Fri, September 22, 2017

日本での成功体験は捨てた【走走城上海電子商務 西巻拓自総経理】

「ゾゾタウンならやってくれる」──。アパレル企業からの期待を一身に受けて中国市場に参入したスタートトゥデイだが、2012年5月に事業モデルを見直し、中国完結型のEC事業を目指すことになった。2011年10月末の中国事業開始から約8カ月。現地で指揮をとる走走城上海電子商務の西巻拓自総経理に、事業モデルを一新した経緯や今後の取り組みについて聞いた(聞き手は本誌・神崎郁夫)

中国では何 も信用できないトライしないと始まらない

日本の服に高いお金はかけない

──中国市場の難しさは、どのようなところにありますか。

中国のネット販売市場に参入を決めた当初から、中国で成功するのは簡単ではないという認識はもっていた。「ゾゾタウン」はある程度、高感度なファッションアイテムをプロパー価格でネット販売するビジネです。日本の場合、利便性からブランドの服をネットで買うケースが多いが、中国人がネットに求めているのは、やはり“安さ”です。現状としては、ネットで服を買う人の感覚から変えないといけないという壁にぶつかっています。

──実際のところ、中国でEコマースを展開されて、市場の拡大を肌で感じていますか。

中国のオンライン市場が急速に広がっていることを、ダイレクトに感じることは、正直に言ってそんなにありません。BtoCのネット販売市場が伸びているのは間違いないのでしょうが、当社が扱っている商材にフォーカスすると、市場は右肩上がりなのは確かなものの、“急速に”というわけではありません。これは、日本で「ゾゾタウン」を始めたときと同じ。総合系の仮想モールを利用している人はいても、「ネットで1万円近くするTシャツを買うなんて馬鹿げている」という人が多かったですよね。その感覚と一緒だと思います。

──中国進出当初は日本のファッションブランドから商品を買い取っていましたが、その理由は。

貿易が発生すると、商品が売れずに日本に返品する際にも関税がかかってしまうので、商品は買い取る必要があった。必然的に、委託販売モデルでは中国に進出しているブランドしか扱えないことになります。当初は、デザインに癖があるエッジの利いたブランドも含めて、中国未進出ブランドを発信するのが「ゾゾタウン」の役割だと感じていた。価格が高くなるのは分かっていましたが、挑戦したかった。ただ、結果的に中国人には“異常に高い”と感じたようです。

──中国特有の事情も重なったようですね。

そうです。中国の税関で商品が長期間とめられたままだったり、どこかで商品が抜かれたりすることは日常茶飯事で、いつ手元に商品が届くのか計算できなかったのが正直なところ。例えば、冬物のダウンを売りたいのに、シーズン終盤になってやっと商品が届いたこともあった。日本からはちゃんと早く発送しているのに。季節商材を売るのには、まったく適さない事業モデルでした。

トライ&エラーが前提

──前澤社長は、Eコマースの成功には商品、サイト、集客、物流の4つのバランスが大事だと言っていますが、中国進出に際してはどうでしたか。

中国進出が決まってから立ち上げまでの期間がタイトだったこともあって、すべてが納得のいく状態でのスタートではなかった。ただ、実際に運用してみないと、とくに商品は何が売れるのか分からない。中国の市場調査もあてにならない。実際、「ゾゾタウン」の中国での認知度は30%という調査報告を受けてビックリしたし、何も信用できないと感じました。日本で何か事業を始める場合、その市場を把握するのは当たり前ですが、中国では調査しきれない部分が多いので、トライ&エラーを繰り返すしかありません。そう感じて輸入もやってみたが、実際には機能しなかったということです。

──販促面も日本式に偏りすぎた。

そうです。プロモーションについても、日本流はダメとは言われていましたが、実際にやってみることが必要でした。PDCAの回転を早くすれば、ロスは最低限に抑えられます。リスティングやバナー、雑誌広告など全方位的に販促を仕掛けたが、かけたコストに見合う反応はなかった。効果が得られたのはリスティングなど一部だけ。今後は、費用対効果の高いものに絞るのと同時に、オフライン販促も行う。ファッションイベントに協賛したり、ブランドの実店舗と連携するなど、日本ではやっていなくても、中国では新しい取り組みが必要です。

──5月21日に中国サイトをリニューアルされた。

すでに中国に進出して実店舗を構えるブランドから現地で商品を消化仕入れする事業モデルに変えました。そのため、取り扱いブランドは従来の53ブランドから7ブランドに一気に減った。現状、「スナイデル」や「アースミュージック&エコロジー」などを扱っていて、6月末に12ブランドになる予定です。商品単価は以前の半分くらい。日本円で6000~8000円程度です。

──リニューアル前は月商1500万~2000万円の売り上げになっていたが。

刷新後は商品の数が少なくなり、商品単価も下がっているので、現状はその水準にはないが、取り扱うブランドの数がそろってくれば、巻き返せると考えている。

──ビジネスモデルを一新するのに当たって、既存ブランドへの説明は。

ブランドには現状をちゃんと伝えた。今は、ネットだけで売るのは厳しいと説明した。「ゾゾタウン」の中国進出に期待してくれていたブランドも多く、これに応えられなかったのは残念です。

日本に依存しない中国完結型

──今後の攻め方は。

この半年間、「ゾゾタウン」のブランディングではなく取引先のブランドを推してきたが、中国人には響かなかった。今後は、中国で実店舗を展開するブランドを取り扱うことで、多少なりともブランド推しができると考えている。そういう意味で、ブランドとの二人三脚体制が絶対的に必要になる。例えば、取引先ブランドが店頭で割引キャンペーンを実施するときは、「ゾゾタウン」も連動する。Eコマースの情報蓄積力を活用してもらい、一緒に中国市場を開拓していきたい。

──「ゾゾ」らしさは封印されるのか。

今回の刷新で客層はガラッと変わると見ている。ただ、中国にも従来の品ぞろえを好む顧客がいるのは確かで、当社からの提案はしていきたい。輸入は完全にやめて現地調達型にしたが、機会を見て日本から商品を輸入することも必要。主体は中国進出ブランドだがエッジの利いた商品も扱いたい。

──通関の問題が出てくる。

もちろん、一工夫が必要になる。商材が届くのに時間がかかることは予想できるので、季節感があまりないようなアイテムであれば、買い取り型も再チャレンジしたい。やはり、感度の高いブランドを中国で伝えていかないといけない。一部の消費者はそうした感覚を持っていて、そういう“ゾゾ好き”が発信しやすい仕組みを作っていく必要がある。

──ブランドの開拓やサイト構築については。

5月下旬にブランドから商品を預かるビジネスモデルに転換したので、ブランドが見たいタイミングで在庫や販売状況が確認できないといけない。これまでは、そうしたシステム回りの構築にリソースを割いていた。オペレーションを作ることに注力していたが、そろそろ売れるサイト作りにシフトしていく。

──フルフィルメントのスキームも変わった。

中国では、カスタマーサポートと入出荷業務については外注しているが、自社でコントロールできる状態にはある。撮影、採寸などは中国完結型に移行した。これまでは日本のフルフィル拠点「ゾゾベース」を通してきたが、いまは中国に機能を持たせて、日本に依存しないスキームを確立している。例えば、撮影もすでに中国人モデルが着用した服を撮っている。

──物流面は。

日系の物流企業にお願いしているが、物流品質は徹底してもらっている。資材にもお金をかけ、梱包にも気を使っている。中国のブランドと比べると、まだまだ商品単価が高いこともあって、届いたときの喜びを大事にしたい。中国版ツイッターの「ウェイボー」でも、ゾゾの梱包について消費者からは驚きの声が出ているくらいです。

プライドは捨てたが、ベンチャー精神は捨てない

2のサイトを差別化する

──成功体験を捨てる。

日本からは「これまでの成功体験を捨てろ」と言われている。これはありがたいこと。中国進出企業の多くは日本本社とのやりとりで話が進まないことがある。スタートトゥデイは現地、現場の判断が重要なことを理解し、権限を委譲してくれている。我慢が必要な時か、変わるべき時かの判断を間違えずに前進したい。

──MD戦略については。

メード・イン・ジャパンの企画をやりたい。例えば、日本の「ゾゾタウン」ではアメーバショップを運営し、モデルが作った商品を販売している。モデルの知名度があれば中国でも売れるはず。「ゾゾタウン」はこれまで服のブランドタグで勝負してきたが、中国ではそれだけでは勝てない。彼らが興味を持つ日本のエンタメや文化を服にかけ合わせることで強い商品になる。

──「ゾゾタウン」としてのブランディングは。

タオバオが運営する「天猫Tモール」と自社サイトがある利点を生かしたい。詳細は言えないが、今年度中に自社サイトはブランディング重視型に、Tモールは売り上げをとるサイトに区別していきます。

──今期の重点ポイントについては。

保守的かもしれないが、物流回りの安定化が第一。どれだけの商品、受注があっても撮影からサイトへのアップ、商品発送までをスムーズにする。ともするとブランド数や販促に目が行きがちだが、ECはフルフィルメントが土台。比較的に安定しているが、これをさらに磨くのが先決です。

──チャレンジする部分は。

日本のファッションブランドを中国で、モール型で売ること自体がかなりのチャレンジだと感じている。中国では日本ブランドよりも韓国ブランドの人気が高いとも言われている中で、日本ブランドを売っていくのはチャレンジ。日本ブランドを軸にしていくが、韓国ブランドも調査している。日本の「ゾゾタウン」を流れに乗せて、その後は日韓が合わさった「ゾゾタウン」になるのではないか。韓国法人のスタッフとは常に情報交換をしている。

──中国市場で大事なことは。

プライドを捨てること。中国では大金をかけて見栄えを良くすることよりも、深く根をはることが大事。泥臭くていい。「ゾゾタウン」の取り扱いアイテムは、お金を注ぎ込んだら売れるという商品ではない。「ゾゾタウン」としてのベンチャースピリットは持ち続け、当社だからできることを仕掛けていきたい。中国に進出する日系企業同士で協力体制を築き、話題性のあることをしたい。現地で日系企業と話をすると、「何かやりたいよね」という話になる。

──ソフトバンクグループとの連携はいかがですか。

中国ではソフトバンクとタッグを組んでいますが、通販サイトのオペレーションは「ゾゾタウン」のノウハウです。中国法人設立の際には、アリババがサポートしてくれて早く設立できたということはありましたが、それ以外はまだ、ほとんど連携していません。今後は、ソフトバンクの資本が入っているメディアなどを有効活用していきたいと考えています。

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