“小売りの巨人”のイオン、ネット販売に本腰――ネット専業大手の商圏奪えるか?

「年間延べ9億人が利用する店頭の売り場を、ネットで拡大したい」――。8月9日に都内で開催した新たな通販サイトの発表会で、イオンのネット販売事業のトップである小玉毅イーコマース事業最高経営責任者(CEO)はこう語った。

イオンは8月10日、グループのネット販売を統合した新サイト「イオンスクエア」をオープンした。イオンが展開するネットスーパーやショッピングサイトのほか、実店舗「イオンモール」に出店する139のアパレルブランドが参加する。実店舗同様に生鮮品から感度の高いファッションをワンストップで利用できることが特徴だ。

小売ノウハウを持ち、商品力や資本力があるイオンのEC本格化は一定の成果が期待できそう。しかし一方で、すでに一大勢力となった楽天やアマゾンなどが大きな商圏を確保している。果たして、イオンは商圏を奪い、ネット販売でも巨大になれるのか。

実店舗と顧客をつなぐ「イオンスクエア」

8月10に立ち上げた「イオンスクエア」は、グループのポータルサイトとして位置付けるもの。ネットスーパーのほか通販サイト「イオンネットショップ」、金融事業の「暮らしのマネーサイト」を統合し、700万人のIDを一本化する。9月にはショッピングモール「イオンモール」の通販サイト「イオンモールオンライン」がオープン。実店舗に出店する139のアパレルブランドがネット販売を行う。通販サイト「イオンモールオンライン」で購入した商品は、店頭で受け取ることができるようにし、店舗とネットの連動を図る考え。

順次、イオン傘下のスポーツ用品店「スポーツオーソリティ」や化粧品の「ザ・ボディショップ」などもネット販売を開始する。

「イオンスクエア」をイオングループ内外のウェブチャネルとして位置付け、イオンを利用している年間延べ店舗利用者9億人をウェブへ誘導し、ウェブから店頭へと送客していく。「店と顧客をつなぐサイトはイオンスクエアのみ。他の通販サイトとは一線を画す」(小玉イーコマースCEO)という。

「イオンスクエア」の目標は初年度に会員数を1000万人、2016年度をメドに3000万人まで拡大させる計画。小玉イーコマースCEOは「決して高い目標ではない」という。その自信はどこから来るのか。

リアル連動のWAONポイントやキャンペーンで集客

その言葉の根拠の一つが、イオンが独自に展開する電子マネー「WAON」のと連動したポイントサービスだ。9月3日から、「イオンスクエア」に新ポイント制度「ネットWAONポイント」を導入する。「イオンスクエア」の買い物で200円ごとに1ポイントを貯めることが可能で、ネット販売で貯めたポイントを電子マネーに変えることができる。

電子マネー「WAON」は現状2600万枚を発行し、月間利用件数は5320万件。イオンの店舗だけでなく、ファミリーマートなどのコンビニやファーストフード店で利用でき、またJALマイレージとの交換も可能。14万8000カ所で利用でき、その取引総額は約1兆円だという。「リアルのWAONとネット販売のプロモーションを連動させていきたい」(同)という。

店舗情報集約と最適な表示で会員化

「イオンスクエア」のサイトの出来についても、自信を見せる。日本コカ・コーラの「コカ・コーラ パーク」をベンチマークしてサイトを構築したものとする。小玉イーコマースCEOは、「情報だけでユーザーを会員化する『コカ・コーラ パーク』のコンテンツ力やマーケティング力が魅力。『イオンスクエア』も、毎日楽しんでもらいユーザーにとって有益なサイトとする」と話す。

「イオンスクエア」は「知る」「買う」「得する」の3テーマで構成。ネットスーパーやネットショッピング以外に、ゲームや占いなどのコンテンツを搭載。

サイトの利用ごとにアクティビティポイント「スクエアゴールド」を配布し、ゲームや投稿に利用できる仕組みだ。「イオングループの情報を集約し、ユーザーが選択したチラシ情報を配信するなどカスタマイズして表示することで顧客との接点拡大につなげる」(同)という。

実店舗小売のノウハウは通じるか

ネット販売事業者にとって、イオンのネット販売強化は脅威だ。これまで培ってきた小売の知名度とノウハウがあるためだ。例えば、GMSはこれまで、大規模店舗を郊外などに出店し、食品や日用品、雑貨、衣料品などを取り扱ってきた。食品の特売やPB衣料品などをきっかけにユーザーの来店を促進し、店内の導線を工夫して各売り場へと誘導。商品力や利便性で、中小の専門店から来店客を取り込んできた。今回、イオンはネット販売でも同様に、通販サイトを統合することで、売り場を総合化。1つのIDで、日常食品や生活雑貨、衣料品などをワンストップで購入できるようし利便性を高めてきた。

ネット販売市場にはすでにアマゾンのように、食品やアパレル、家電や書籍など1サイトで商品カテゴリーを網羅しているサイトはすでに存在する。検索できる利便性で実店舗よりも目的の商品を探す手間はかからない。日常食品から衣料品までワンストップで購入できるとは言え、既存のネット販売事業者からすると脅威ではなさそうだ。

また、イオンはポイントを活用した販促を計画するが、すでに楽天がポイントによる販促で顧客の囲い込みに成果を上げている。商品単価が安く利益率が低い食品小売で自らの利益を圧迫してまで、楽天並みの販促を行い、継続することは難しいだろう。

他の事業者にはないイオンの強みは実店舗連動だ。ただ、アマゾンなどのネット販売専業は店舗を持つことなく、コンビニ受け渡しや当日配送などの配送面と品ぞろえを強みに売り上げを伸ばしている。果たしてイオンの強みは通じるだろうか。

ネットショッピングの統合が加速

大手食品小売のネット販売強化をめぐっては、すでに7&iHDは一昨年からネット販売専業子会社のセブンネットショッピングの通販サイト「セブンネットショッピング」をグループの通販の玄関サイトと位置づけ、グループ6社が展開する7つの通販サイトを統合、強化に乗り出している。

さらに、西友が7月31日に、DeNAと連携。来春をメドに、ネットスーパーと通販サイトを統合した新サイトを開設する予定だ。イオンだけでなく、大手食品小売のネット販売について、ネット販売事業者はその成否を含めて注視する必要がありそうだ。

イオン イーコマース事業最高経営責任者 小玉毅氏に聞く

ネット販売の勝算は?

Q;売上高目標を教えてください。

A;公表していない。今後、10兆円伸びるとされているネット販売市場の成長に合わせて、イオンも急速に成長したいと考えている。

Q;ネット販売市場にはネット専業のアマゾンや楽天などが大きな商圏を持っている。勝算は。

A;楽天やアマゾンは、リアル店舗を1つも持っていない。対してイオンは、店舗を通じて9億人の顧客を保有する。この顧客に対して、店舗を介してネット販売に誘導する。ネット専業プレイヤーにはない、リアルの店舗網が強みとなり、顧客との接触機会を増やせる。単品購入が多いとされるネット販売だが、リアルの小売プレイヤーとして、これまで買いまわりを増やす工夫をしてきた。このノウハウをウェブに持ち込んでいく。

Q;ただ、ウェブへの集客を加速することで、実店舗の客単価は減少する懸念もある。固定費がかかる本業の店舗の収益性が揺らぐ恐れがあるのでは。

A;ウェブとリアルの食い合いを気にしていては経営が凝り固まる。これがEコマース化を遅らせている原因の1つだろう。リアルとのカニバリを恐れてはシナジーを追求できないので、グループのイーコマースCEOとして、その発想を変えたい。

Q;黒字化が難しいとされているネットスーパーへの先行投資はリスクを伴うのではないでしょうか。

A;ネットスーパーの業績は公表していないが、高い収益性に手ごたえを感じている。別々のショッピングカートを、来年以降をメドに、一本化する計画です。決済の手間を解消し、マーケティングの施策に合わせて買いまわりできるようにする。

Q;今回「イオンスクエア」で電子マネー「WAON」と連動したポイントを導入したが、すでにネットのポイントで先行する楽天などに対して、ポイントの強みをどう打ち出していくのか。

A;ネットとリアルが共生していくことが大事。リアルではWAONポイントを使用した販促で成果を上げているので、そうした実績を踏まえてリアルを絡めて大々的な販促をやろうと思っている。

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