」(GNTの河本直己EC事業部業務統括部長)という。

仮想キャラクターを活用

モビオンショッピングでは「販売員」という仮想のキャラクターを用意しており、利用者から好評だという。男性と女性のキャラクターが、おすすめ情報などを毎日発信していくというものだ。「キャラクターづくりがうまくいっており、利用者の購入意欲も増加させているのでは」(同)。ベルーナのモバイル通販でも、同様なキャラクターを用意する考えだ。
GNTのモバイル通販サイトでは、これまで購買・閲覧履歴を活用したレコメンドと会員登録時に取得したデータを元に、ユーザーが最初に訪れるページ(ランディングページ)の最適化を展開してきた。これは、運営する各メディアへの登録時の情報を元に、ユーザーに最適なページへ自動で振り分けるというもの。
モビオンショッピングでも、性別によりトップページが変えるといった取り組みを行っているが、ベルーナのモバイル通販でも、顧客の属性や買い物履歴から、マイページ上で客に合わせた商品をおすすめする仕組みの導入を計画しているようだ。

違った顧客層にアプローチ

独立したサイトとしての展開をやめることで、集客力の強化を狙うベルーナ。ただ、若い女性の多いGNTの会員は、ベルーナの主要顧客層と外れている。
GNTの河本業務統括部長は「お互いに、これまで獲得できていない層へのアプローチができるのではないか」と話す。つまり、ベルーナはこれまで苦手だったF1層の顧客を取り込み、逆にGNTはそれ以外の年代層の女性会員増を狙う。すでにベルーナのカタログからQRコードでモビオン内のページへの誘導をはじめており、こうした利用者の流入により、新サイト移行後に買い物をした顧客の中には40代も少なくないという。
GNTでは、モビオンの会員数を早期に1000万人まで増やすことを目指しており、3年後のモバイル通販利用者は100万人と予想する。F1層以外の顧客の取り込みは不可欠だ。そのため、10年1月には約150万点の本やコミックなどの販売を開始。今後は不動産、医療系コンテンツなどを増やして、さまざまな年代にアピールする考えだ。
「モビオンの会員は、潜在的なネット販売の顧客だ」(河本業務統括部長)。利用者のマイページに買い物コーナーへのリンクを表示させるなどの工夫で、さらに利用率を高めて行く。

若年層向け商品開発がカギに

ベルーナにとっては、モバイル通販サイトを他社サイトの「コーナー」とするのは大きな賭けといえる。モバイルの世界では若年層への知名度が低いとはいえ、これまでのモバイル通販利用者にとって戸惑う部分は大きく、さらにはモビオン利用者以外の消費者を取り込むのもやや難しくなったといえよう。
しかし、F1層が中心で、顧客の「生の声」が拾えるモビオンがベルーナにとって魅力的な媒体であることも事実。今後のカギとなるのは、やはりどれだけ魅力的な商品を提供できるかだろう。ベルーナでは近年、若年層を意識した商品企画を進めており、30代女性に向けた「マカロン座椅子」といったヒット商品も生まれている。今後、モバイル通販の売り上げが急拡大していくのかに注目したい。

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