丸井、楽天と相互送客の仕組み構築へ ネットとリアルの融合を加速

【2011年1月号】丸井グループは2010年11月25日、楽天と包括的な業務提携(=写真=楽天・三木谷社長㊧と丸井の青井社長)で合意し、ファッション領域を中心に取り組みを進めることになった。包括提携のポイントは、企業の枠を超えた“ネットとリアルの融合”で、両社はネットから店舗へ、店舗からネットへの相互送客に取り組む考えだ。

一環として、丸井は12月中旬にも仮想モール「楽天市場」に公式ショップを出店して、販売好調の自社企画プライベートブランド(PB)商品を中心に販売を開始する。レディースファションや靴などのファッション雑貨から展開し、順次、PB商品以外のブランドアイテムへと商材の幅を広げ、「早い段階で100億円規模の売り上げにつなげたい」(青井浩社長)とする。

一方、丸井のリアル店舗のイベントスペースや店外催事には、楽天市場に出店するアパレルショップが出店できるように両社でサポートするほか、楽天グループのビットワレットが運営する電子マネー「Edy(エディ)」を使用した際に、丸井で使える「エポスポイント」が貯まるサービスを1月中旬に開始する。

丸井は、楽天への出店で新規ネットユーザーの獲得が期待できるのに加え、自社通販サイトで好評な商品の店頭受け取りなどのサービスも付加することで楽天ユーザーをリアル店舗にも誘導したい考え。

一方の楽天は、大手小売りの出店により、既存会員の購入機会の拡大やファッション分野の活性化につながるほか、リアルイベントへの参加機会が増えることで、仮想モールへの出店誘致にも好影響を与えそうだ。

 包括提携を契機に通販事業再浮上へ

丸井の2010年3月期の通販売り上げは、前年比8.4%増の約208億円で、このうちネット販売は同25.6%増の157億円と通販事業をけん引している。 

ただ、戦略的にカタログ通販を縮小していることもあり、直近の10年9月中間期の通販事業全体の売上高は、前年同期比2.1%減の93億7800万円と振るわなかった。

11年3月期については、通販売り上げの約8割を占めるネット販売が好調をキープして前年比微増に戻す計画だが、前々期(09年3月期)に21%増収と好調だった通販事業に一服感が出ている感は否めない。

この間、例えばファッション通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは急成長を遂げており、売り上げ規模でも10年3月期は前年比60%増の171億円と丸井の通販事業に肉薄している。

丸井では、楽天との提携を機に実店舗を持つ優位性を最大限生かし、店頭受け取りや試着、返品対応など消費者の利便性を重視した通販展開で、再び成長軌道に乗りたいところだ。

 試着や返品など通販の不満を解消

今回の提携のカギとなるのは、まさにネットとリアル(店舗)の融合だ。消費者が、ネットで調べて店舗で買ったり、店舗で試着してネットで買うなど、リアルとネットの境い目がなくなり、両方の売り場を使いこなす購買スタイルが急速に浸透していることを受けて、丸井はこれまでも店舗とネットの融合を進めてきた。

例えば、08年11月にネット販売と店舗の在庫を一元管理し、通販サイトで商品が品切れしている場合でも、店頭在庫を引き当てることで欠品を防ぐ取り組みを開始した。

09年4月には、通販利用者が不満に感じる「試着できない」とか「返品が面倒」などの声に応えて、ネットで購入した商品の試着や受取り、返品ができる施設「ウェブチャネルパーク」を新宿マルイ本店に設置した。それ以降も、同年11月には丸井シティ池袋、丸井静岡店、なんば丸井の3店舗に展開。10年9月にはマルイシティ横浜に設置して計5店舗体制とし、顧客の利便性向上に努めている。

さらに、このほど自社通販サイトの取り扱い商品に店頭在庫を表示する取り組みを始めた。購入したい商品のカラー、サイズを選択した後、「マルイ店舗在庫をしらべる」ボタンをクリックすると、在庫がある店舗と売り場の名前、問い合わせ用の型番が表示されるようにした。

通販サイトで扱う商品がどの店舗に残っているかを表示することで、ウェブで下見をして店頭で購入したい消費者や、ウェブで見た商品が今すぐ欲しいという顧客のニーズに応える。スタート時は通販サイトで販売する商品の40%に当たる約2万型を対象とし、順次、拡大させるとしている。

 楽天でも試着機能リアル店舗に誘導

こうした店頭連動の取り組みの中で、ネット販売の拡大に貢献したのが「ウェブチャネルパーク」の存在だ。実際、店舗での試着機能があったからネットで商品を購入したという利用者が半数程度いるという。このため、自社通販サイトだけでなく、楽天店舗にも「ウェブチャネルパーク」を開放して、年明けにも楽天会員の受け入れを始めることにしている。

丸井では、新たなネット顧客に試着機能を使ってもらうことで、同施設の稼働率を上げるとともに、実店舗の来店者数も増やしたい考えだ。

楽天市場への出店に当たっては、「顧客が楽天に流れるという心配よりも、全国規模で新規顧客を獲得できる期待感の方が強い」(青井社長)としている。

丸井が自社通販サイトを開設した当時も、店舗側から不安の声が出たが、消費者にとっては実店舗の閉店後も通販サイトを通じて買い物ができるようになり、「24時間のお得意様ができた」(同)とする。

実際に、同社ではネットと実店舗を併用する顧客は、店舗だけを利用する顧客と比べて年間の購入金額が増える傾向をつかんでいるという。

現在、丸井の実店舗は首都圏と関西圏を中心に22店舗を構える。今後の出店を狙う都市では、すでにオーバーストアの状況にあることも、楽天市場に出店してネット販売を強化する要因となっているようだ。

丸井では、全社売上高の95%が店舗で、ネット販売は5%程度にとどまっている。これを、楽天市場での売り上げも含めて早期に10%にしたい考えだ。また、両社は海外展開についても、今後の交渉の中で協力したい考え。

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