アマゾンジャパンがモバイル通販サイトで一風変わった商品検索「フォト検索」を始めた。同社が６月２日にiPhoneユーザー向けに無料公開を始めた専用アプリの１つの機能で、iPhoneのカメラ機能を使ってモノを撮影後、その画像をアマゾンに送信すると、同じ品物もしくは類似品を検索結果として表示、そのままアマゾンで購入できるというもの。
それだけでもユニークな試みと言えるが、面白いのは場合によっては、撮影された画像をもとに「誰かが人力で商品を探す」という点だ。画像のマッチング技術を使った自動的な検索に加え、その自動検索で引っかからない時は、「商品の検索」を請け負うユーザーがアマゾンの商品から、撮影画像に近いものを探し当てるという人力での検索を行う。「人力検索」を実際に使用してみた結果は精度や検索時間を含めて「？」なものもあったが、自動と人力の両方を組み合わせての商品検索というのは、これまであまり例がなく、「遊び心」のあるサービスと言えるだろう。
任意の登録ユーザーが検索
アマゾンジャパンが６月２日からiPhoneユーザー向けに無料公開した専用アプリは「AmazonモバイルiPhoneアプリ」。すでに米アマゾンでは2008年12月から公開している専用アプリの日本版だという。ユーザーはアップル社が運営する「App Store」で無料でダウンロードでき、iPhoneやiPod touch(iPadでもiPhoneサイズでの表示だが一応、利用できる)でアマゾンのＷＥＢサイトと同様にネット販売ができるほか、新たな商品検索機能として「フォト検索」やＧＰＳ（全地球測位システム）情報を利用し、現在地から商品を受け取ることができる最寄りのコンビニエンストトアを簡単に探すことができる「コンビニ検索」などが利用できるようになる。
「フォト検索」とはiPhoneのカメラ機能で書籍などの何か品物を撮影し、画像を送信すると、アマゾンが商品データベースから同じ商品、または類似した商品を検索結果に表示する商品検索だ。特徴的なのは「自動」と「人力」の両方の検索を組み合わせて実施している点だ。
「自動」の方は、米アマゾン傘下のSnap Tell,lnc.（スナップ・テル社）が開発した画像のマッチング技術を用いたもので世界展開するアマゾンの中で、同技術を使った商品検索を始めたのはアマゾンジャパンが初めてだという。これに加えて、米アマゾンではすでに実施中の「Amazon Mechanicai Turk(アマゾン・メカニカル・ターク)」と呼ばれる任意でアマゾンに登録した世界各地のユーザーによる「人力検索」を組み合わせたもの（アマゾンがユーザーの作業に応じて報酬を支払う）。
ユーザーの撮影画像を元にまず「自動検索」で商品を検索、該当がない場合、人力検索に移行するようだ。アマゾンによると書籍やＣＤ、ＤＶＤなど「表紙にテキスト（文字情報）がある場合、自動検索で商品が検索される可能性が高い」（同社）。自動検索で見つからない場合は、「人力検索」に移行し、「メカニカル・ターク」に登録する「個人ユーザーが撮影画像を元に人力でアマゾンの商品データベースから撮影画像に近い商品を探す」（同）。
自動は数秒、人力は数十分
気になる検索時間だが、実際に「フォト検索」を使ってみたところ、自動検索と思われる場合は本当に数秒とすぐに検索結果が表示される。ただ、「人力で検索しているんだろうな」と思われる場合はやはり多少時間がかかり、撮影した対象物にもよるが、数十分はかかるようだ。
検索精度だが、本など自動で検索される場合はほぼ間違いなく、同じ商品が検索結果に表示される。一方、本やCD、DVD以外で「フォト検索」を行うと場合によっては大分、精度が鈍るようだ。例えば、「デジカメ」の画像を送った場合、品番は違っていたが、同じメーカーの形の近いデジカメが１０分程度で表示された。一方、文房具の画像を送った際は、30分以上、待った上で、なぜかヘビメタバンドのライブDVDが検索結果として表示された。
もちろん、この「フォト検索」。完璧な検索精度が求められるというよりはユーザーに楽しんで使ってもらうためのネタ的な要素も強いよう。むしろ、iPhoneアプリに求められるのは多くの人にダウンロードしてもらえるこうした要素であろう。他の通販企業も今後のiPhone対応の参考になりそうだ。