【2011年11月号】
モバイル関連事業を手がけるクルーズがネット販売の強化に乗り出している。９月26日、スマートフォンやフィーチャーフォンなどのモバイル端末に特化した仮想モールを開設。ソーシャル要素を持ったユニークな機能や、独自のブログサービス「CROOZブログ」などのメディアを持つ強みを活かし、10～20代前半の女性を中心としつつ、幅広い層のユーザーを集めていく考えだ。まずは、2012年３月末までに流通総額10億円がひとつの目標。２年目以降は「倍々で伸ばしていく」（張本貴雄取締役コマース開発担当執行役員）構想を描いている。
スマートフォンの出荷台数の急激な伸びにつれ、ネット販売市場で「もっとも可能性のある売り場」としてスマートフォンに注目が集まっているが、仮想モール市場では楽天の「楽天市場」が圧倒的な強さを見せ付けている。「スマホに強い仮想モールはまだ存在していない」（同）という同社。果たして「モバイル特化型」という特徴を活かし、その牙城を崩すことができるだろうか――。
豊富な商品や独自ソーシャルで勝負
クルーズが開設した仮想モールは「CROOZ MALL（クルーズモール）」。スマートフォンやフィーチャーフォンなどのモバイル端末で利用できる。
もともと同社では、自社でモバイル通販サイトを運営しており物販を展開しているのだが、幅広い商材を取り扱うためには仮想モールの存在が必須と判断。自前で通販も展開しつつ、同時並行でプラットフォームの提供も行うことを決めた。
開設時の出店数は約50店舗。扱う商品数は約50万点と幅広い。前述の理由により、レディースファッションのほか、美容や健康商材、水、ペット用品、CD・DVD、家電などさまざまなジャンルを集めた商品ラインアップとなっている。今後はさらに書籍なども加わる予定だという。
機能面では、独自サービスとしてソーシャルサービス「GET or LOSE !!（ゲットオアルーズ）」を実装。時間の経過とともに販売価格が下がっていく仕組みで、ユーザーは在庫状況を気にしつつ、好きなタイミングで商品を購入することができる。コミュニケーション性を高めつつ集客につなげる狙いがあるようだ。クライアントの利用基準などは特に設けず、出品数の制限もない。「安くする代わりに在庫が捌け、知名度も上がる」（同）としており、モールのトップページなどでアピールして集客していく計画だ。
「最大の強みはメディアがあること」
ただ、最大の特徴は、やはりモバイルに特化したブログの「CROOZブログ」など、集客が期待できるメディアを持っていることだろう。
「CROOZブログ」は20代女性を中心に、約250万会員を保有。月間ユニーク閲覧者数は700万人と膨大な数のユーザーを抱えており、これらを「見込み客」と捉えると、通販事業者がもっとも苦心している新規客の開拓の部分で大きなアドバンテージを持っているわけだ。「CROOZ MALL」への誘導は、同ブログにモールのバナーやタブを掲載するなどの方法を考えているという。
また、これ以外では、ガールズアワードと共同で年２回開催しているファッションと音楽のイベント「ガールズアワード」を開催しているのも強み。同イベントは有名モデルや芸能人が参加するもので、ここでの出店店舗のブースの出店やサンプルの配布、ステージを借り切ってのファッションショーなどを構想する。「CROOZブログ」のメーン層とは年齢層が異なるユーザーの開拓が期待できるとし、ここでのプロモーションやブランディングに注力していく考えだ。
オリジナル商品などで訴求
出店プランは、「ビギナー」「スタンダード」「エキスパート」と、登録可能商品数別に３種類を用意。初期費用と月額固定費のほか、売り上げに応じた手数料を徴収する。これ以外では仮想モール上の広告費などを収入源として見込んでいる。
今後は「CROOZ MALL」のみで買える商品の扱いや、他の仮想モールに先駆けた販売などで差別化を図っていく。独自のメリットで訴求し、出店数の拡大を図っていく考えだ。
モバイル端末に特化する形で仮想モール市場に乗り込んだクルーズ。楽天でもスマートフォンに対応した画面の設置や「楽天市場」アプリの提供など、モバイル、特にスマートフォン対策を近年充実させており、その牙城を崩すのは容易ではない。どこまでそのシェアを奪うことができるか、今後の展開に注目したい。