寡占化進まぬ化粧品市場に勝機【野村佳史ロッテドットコムジャパンCOO】

韓国ロッテグループ子会社のロッテドットコムジャパンが今年4月、化粧品のネット市場に参入した。立ち上げた通販サイト「ロッテスタイル」では韓国や日本、欧米など世界各国の化粧品100ブランド、2,000アイテムから展開を開始。2014年をメドに300億円の売り上げを目指す。だが、現在の国内化粧品市場は、リーマンショック以来の消費不況から復調の兆しが見えたものの、東日本大震災の影響により、再び低迷期を迎えている。加えて、異業種や新規企業の参入により競争が激化する中、韓国最大手のネット販売企業が描く成長戦略とはどのようなものなのか。日本市場進出の勝算を、同社の野村佳史COOに聞いた。(聞き手は本誌・佐藤真之)

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カウンセリングで個別の顧客に最適な商品を提供

日本市場でロッテブランド確立

――韓国市場においてもこれまで化粧品中心に展開されてきたのか。

韓国では化粧品を含め、総合通販サイトを展開しています。

――韓国ロッテドットコムで今後の海外展開を視野に入れているのか。

近年中に中国やインドネシア、ベトナムなどアジア各国への展開を視野に入れています。ただ、まずは日本市場でノウハウを蓄積していきます。

――最初にまず、日本市場に目をむけられたのは、どのような理由からですか。

いくつか理由があります。1つは厳しい競争環境にさらされる日本市場で勝ち抜いていくことによって、競争力を身につけるため。また、今後、中国やインドネシア、ベトナムなどアジア展開を視野に入れる中、日本でブランドを確立することはプラスに働くと考えました。ロッテグループにとっても日本は発祥の地でもありますし、重視しました。

――通販サイト「ロッテスタイル」では化粧品をメーン商材としています。なぜ、化粧品で勝負されようと考えられたのでしょうか。

日本の化粧品市場は、全体をみてもeコマースの占める領域は2,000億円前後と、まだそれほど大きくありません。化粧品通販に限ってもEC化率はまだ小さく、同じことが言えます。そのため成長の余地があると考えました。また、韓国ロッテドットコムが展開する通販サイトにおいても多用な商材を扱う中で、化粧品は好調なカテゴリの1つです。

――商品はどういったものを展開するのか。

化粧品の知識が豊富な、著名な美容ジャーナリストやバイヤーの方に新製品だけでなく、お勧め商品をセレクトしてもらいます。また、韓国市場で百貨店を主販路に展開する化粧品ブランド「ドクタージャルト」など、日本初上陸となる世界各国のブランドも並行輸入品ではなく、ライセンス契約を交わし正規に販売します。このほか、国内ブランドもラインアップします。

――ラインアップにあたってのロッテドットコムとしてのコンセプトはあるのか。

ブランドの大小を問わず、製品として特性がきちんとあるものをラインアップしていきます。とはいえ、化粧品はものすごい数があるので美容ジャーナリストの方に協力いただきながら製品の幅を広げていきたいと考えています。ブランドや品質で上質なものを。端的に言えばブランドや品質が上質なもの。ドラッグストアなどで扱われる低価格品など、マス商品がメーンではありません。

――商品の価格帯は。

5,000円前後のものから高価格帯の製品までさまざまです。高いものでは5万円台の商品もあります。プロの目で選択した高品質な商品を販売できる専門サイトを目指していきたいと考えています。

M&Aによる事業拡大も積極的に検討

多様化する顧客ニーズに対応して差別化

――日本市場における勝算について伺いたい。確かに、化粧品市場において販売チャネルとしてネットが占める比率はまだそれほど高くはありません。ただ、国内化粧品市場は厳しい競争環境にさらされています。

確かにそうですが、eコマース分やでは、まだ「書籍分野におけるアマゾン」のような圧倒的な存在感を示す企業は現れていませんし、上位プレーヤーの寡占化も進んでいません。また、今の化粧品業界は、全体的に低価格志向が広がっていますが、ネット上では、高品質・高価格帯の化粧品はまだそれほど扱われていません。そのような高品質な化粧品を、専門知識を持つプロの適切なアドバイスの下で販売するという手法自体、価格訴求を中心とするこれまでの化粧品通販サイトと異なるスタイルであると考えています。

――今、日本市場の顧客が化粧品企業に求めていることはどのようなものだと捉えていますか。

数あるブランドの中で〝本当に自分の肌に合ったものは何か〟を探すことだと考えています。店頭に行けば、国内展開する各ブランドの販売コーナーがありますが、化粧品を買いに行くと、当然、そのブランドのアイテムしか勧められません。さらに話を聞いてしまうと買わずにはいられませんし、あるブランドの販売コーナーに行ってしまうと、他のブランドに浮気するのがはばかられるような雰囲気もあるかと尾思います。そうなると、消費者は販売コーナーを〝敷居が高い〟と感じて、気軽に美容情報を得たくても聞く場所がないということになってしまう。そのような顧客にカウンセリングを通じてあらゆるブランドの商品を提供することができれば顧客満足につながると考えています。

――具体的にはどのような仕掛けで他社サイトと差別化を図っていかれるのか。

今夏にはオンラインカウンセリングなどの機能を導入し、個々の顧客に最適な商品提供が行える体制を整備していきます。

――ただ、取り扱いアイテム数が2,000もあるとカウンセリングによる比較提案も簡単なことではありません。アイテムの中には似たような訴求を行う商品や、同じジャンルながら価格帯が異なる商品もあります。自社ブランドの取り扱いとは違った難しさがあると思いますが。

その点はきちんと顧客の判断基準となる製品情報を載せることや、肌状態や年齢に応じ、個々の顧客に合った商品を提供できる形を実現したい。今後、製品データベースの整備と専門知識を持つスタッフの育成の両輪で考えていきます。

――どのような体制で行っていくのか。

オンラインカウンセリングでは顧客が感じられている自らの肌の状態について、36の設問に答えてもらい、その方の肌年齢や肌状態について180のタイプに分けて診断し、個々の顧客に合ったお勧め商品を提案していきます。当初は3、4名のビューティーアドバイザーを配置し、チャットやメールによる美容相談にも応じていきます。

――ネット上で最初から高価格帯商品の購入に結びつけるのは用意でないと思いますが。

その点は、ブランドサイドと協力してサンプルの展開やトライアルキットの展開が行えるようにしていきたいと思います。また、「ロッテスタイル」独自のサンプルやトライアルキットも開発し、本書品の購入につなげていきたいと思います。

――そのほかに考えている顧客サービスはありますか。

送料無料や翌日配送、ポイントプログラムなどのサービスは随時追加していきます。

今夏メドに認知図るプロモーション戦略を展開

――初年度の売上高の目標は。

3年で300億円の売上高を目標に掲げています。

――短期での数値目標はあるか。

対外的に公表はしていませんが、短期的な数値目標を追いかけることより、日本で早期にプレゼンス(存在感)を確立するが重要と考えています。

――多額のシステム投資もされていると思いますが、損益分岐の売上高は。

その点も公表していませんが、それなりの投資をしていますので3年後に目標の規模に達すれば、日本市場において十分素晴らしいビジネスが行えると考えています。

――3年後にある程度投資回収のメドを立てているということか。

その点も対外的に公表していません。

――M&Aによる事業拡大は検討されていますか。

積極的に検討します。

――今後、韓国で展開する仮想モール同様、化粧品以外の商品カテゴリについても取り扱っていかれるのでしょうか。

その予定です。ビューティー関連やヘルシー関連など、まだ検討中ですが、商品カテゴリの拡大は行っていきます。

――将来的に目指すところは、化粧品の通販サイトなのか、総合通販サイトなのか。

化粧品と親和性の高い商品ラインの拡充は行っていきます。

――今後、どのようにサイトの知名度の向上を図っていかれるのか。

現在、どの媒体でどういったプロモーションを行っていくか検討中ですが、夏から秋にかけて、ターゲットとする30~40歳代の女性層向けに認知向上を図る大規模なプロモーションを行います。

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