メールマーケティングの流れを変える【レスポンシス・鈴木望日本地区セールスマネージャー】

メール配信システムの開発・販売などを手掛ける米国のレスポンシス社がネットイヤーグループと組み、メール配信ツール「レスポンシス・インタラクト・スイート」(RIS)の日本展開に本腰を入れ始めた。自動化やWeb行動情報の活用などを特徴とする「RIS」。すでに数百社が導入し、メール経由の売り上げ拡大で成果を出しているという。その活用方法や日本のメールマーケティングに対する見方などについて、レスポンシス社の鈴木望日本地区セールスマネージャーに話を聞いた(聞き手は本誌・後藤浩)

スポンサードリンク

日本のメールマーケティングは放置されていた

自動化で大変な作業負担を軽減

──メール配信ツール「レスポンシス・インタラクティブ・スイート」(RIS)の日本での本格的な展開に乗り出したが、どのような特徴があるのですか。

「RIS」は、メールのパーソナライズ化と自動化ということを同時に実現させることをコンセプトにしています。メールは重要なチャネルですが、効果のある施策をきちんと打とうとすると、かなりの手間隙が掛かります。そこを上手くシステム化し、業務が効率化されれば、今までの何倍ものことができ、売り上げへの貢献度もあがる。日本のメールマーケティングの現状を考えてもニーズはあると考えています。

──日本のメールマーケティングの現状というと。

日本でも、同じ内容のメールを顧客全員に送る形から、顧客ごとにパーソナライズ化したメールを送ろうという流れになっています。しかし、その作業があまりにも大変で、本格的にやりたくてもできなかった。その方法を考えて立ち止まっている時間があったら、大量にメールを打って売り上げを作るということが繰り返され、結果、メールが効かなくなってしまったというのが現状だと捉えています。

──日本のネット販売・通販事業者でも、顧客属性に応じたメール配信を行っているところはありますが。

確かに、日本でも進んでいる企業ではメールのパーソナライズ化に取り組んでいます。ただ、実際には顧客データベースからのメール送対象者の抽出など、マニュアル的な作業に要する時間や労力があまりにも大きい。そのため、パーソナライズ化したメールの配信範囲を広げるのが難しくなっているのが実情です。また、顧客の属性情報をもとにした配信についても、問題があると考えています。

──属性情報の活用での問題というと。

顧客の居住地域や性別、購買履歴など、顧客データベースに蓄積されている属性情報は、過去のデータであるということです。購買履歴についても、ある時点で切ったスナップショットのような情報ですから、購買検討期間が短い商品の場合、あまりあてになりません。そのため「RIS」では、もうひとつの観点を設け、Web解析ツールとデータ連携し、Web上の行動情報を活用できるようにしています。

──Web上の行動情報の活用で、どのようなことができるのでしょう。

例えば、衣料品をよく購入していた顧客がいたとしましょう。企業側も過去の購買履歴をもと衣料品のレコメンドメールを送っているわけですが、最近、顧客の興味が変わり、この1週間はサイトで食品を頻繁に見ている。Web上の行動情報を活用すれば、こうした顧客の変化に対応して食品に関するメールが送信できるわけです。このほかにも、通販サイトでカートに商品を入れたものの、決済(購入)をしないで離脱した顧客を追ってメッセージを送るといったことも可能です。我々の言うパーソナライズ化とは、属性情報と、Web上の行動情報を組み合わせてメッセージを発していこうという考え方。さらに大変だった作業を自動化することでパーソナライズ化されたメールの配信範囲を広げ、売り上げを拡大させていこうということです。

Web上の行動情報活用で多様な展開

──「RIS」の海外での導入実績は。

海外では累計で約600社、アクティブで約300社が導入しています。年商50億円程度のクライアントが多く、大体5割が小売系のEC企業です。海外の事例では、メール経由の売り上げが普通に30、40%は上がっており、極端な例では倍増したケースもあります。

──海外では、実際にどのような使われ方をしているのでしょう。

例えば、スノーボード関連商品の製造・販売を行うバートン・スノーボードでは、顧客が今まで購入した商品と性別、直前のブラウジングデータをもとに、商品のレコメンドメールを送っています。これは、購買履歴と性別、Web上の行動情報を組み合わせてパーソナライズ化したものですが、クリック率が15%、平均受注単価が76%増え、メール1通あたりの売り上げで見ると170%増になりました。

──先ほど、サイトから離脱した顧客を追ってメールを送信できるという話がありましたが、何か実例は。

旅行販売サイトのオービッツでは、自社サイトで航空チケット料金を調べて離脱した顧客に対して、翌日に最新のチケット料金情報と一緒にクロスセル商材の情報を送るという取り組みを行っています。このケースの場合、料金を確認した顧客が他の旅行会社や航空会社ですでにチケットを購入していることも考えられるため、検索された路線経路を分析し、クロスセル商材として、目的地のホテルやレンタカー、ツアーなどの情報も合わせて送ったわけです。これは、属性情報を使わずにWeb上で起きたイベントに応じて情報を送るパターンですね。

──Web上の行動情報を組み合わせることで色々な展開ができると。

そうですね。新規獲得でも、従来は、どちらかというと大々的に広告を打って顧客に来てもらえばいいという発想だったと思います。「RIS」では、購入前の段階として顧客に会員登録をしてもらうなど、常にコンタクトできる状態を作れば、少しずつコミュニケーションを取りながら顧客の行動属性を把握し、より的確な商品購入のアプローチすることもできるはず。今後、そうした使われ方が出てくると思います。

──ただ、配信条件などの設定が複雑そうです。

設定については、専用画面から配信の対象者やタイミング、ディスプレイ広告の貼付などの条件を入力する仕組みになっています。ですから、マーケティング担当者は、目的に応じたメールを数パターン作り、シナリオを考えて落とし込むだけで、後は自動的に回るわけです。また、配信の割合も設定できますから、例えば、2パターンのメールをそれぞれ配信対象の10%ずつに送り、結果が良かったパターンを残りの80%に送ることもできる。つまり、すでに動いているメールのなかでABテストと、その結果に基づいた配信ができるわけです。他のハイエンドのメーラーでも、スケジューリングができるものはありますが、Web上でこの行動をしたらこう返し、この行動をしなかったら別の返しをするというところまで細かく設定できる仕組みは今までなかったと思います。

──使いこなすまでに時間は掛かりそうな印象もあります。

確かに、「RIS」を使いこなすには、ある程度のノウハウが必要で、海外では、我々がベストプラクティス集的なものを用意し、それをもとに実績を作り、次のロードマップを考えるという提案をよくやっています。レスポンシスでは、“結果を売る”という考え方があり、日本上陸にあたっても、パートナーのネットイヤーグループさんが運用支援の専任部隊を作るなど、顧客企業の売り上げにコミットしていく体制の構築を進めているところです。支援サービスの内容については、現在、詳細を検討している段階ですが、ツールの運用支援とメール配信部隊をまるごと抱えるフルサービス、効果測定など業務の一部を受託するコラボレーションなど幾つかのパターンを考えています。

職人芸のような世界は伸びしろが少ない

海外ではメール1通当りの売上げを重視

──すでに日本での営業活動を始めていますが、どのような企業をターゲットにしているのですか。

総合通販企業やカテゴリー特化型のEC企業、旅行関連など大手企業を中心に回っており、6月頃には導入企業が1、2社出てくると思います。今後、導入企業を2012年内に10~15社、13年中に40社まで増やす計画で、このうち半分は小売系のEC企業になると思います。まず大手企業で基盤を作り、大体2年後から中小企業向けの対応を考えていくつもりです。

──実際に営業をしてみて、通販・ネット販売事業者などの反応は。

印象としては、反応がいいですね。必要ないと言われることはまずありません。マーケティング担当者からすれば、今までやりたくてもできなかったことが実現できるツールですから。ただ、総合通販など大手企業の場合、メールはひとつの大きなシステムになるため、入れ替えに時間が掛かる。また、外部企業にサービスを出すことに対して抵抗感を持つ企業も少なくありません。そのあたりが現状のハードルと言えますね。

──海外の企業と日本の企業で、メールマーケティングに対する考え方に違いのようなものはありますか。

海外では「レベニュー・パー・イーメール」(メール1通当たりの売り上げ)という指標を重視し、この数値を上げることにフォーカスしているのですが、日本の企業では、この考え方があまり浸透していません。どちらかというと、大量にメール打ってレスポンスを集めれば売り上げも増えるという考え方があり、メール経由のアクセスは把握しているけれども、売り上げにつながっているかを把握している企業も意外に少ない。また、全般的な傾向として、開封率を上げるための件名、開封した際にクリックしてもらうためのコピーなどに目が向いている印象があります。無論、それは重要なことですが、職人芸に近い世界で、実際の売り上げを考えると伸びしろも小さい。それをしながら、パーソナライズ化されたメールの配信範囲を広げていきましょうというのが我々の提案です。

──今後、日本の通販・ネット販売事業者の間でも「RIS」は注目されそうですね。

メールマーケティングは、最初に施策の目的や初期構築を考え、それを実践して結果を分析し、最適化を図るというのが基本的な流れになりますが、これまでは、配信対象者の抽出など実践に大部分のリソースが割かれ、最初に考える部分と分析の部分が手薄になっていた。しかし、実践の部分が自動化できれば、最初の考える部分と分析の部分に時間を割くことができるようになりますし、それが本来あるべき姿だと思います。日本では、この数年、メールマーケティングが放置されていましたが、逆に言えば、それだけ改善の余地がある。「RIS」は、それに貢献できるツールだと考えています。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG