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10年のモバイル通販市場、伸び率鈍化も

【2011年10月号】

 モバイル通販市場の伸び率が大幅に鈍化している。総務省とモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)がこのほど発表した2010年(1~12月)のモバイルコンテンツ関連市場規模調査によると、モバイルコマース市場における「物販系」の市場規模は前年比3.4%増の4392億円にとどまり、前年の実績(12.7%増)からはブレーキがかかった(表1)。

大手仮想モールの出店者やファッション系モールが市場拡大に貢献しているものの、モバイル専業企業の売り上げが伸び悩んできており、成熟化が進んで市場全体の成長が鈍化している。ただ、スマートフォンなど利便性の高い端末が普及することで、再び市場拡大に勢いがつく可能性もありそう。

同調査では、モバイルコマース市場を「物販系」「サービス系」「トランザクション系」の3タイプに分類。これら3分野を合計した市場規模は前年比4.2%増の1兆85億円と初めて1兆円に乗せた。

通販に当たる「物販系」では、リアル店舗を中心に商品を販売している小売りがPCと同様、モバイルでも通販サイトを開設する動きが市場規模の拡大につながったようだ。また、リアル店舗をカタログやPCサイト、モバイルと組み合わせて展開する傾向も、市場の活性化に貢献していると見られる。

カタログ企業もモバイル強化

本誌調べによるカタログ通販企業のモバイル売り上げ(表2)を見ると、多くの企業が苦戦していることが分かる。これは、モバイル自体がカタログの受注機能の役割が多く、前期の全社売上高の落ち込みに引きずられた部分が大きいと見られる。

そんな中、ニッセンはネット強化の一環としてスマートフォンを含めたモバイルチャネルを強化。前期(10年12月期)はモバイル売上高のうち、カタログ経由は81億円と前年実績(80億円)と比べてほとんど伸びていないのに対し、純ネット売り上げは88億円から107億円に20億程度拡大。モバイル全体で188億円と年率12%成長のけん引役となった。同社では購買履歴や閲覧履歴を分析して、顧客それぞれのニーズに合った的確なメール配信を行うなど1to1マーケティングの強化策が奏功しているようだ。

千趣会は、前期は約5%のマイナス成長となったものの、ディーエヌエー(DeNA)との合弁会社でファッションのモバイル通販サイトを運営するモバコレを昨年11月に完全子会社化し、モバイルの強化に乗り出している。

若者向けファッションのネット販売を強化したい千趣会と、主力の携帯向けゲームや交流サイトに資源を集中したいDeNAとの思惑が一致したもので、今後、モバコレは千趣会のマーケティングノウハウを活用し、事業拡大につなげる。

一方、ネット専業では、ファッションモール系を中心に全社売り上げの伸びと歩調を合わせて、モバイル売り上げも拡大している(表3)。

中でも、モバイルの活用に積極的なのはスタイライフだ。同社は昨年10月、エムシー・プラスがバンダイナムコゲームスと共同運営してきたモバイル通販サイト「LOVE EXバーゲン」からは離れたのを機に、バンダイナムコの新しいパートナーになった。スタイライフは、従来から取り引きのあるファッションブランドに加えて、これまでは手薄だったマルキュー(渋谷109)系ブランドとの接点を増やし、若年層へのアプローチを強化する。

昨年11月にはエイベックス通信放送と提携して携帯電話向け動画配信サービス「BeeTV」の番組で紹介するファッションアイテムを特設サイトで販売する取り組みを始めるなど、モバイルでの売り場を増やしている。

スマートフォンが起爆剤に

ところで、前述の経産省とMCFによるモバイル市場調査では、スマートフォンを経由した物販の市場はまだ小さいため、モバイル売り上げに計上するかは、各企業の判断に習って集計しているようだ。今後、どのような計上の仕方になるにせよ、スマホユーザーの増加に伴い、同デバイスへの対応は不可欠と言えそう。

通販企業の動向としては、QVCジャパンがiPhone向けにテレビ通販番組をリアルタイムで視聴できるアプリを配信。番組で紹介する商品の画面をタッチすると瞬時に購入画面に遷移し、カートに入れると通販サイトに飛んでネット購入できるほか、「電話で注文」をタッチすると電話がオペレーターにつながり、問い合わせや電話注文ができる仕組みを構築している。

ケンコーコムは、昨年スタートしたiPhoneとアンドロイド端末のアプリに、スマホのカメラを活用したバーコードリーダー機能を搭載。ドラッグストアやスーパーなどの店頭で見かけた商品のバーコードを読み取ることで、ケンコーコムサイトでの取り扱いの確認や、重たい商品などはそのままネット購入できるようにした。

同様に、アマゾンジャパンもiPhoneとアンドロイド端末のアプリを通じて、書籍などのバーコードをカメラで読み取ると当該商品の購入ページへと遷移する機能や、GPS情報を利用して現在地から商品を受け取ることができる最寄りのコンビニを表示する機能を設けている。

スマホでの通販は、これまでのガラケーでは表現できなかったコンテンツや商品の見せ方、検索の仕方など、大きく売り方が変わる可能性がでてきそうで、トレンドになりつつある“リアルとネットの融合”を加速させるデバイスとしても活用されそうだ。

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