目指すは日本一のEコマース企業【ベガコーポレーション手島武雄専務取締役】

「家具のネット販売」で毎年にわたって高い成長性を維持し、創業7期目となる今年の決算で年商20億円を突破。これまでECで躍進を遂げてきた家具の通販サイト「ロウヤ」を運営するベガコーポレーションが突如、「スマートフォン向けゲームアプリ」の開発をスタート。しかもそれが中国のApp Storeでトップセールスとなるなど好発進を見せ、注目を集めている。同社の手島武雄専務は言う。日本一の家具EC企業を目指し、スマホゲームでは世界を目指すと。(聞き手は本誌・鹿野利幸)

“弱者の戦略”でまずはイスで一点突破を図った

創業7年目で年商20億円を突破

――EC専業社であるベガコーポレーションがスマートフォン向けゲームの開発を始め、しかも好調に推移していることから注目が集まっています。まずは本業のEC事業について伺いたいのですが。

創業は2004年です。創業以来、2桁増収を続けており、前期(2011年3月)で7期目を終えたのですが売上高が前年よりも6億円程度の増収となる約20億円(経常利益は約1億9000万円)でした。

――家具のECは競合がひしめく激戦ですが、躍進のポイントは。

商売の原理原則に従って1日1日をしっかりとやってきただけです(笑)。あとは社内の組織のあり方として、常に高い目標を置いているというのはあると思います。それに関連して、情報開示もかなりオープンにやっています。前日の売り上げや当月の売り上げなど、管理部門を含めた全従業員に開示をして、目標の共通認識を持っているということも大きいのではないでしょうか。

具体的な事案として挙げられるのは製造から販売まで自社で完結できる体制を確立しているということでしょうか。商品面や価格面で競合他社との差別化の大きな要素になっているはずです。ただ、もちろん、創業当初は資金などありませんでしたから、国内メーカーの家具を自社サイトで紹介し、ドロップシッピング方式で販売していました。当時は家具のECサイトは今ほどなく、それなりの商売ができていましたが、競合サイトなども出始めてきた中で、営業開始から3年半が経って、自社仕入れ商品の販売に切り替えました。リスクはありますが、その分、リターンも大きいですし、他社との差別化もできると。ここで我々は「弱者の戦略」を採りました。これが1つのポイントになったと思います。

――弱者の戦略とは。

“一点突破”でまずは「椅子」に特化することにしました。勝てるところで勝とうと(笑)。椅子の中でも取り扱うジャンルを絞って「単品大量販売」を目指しました。当時から高級なオフィスチェアが売れていましたが、海外の展示会にいくと、同様のものが非常に安く仕入れられることが分かったんですね。それで実際にその椅子を少しだけ仕入れて自社サイトで販売してみました。そうしたらやっぱり売れたんですね。これで確信を持って、その商品に直輸入をかけました。今でもロングランのヒット商品となっている「アリスト」というオフィスチェアでした。これをきっかけに粗利率が確保されるようになり、急激な業績拡大につながっていきましたね。

――運営されている通販サイト「ロウヤ」の商品ページを拝見しますと、コピーがユニークで商品画像も工夫されていることが分かります。

そうですね。ここも当社の強みだろうと言えます。特に仕入れ販売を始めた頃から、競合他社との差別化を図るためにも購買心理の勉強と商品ページの作り込みの部分には重点を置いてきました。例えば、商品のコピーなどはいかに目を引くものをつけるかと。「最終値下げ」など当たり前の文言では誰にも響きません。「勝ちたきゃ座れ」とか「悪魔のチェア」とか(笑)。目を引くユーモラスなコピーでお客様に足を止めてもらうと。こうしたノウハウを蓄積しつつ、あとは商品の価格と質。これによって恐らく競合さんよりも非常に高いコンバージョン率が得られているのだと思います。

モール内ランキングで集客

――現在の状況を伺いたいのですが。

売れ筋はロングランの座椅子「ポーラ」などです。ターゲットは年齢層としては20、30代が中心です。サイトを構えているのは「楽天市場」と「ヤフー!ショッピング」。それと自社サイトですね。

広告などはほとんどやっていません。費用対効果に合わないと考えているためです。その代わりの広告塔となっているのが、「モール内のランキング」です。先ほど申し上げた私どもの座椅子「ポーラ」は楽天市場のインテリアジャンルで2年連続、一番売れている商品なんですね。楽天市場の中にはジャンルごとにランキングがあり、インテリアジャンルのランキングの1位にずっと「ポーラ」が掲載されていると。また、時期にもよりますが、30位くらいまで掲載されるランキングのうち、平均すると5~7つは当社の商品が入っています。このランキング経由で当社の店舗に来て頂けるお客様が非常に多いわけです。これに加えて、楽天市場内の家具検索のSEOなども行なっており、集客ができているということです。ランキングにはポっと出た新商品などはなかなかランクインしませんから、いかに戦略的にロングランのヒット商品を作り上げ、ランクインさせ続けるかというのはある程度、中長期的に考えてやっています。

スマートフォン普及のビックウエーブに乗れ

ヴァーチャルECを開始

――そして昨年からスマートフォン向けのゲーム開発に着手しました。きっかけは何だったのですか。

大きなきっかけは世界的なスマートフォンの急激な普及でした。我々は2004年の創業以来、順調に売り上げを伸ばすことができ、店頭公開も視野に入れていました。しかし、上場してもEコマースという事業体だけで魅力のあるヴァリュエーション(評価額)が得られるかというと難しいだろうと上場を先送りにしていたという経緯がありました。

そんな中で、スマートフォンというビッグウェーブが発生したと。当社の主力事業は家具のネット販売であり、利益率は十数%程度。かたやそういった事業を展開している企業を見ると40~50%の利益率だと。「このビジネスモデルは何なんだろう」ということで研究していくうちに「(今後の事業の方向性は)ゲーム事業しかないだろう」という考えにたどり着きました。

無論、我々はゲーム会社ではありません。ただ、これから日本を含め、全世界でスマホが広がっていくというビッグウェーブが来ている時に、そのスマホに対するアプリケーションの開発・提供をするということの事業価値というのは、計り知れないのではないかと。それで事業への投資はどのくらいかと試算した結果、世界を相手に商売できるビジネスに対して、我々の判断基準からすると投資額は非常に安かった。であればやるべきではないかと考えました。

それに社内ではゲーム事業を「ヴァーチャルEC」と呼んでいますが、基本的な考え方はこれまでの家具のECと同じです。モノを売るか、デジタルコンテンツを売るのか。ECのノウハウをゲームでも活用できると考えていました。

もう1つはEC事業で社内にデザイナーやエンジニアがおり、社内リソースを活かせるというのも大きかったですね。それでまずは作ってみよう、ということで、昨年5月にスマートフォン向けに「立ち呑み」というアプリケーションをリリースしてみたんですよ。ゲームの内容としては飲食店の店員が「ビール」とか「酎ハイ」など客の注文に対して、滞りなく運んでいくというシンプルなものでした。

――反応はどうでしたか。

1ヵ月で50万ダウンロード(DL)になりました。正直、驚きましたね(笑)。ただ、ある程度、確信はありました。やはりECであれ、ゲームであれ、お客様の心理は同じだと。どうすればクリックしてもらえるか、どうすればDLしてもらえるか。基本はECと同じでしょうと。お客様が楽しいと思えるかどうか、そのためにどういった表現できるのかと。このチャレンジがある程度、通用したことで昨年11月にシンガポールにスマホ向けアプリ開発の専門子会社「Nubee」を新設して本格的な事業化に踏み切りました。

――なぜ、シンガポールに。

シンガポールには家具の仕入れでよく行っていたのですが、彼らの使用する言語が英語と中国語というのが大きかったですね。このゲーム事業は世界を相手にしていくわけで、英語と中国語を使う民族は世界の半数ですから、シンガポールのクリエーターを使えば言語の壁がなく、すぐに世界に向けたゲームを開発できると考えたためです。あとは法人税率も安いですしね(笑)。

「JapanLife」が中国でトップに

――昨年から開始されたゲーム事業ですがその後、順調なんでしょうか。

現在までにリリースしたアプリは8つです。今年2月にリリースした「コインパイレーツ」に代表されるカジノ系のいわゆるコインプッシャーゲームが多いです。競合ゲームも少なく、課金率も高く、ある程度、同じソースを利用して開発することもできるので生産コストの回収が早いなどの利点からです。

――一番、受けたゲームは何ですか。

今年の3月ころにリリースした「JapanLife(ジャパンライフ)」というアプリですね。町を作っていくシュミレーションゲームです。3カ月で250万DLまでいきましたね。特に広告などは打っていませんし、DL数が伸びたのはゲーム内容とあとは中国のAppStoreのトップセールスランキングでナンバーワンとなったことも大きいと思います。ECで言うところのランキングと一緒でそれが新規ユーザーを取り込む広告塔になったということですね。今でももちろんDL数は増え続けており、300万DLは超えていると思います。今後はEC事業とのシナジーも出てくるであろう家具屋さんゲーム「ロウヤアプリ」をリリースしようと思っています。ゲーム内で当社の商品が実名で登場し、遊べるようになっています。

「家具はネットで買う」を常識に

――今後の展開について教えてください。今年10月にはベンチャーキャピタルから10億円調達していますが、方向性としてはゲーム事業の強化を図っていくということでしょうか。

今期(2012年3月)はEC事業の売り上げはミニマムで30億円。ゲーム事業子会社は今期は恐らく3億円です。2013年の秋口に上場を目指しており、この段階ではゲーム事業がEC事業を上回る売り上げになっていると思います。ECは安定した利益確保が期待できますが、拡大には時間と手間がかかります。生産性を考えると経営資源はコマースではなく、アプリに向けるべきだと考えています。ただ、EC事業をおろそかにするつもりはありません。当社は「めざせ!Eコマース企業 日本一」という目標を社内外で公言しています。どこにも負けない価格と品質とサービスの3点があればおのずと日本一の家具ECサイトになっているはずです。この3点をどの段階でどれだけできるかだけがポイントで実現のため、1つずつクリアしていけばよいと。非常にシンプルな考え方で動いています。

――日本一のEC企業になるメドは。

5年後です。実現可能だと正直、思っています。家具のネット専業者で年商100億円を売り上げているところはないです。まずは100億円が目標になると思いますが全然、目指せる範囲だろうと考えています。生活シーンの変化で家具は一生品から消耗品になりつつあります。これまでは見て触って買うというのが常識でしたが、我々は様々なサービスを行なっていくことで「家具はネットで買う」ということを新しい常識にしていきたいと思っています。ECでは日本一、ゲームでは世界を目指します。

取材後後メモ

「ECもゲームも同じ」。手島専務は言います。確かにどちらも相手は人間であり、「どう買ってもらうか」「どうDLしてもらうか、またはゲーム内でどう課金アイテムを買ってもらえるか」といったユーザーを引き付けるポイントは同じなのでしょう。ECのノウハウを持った福岡発のゲーム企業が今後、どのようなビジネスを展開し、世界で戦っていくのか。また、EC事業で標榜する日本一の実現はなるのか。これからが非常に楽しみです。

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