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ヤフー、「ヤフー版テレビ通販」を開始 普及進まぬ現状を打破できるか?

現在、ヤフーのテレビ向けサービスの利用者は30~40代の男性――いわゆるネットに関心の高い「アーリーアダプター」がほとんど。今後は「テレビ版『ヤフー!ショッピング』」を通じて、50~60代の女性など、テレビ通販をよく利用する層にまでテレビ向けサービスを普及させ、新規客開拓につなげる考えだ。 テレビはあらゆるデバイスの中で、最も一般ユーザーが接する機会が多いもののひとつ。そうした意味では、ネットサービスでもPC、モバイルに続く「第3のデバイス」として大きなポテンシャルを秘めていると言っていいだろう。そのテレビ向けサービスを充実させることで、近年、重要テーマとして進めている「EVERYWHERE構想」を加速させる――それがヤフーの描く青写真だ。  ただ、現在はヤフーの調査によれば、LANケーブルに接続してテレビでネットを楽しんでいるのは「まだ2割程度のユーザー」だという。ネット対応型テレビのシェアは急速に拡大しており、実際、今や家電量販店の店頭に並ぶテレビのほとんどはネット対応型。「アクトビラ」など専門のサービスも存在しているが、「ネットはPCや携帯で十分」と考えるユーザーがまだ多くを占めているようで、実際にはあまり利用が進んでいな現実がある。  ヤフーでも家電量販店の店頭やPCサイト上などで積極的に告知していく予定だが、急激に普及する可能性は現状では低いと考えられるため、いかにこの部分を克服するかがサービスの行方を占うカギとなりそう。果たしてどのように同サービスを一般家庭レベルまで普及させ、新規ユーザーを開拓していくのか。そうした部分も含め、今後、業界の注目を集ることになりそうだ。

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最大の目玉は「動画で」の商品紹介

 テレビ版「ヤフー!ショッピング」は、インターネット対応テレビに搭載されたDTVブラウザ向けのサービス。開始時はシャープの「アクオス」や東芝「レグザ」、日立「Wooo」などを対象としているが、将来的にはDTVブラウザを搭載する全てのテレビにサービスを提供する計画。
トップページでは、PC版の「ヤフー!ショッピング」と同様に、カテゴリや検索ボックスから商品を検索することができ、商品詳細を見ることも可能だ。画面上での操作はリモコン操作が基本で、「リモコンで使いやすいように」(R&D統括本部・菅泉尚史プロデューサー)設計している。
とはいえ、これだけなら単にデバイスを「PC」から「テレビ」に置き換えただけ、と言えなくもない。PC、モバイルとネット環境が整っているユーザーを「あえてネット」というところにまで誘導するためには、”テレビならでは”な強いヒキが必須だが、それが今回のサービスの最大の目玉である「”動画”による商品紹介」――だ。

テレビ通販風に電話注文できる

動画はトップページの中央で、出店店舗が「おすすめ商品」を紹介する動画コンテンツを掲載。サムネイル形式で30本まで紹介する。
動画配信の対象店舗は自社でテレビ通販を展開している店舗で、動画は各店舗が作成したものを活用。サービス開始当初は「ディノス ヤフー店」や「プライム」「コメリドットコム」「saQwa(サクワ)ヤフー店」「ショップジャパン ヤフー店」「ショップ島 ヤフー店」など6サイトの動画、約50本を配信している。
商品ジャンルで見ると健康器具や食品の動画が多く、配信時間は「視聴者が飽きない10分程度が目安」(同)。当面は1カ月単位で動画を入れ替えていく予定だ。また、動画以外では商品の静止画を見ることも可能。静止画はカテゴリ別の自動再生なども可能で、テレビのように漠然と画面を眺める、いわゆる「ながら見」できる仕様になっているのが「PCとは異なる特徴のひとつ」(同)のようだ。なお、動画配信にあたって特別な費用などは発生しないという。
商品の受注はQRコード経由でモバイルで対応するが、動画がある商品の場合は「テレビ番組風に」(同)電話注文できるのも特徴だ。画面上に注文用の電話番号を表示し、ユーザーが電話すると各サイトのコールセンターにつながる仕組みで、コールセンターを持たない店舗、つまりテレビ通販を行っていない店舗はQRコード経由のみで受注する形となっている。
なお、「ヤフー!ショッピング」で使える「ヤフー!ポイント」は、当面は電話受注の場合はユーザーに付与しないとしているが、今後、付与できる仕組みを構築する方針のようだ。

最大の課題は「接続率の向上」

 以上が「テレビ版ヤフー!ショッピング」サービスの内容だが、やはり、最大の課題は同サービス、ひいては”テレビ向けネットサービス”そのものへの誘導、という点に尽きるだろう。前述の通り、今はLANケーブルの接続状況はまだ2割程度と低く、利用するユーザー層も限られている状態。ネットを使うデバイスとしてPC・モバイルがこれだけ普及しているなかでこの数字を一気にあげるのは容易ではない。テレビとは異なるが、FAXで簡易インターネットが楽しめるNTTの「Lモード」が、契約者数の減少により2010年の3月をもってサービスを終了した例などもあり、「第3のデバイス」の確立の難しさが分かる。
ヤフーでもこの普及の部分を最重要課題と捉えており、「まずは接続率を上げるのが必須」(同)と考えている。そのための普及活動としては、まずリリース当日にPCサイト上で同サービスが開始した告知を掲載。約2カ月にわたり、「テレビ版」限定で動画で紹介された商品の割引キャンペーンも行っていく考えで、同サービスを利用できる環境にあるユーザーの「掘り起こし」に努める。また、家電量販店店頭での訴求やメーカーとタイアップした仕掛けなども検討しており、「テレビ向けネットサービス」が整いつつある今、本格的に普及に乗り出す構えだ。
前途多難な「テレビでネット」だが、同サービスには高精度かつ大きな画面上で動画で商品を訴求できるというメリットがあり、普及が進みさえすれば、その利用価値は決して低くはないはず。「優れたサービス」として出店店舗の心を掴むのか「Lモード」と同様の道を辿ってしまうのか、勝負の分かれ目はこれからの普及活動にかかっている。

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