Thu, November 23, 2017

DIYで自由に“ライブ通販”ができる【中川具隆Ustream Asia代表取締役社長】

 今や代表的な個人メディアのひとつとして定着した感のある、ライブ動画配信サービスのUstream(ユーストリーム)。先の震災でツイッター同様、その情報発信ツールとしての能力が改めて評価されたこともあり、利用者は急速に拡大している状況だ。こうした中、Ustream Asiaは広告を非表示にし、今まで禁止していた商用利用を可能にした「アドフリー」を開始。通販やキャンペーンなどで手軽に使えるサービスとして、中小事業者などの利用を期待する。ライブ動画を使った通販事例はまだあまりないが、今後、これを機に一気に普及する可能性もある。中川社長に戦略を聞いた。

(聞き手は本誌・河鰭悠太郎)

いろいろな方法で自社サイトに誘導できる

 

「商用利用」を可能にした

――「アドフリー」を開始した経緯を教えてください。

 我々のサービスは無料で誰でもライブ動画を視聴できるというもので、広告収入が収益の柱です。ただ、ナショナルクライアントが新製品の発表などでサービスを使われる際に、広告が他社さんとバッティングしてしまうこともありました。それで「(広告を)取ってくれないか」というご要望が多かったので対応した形です。もともと、広告を表示しないモデルとしては、営業マンがクライアントと直接やりとりしてオペレーションする「ブランドチャンネル」という有料のサービスもあったのですが、金額が1カ月100万円と高い。クライアントさんからも、そこまで払えないとか、広告だけ外れればもっと利用するのに、という声がありました。そこで、単純に広告を外して商用利用も可能にし、しかもウェブから申し込みできるサービスを始めたわけです。気軽に使っていただけるのが特徴ですが、そうではなく、やはりレポートが欲しいとか、プロモーションを手伝って欲しいとか、そうしたニーズもありますので、その場合は100万円の「ブランドチャンネル」を販売します。

――ターゲットはやはり物販を行う中小事業者でしょうか。

 もともと物販での利用を想定していたのですが、1回限りのイベントなどで使われるケースも多く、必ずしも物販だけではありません。あと、もうひとつの傾向として、基本は「Ustream」のサイトの中にチャンネルが属している形ですが、自社のHPやキャンペーンページの中に動画枠だけを窓のように埋め込んで使うなど、本体のサイトで営業活動をされたい方もいます。その場合にも「アドフリー」を使えば同じように広告を外して動画配信できます。

 Ustreamは大手のクライアントに広告を出稿していただいているおかげで、一般の人達はタダでライブ動画を配信できるわけですが、その代わり商用目的では利用しないでくれ、という規約になっています。ただ、やはり個人でも中小でも「宣伝に使いたい」「商用目的に使いたい」という方は多数います。そういう方々にも自由に使っていただければ、と。

――商用利用を禁止していたとのことですが、商用と非商用の境目は?

 まず、Ustream自体の規約がありまして、それは有料であれ無料であれ、公序良俗に反するものは駄目、ということです。 

 商用と非商用利用についてですが、ざっくりいうと、当社のビジネスを侵害しない、ということですね。例えばサイトの中で広告を取ってCMを流して番組をやってしまうとか、そのページで物販をガンガンやってしまうとか。我々が今後、ビジネスをする機会が失われてしまうかもしれない、というところで線を引いています。もっと端的にいうと、無料で配信するユーザーは自分でページを持てますが、そのページの中にはこちらで挿入したバナーが貼られるので、物販サイトに飛ばすなどのコントロールはできません。今までは100万円払って「ブランドチャンネル」を利用される方が、Ustream上でページを持って自社サイトに誘導したり、アマゾンに誘導したりできていたのですが、一般の個人の方はそれができなかった。ですが、「アドフリー」ではそうした利用が可能になり、バナー広告が外れるためスペースが空きますので、そこにリンクを貼れるのです。

――通販利用もできるわけですね。

 はい。バナー広告に限らず、いろいろなやり方で誘導できます。番組内で商品の宣伝をするのも一つの方法ですし、画面の周りにリンク先を置いたり、埋め込み機能を使って、自社サイトで動画枠と商品購入枠を並べたりするのも可能です。ソーシャルストリームも使えますしもちろん外すこともできます。テレビ通販のようなことが「アドフリー」を使ってできるようになるわけですね。

 

「アドフリー」は中小の事業者に向いている

――これまで実際に商品の紹介をしている企業はいくつかあったと思いますが、NGではなかったのでしょうか。

 規約上はNGですが、ある程度、弾力的な運用をしていました。例えば、番組内で歌手が「こういう曲を出したので買ってくださいね」と言った、というレベルですと禁止はしていませんでした。

――今回「アドフリー」を始めたことで、これまでグレーだった使われ方にNGを出すこともありますか。

 これまでハッキリしていなかった部分を「アドフリー」を出してハッキリさせ、事業者さんは堂々と商品を紹介できるようになりましたので、今まで関心はあったが「ブランドチャンネル」は高くてちょっと、というお客様には積極的に「アドフリー」をお勧めしていくつもりです。今までも度を過ぎた使い方をしている方にはコンタクトをとって控えていただくとか、チャンネルを停止することもありましたが、今後は「止めてください」ではなく「アドフリーをお勧めする」方向に変わると思います。

――「アドフリー」のデメリットは。

 100万円の「ブランドチャンネル」は従量制ではなく月額固定制ですが、「アドフリー」は、例えば人気のEコマースサイトを運営して多くの人に視聴された場合、視聴者数がある程度以上になると従量課金になってしまいます。ですから、例えばテレビの番組枠を買われて大きく通販をしているような事業者だったら、「ブランドチャンネル」を買っていただいた方がお得かも知れません。逆に中小の方は「アドフリー」が向いていると思います。

――ただ、「アドフリー」でもアクセスの分析やレポートなどが欲しいというニーズはあると思いますが、オプションのような形も考えているのでしょうか。

 今はご提供する予定はありません。ただ、使ってみて、やはりレポートが欲しいという声もありますので、将来的に絶対やらないというわけではありませんが。今は両方の商品を提供してニーズを拾い上げている状況です。ただ、「アドフリー」にリソースが多く割かれてしまうと収益的に厳しいですね。事業者の方は、まずは気軽に使っていただいて、物足りないと感じたら「ブランドチャネル」にアップすればいいのではないでしょうか。

――料金体系は。

 ビューアーアワーという単位が基準になっています。例えば、1人の視聴者が1時間ご覧になっていると1ビューアーアワーです。30分ご覧になっている方が2人でも1ビューアーアワー、というわけですね。スターターパッケージの場合、9800円で100ビューアーアワーまで可能ですから、100人のユーザーが1時間視聴することができる分量なわけです。4000ビューアーアワーだと1時間の番組を1000人が視聴するのを毎週配信するイメージですね。これは結構人気のある番組です。従量制と言ったのはそこから先の超過分のことで、1ビューアーアワーあたり60円いただきます、という仕組みです。

 

“オープン”な方向性が鮮明になった

 

“フェイスブック”でもライブ動画配信

――フェイスブックで動画を配信できるアプリも開始しました。

 日本でフェイスブックユーザーは拡大しているので、追い風だと思っています。今回リリースしたアプリによって、「フェイスブックページ」にライブ動画を堂々と大きく貼り付けることができるようになりました。かつ、ソーシャルストリームの替わりにフェイスブックのウォールが付くようになったので、例えばファンページに登録している人達だけにクローズドの配信ができます。つまり、通販企業のファンページで、ファンの方たちだけに配信するような使い方もできるわけですね。

――「アドフリー」やフェイスブックアプリなど、よりオープンなツールになっている印象です。今後もこの路線でいくのでしょうか。

 そうですね。例えばニコニコ動画さんなどは自分のサイト内に閉じ込めておく形ですが、Ustreamでは昔から外部サイトへの埋め込みを可能にしていました。このほどアドフリーやフェイスブックアプリなどを出したことで、より他のサービスとの違いが鮮明になってきたと思います。また、以前は埋め込みはできましたが、そこでのビジネスはできませんでした。今はそれが可能になったので、より広がりを持ったサービスにしていきたいと思っています。ツイッターやフェイスブックもオープンなサービスなので相性がいいのではないでしょうか。

――ただ、利用者側も集客面が悩みどころです。

 今はUstreamのトップページにも価値が出てきていますので、そこを利用した集客はあるかもしれません。震災以降、Ustreamに価値を見出してくださった方が多く、3月の月間ユニーク視聴者数は982万人まで増えました。それ以降、トップページに来てから番組を探す、というユーザーが多くなっています。そうすると、トップページ上での編成が効いてきます。ここに掲載することで、人が番組にどんどん流れていくわけですね。ただ、あくまでユーザーは番組内容を見ていますので、「ブランドチャンネル」や「アドフリー」を買ってくれたからトップページに出す、というわけではありません。あくまで面白いかどうかが基準となります。それ以外の集客のお手伝いは、やはりバナーを買っていただいて、ということになります。買っていただくバナーはユーストリーム上で出す場合もあれば、ヤフーやギャオで出すこともあります。

 

今後は海外や地方展開も活発化

――「アドフリー」の利用者目標は。

 『ブランドチャンネル』の3分の1から4分の1ぐらいのシェアになれば、バランスがいいかなと思っています。

――今後の課題は。

 アドフリーに限った話ではありませんが、人が介在せずともお客様にDIYで自由にやっていただける商品を増やしていきたいですね。「ブランドチャンネル」などと比較していただいて、ニーズに合ったものを選んでいただけるように商品ラインアップを広げていければ。その第1弾が「アドフリー」になるわけです。「ブランドチャンネル」のような大型の配信は必要ない、ミドルレンジの人向けに出てきた仕組みですが、実は我々のサービスの中でもっともアクセス数の多い部分はこの、10人、20人しか観ていないような番組です。そこに対してどうサービスを提供していくかが今まで課題になっている部分だったのです。

――海外展開などは。

 ユーストリームアジアという社名の通り、日本以外の国でも展開したいと考えています。「ブランドチャンネル」は対面販売なので、現地にオフィスを構えなければなりませんが、「アドフリー」だと、オフィスを置かなくとも対応するサイトを置けばビジネスができますから。それと、国内では地方からの引き合いが今は非常に多いので、そういった方々の産業を活性化させることで、「アドフリー」も伸びるのではないかと思います。

取材後メモ

 東日本大震災では、そのリアルタイム性から連絡ツール、もしくは情報入手ツールとしてツイッターが大いに活躍したのは周知の通りですが、同じくさまざまな場面で使われたのがUstreamでした。テレビでは流れないような貴重な映像も日々配信され、ツイッターなどを媒介に、多くの人がそれらを見たことでしょう。通販事業者の「Ustream」の活用は、有料サービスがそれなりに高額なこともあってハードルが高く、まだあまり聞きませんが、その有用性が認められた今、「アドフリー」の登場によって一気に利用が進むかもしれません。中川社長は取材中、「“習うより慣れろ”で使ってみて欲しい」と言っていましたが、まずは試しに、自分のiPhoneを使ってこっそり飲み会の様子などを撮ってみるのもいいかも。

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