Thu, September 21, 2017

【有力企業の動画活用の今】エンタメから商品の魅力伝えるツールに

「トルトコミテ」の初回となる甘エビ漁の様子

【2012年11月号】ここ最近、ネット販売実施企業が通販サイトに動画コンテンツを導入するケースが増えている。過去にも、インターネット動画共有サービスが知られるようになった際、通販業界ではネット専業を中心に動画活用を試す事例が相次いだが、ほとんどのケースは長続きしないものだった。

しかし、昨今の動画活用で顕著なのは、ネット専業だけでなく大手のカタログ通販やテレビ通販企業、さらには兼業メーカーなども成長が見込まれるウェブ事業強化の一環として“売るため”に独自の動画活用法を模索しているようだ。

例えば、カタログには掲載していない商品のコーディネート提案を動画で展開したり、放映中のテレビ通販番組を動画配信する従来の取り組みを飛び越えてウェブ限定コンテンツを仕掛けるなど、買い物に対するエンターテインメント性を高める要素としてだけでなく、動画の持つ表現力を活用することで購入時の不安を払拭したり、商品の魅力をより詳しく伝えることで売り上げにつなげる新たなツールとして動画コンテンツの制作にコストをかけてきている。

現状、動画活用を積極的に進めるネット販売実施企業の取り組み事例を見ていく。

商品の新たな価値を見せる

カタログのノウハウや経営資産をいかにインターネットで活用するか。これは、カタログをメーンに展開してきた総合通販各社にとって共通したテーマと言えるが、そのなかでも、積極的な取り組みを見せているのが千趣会だ。

同社では、従来カタログの補完的な受注機能だったネットの役割を見直し、ネット時代に対応した施策を推進。「ベルメゾンネット」での動画活用を積極化するほか、クォリティーの高いカタログ画像を見せるコンテンツを展開。また、ネット専用の商品画像撮影スタジオを新設するなどの社内的な体制整備も進めている。さらにカタログの経営資産を活用する取り組みとして新たに展開を始めたのが動画を活用したカタログにはない商品のコーディネート提案だ。

この試みを行っているのは、ファッションカタログの「STYLE NOTE(スタイルノート)」。カタログの場合、誌面の制約があり、掲載できるコーディネートは基本的に1種類になる。商品の見せ方などの工夫で顧客の商品着用イメージを喚起し、購入につなげているわけだが、一方では誌面のイメージと自分のスタイルが違うと感じ、購入を見送る顧客がいることも考えられる。つまり、さまざまな顧客の好みにマッチしたコーディネートを提案すれば、受注の拡大につながる可能性があるわけだ。

特に「スタイルノート」は、感度の高い女性をターゲットとしており、商品単価が他のカタログより高い。その意味では、さまざまな角度から商品の価値を訴求することは重要になる。「スタイルノート」での動画活用の取り組みは、顧客の購入意欲の喚起や自社商品を使ったコーディネート提案による購入単価の引き上げ、通販サイト「スタイルノートショップ」の価値向上などにつなげる施策になる。

では、サイト上でどのような展開をしているのか。「スタイルノート」秋カタログを例にとると、同カタログのカバーモデルを努める絵美里さんが着用する商品のコーディネート動画5本を流している。雑誌のカバーやCM出演、アパレルブランドとの契約など露出度が増えている絵美里さんの起用による相乗効果を狙ったものだ。

制作の流れとしては、動画撮影のイメージを制作部門でラフ案やナレーション案を作成し、プロダクションに絵コンテを依頼。コーディネートは、カタログとは異なるイメージのテーマを決め、スタイリストに依頼する。今回の秋冬カタログはテイストがエレガントだったことから、動画では「カジュアル」「通勤」を中心にしたスタイリングにしている。

また、コーディネート動画は60秒強。1本の動画撮影に1時間弱の時間を要することから、今回の秋冬カタログでは1商品につき動画1パターンとしている。構成としては、カタログ誌面のカットを見せた後に動画を見せる形で、静と動、カタログと動画のイメージを対照的に見せているのが特徴だ。撮影段階では商品のポイントが分かる
よう、動きの流れやスピード、静止秒数、モデルの表情などに留意したという。

現状、コーディネート動画の閲覧者数や動画経由の受注状況などの詳細は分析していないが、動画紹介ページのPVが1日平均300程度。これは「スタイルノートショップ」の中でも比較的多く、千趣会では「関心の高さがうかがえる」(広報)とする。「スタイルノート」の顧客はカタログの世界観のファンが多いが、同じ世界を表現した動画の展開に手応えを感じているようだ。
漁を生中継、とれたてを販売

テレビ通販大手のジュピターショップチャンネル(JSC)は2012年9月13日から、ネット動画を活用した生鮮品のネット販売「トルトコミテ」を始めた。同社のカメラマンが漁船に乗り込み、漁の様子を生中継でネット配信。“とれたての魚”をその時に獲れた分
だけ数量限定で即出荷、販売する仕組みだ。

従来から、テレビで放送中の通販番組を通販サイトで動画配信する試みは行なっているが、今回はネットだけの限定コンテンツ。「一定の数を売らなければならない『テレビ』ではできないネットならではの試み。今後に期待している」(同社)として、本業のテ
レビ通販で培った“モノを売る映像”を活かして、ネット販売においての新たな可能性を模索しているようだ。

「トルトコミテ」は「生鮮食品を産地で『“獲る(採る)ところ”を見て』もらい、鮮度のよさを感じてもらうことが売り」(同社)というライブ動画配信を活用したネット販売。実際に
JSCのカメラマンなどのスタッフが漁などに同行し、1日4回程度、それぞれ1時間ずつ漁の様子などをネットを介して生中継する。生中継を行なわない時間帯は直前の生中継動画を閲覧できる仕組み。当面、隔週の木・金曜日に実施する予定。

9月13日の初回の「トルトコミテ」は北海道・積丹半島の東しゃこたん漁協による甘エビ漁を生中継。JSCによると漁の結果、「甘エビ」はもちろん、「ボタンエビ」も獲れたため、急遽、販売。甘エビは3675円、ボタンエビは4200円(いずれも内容量は500グラム、送料込み)で販売。甘エビ、ボタンエビ合わせて約50セットを販売して獲れた分すべてを完売したようで順調な出足を見せた。

ところが翌日の同じく東しゃこたん漁協による「秋鮭」の漁は不発。朝から漁の模様を生中継したが、一向に鮭は獲れず、結果として2回目の「トルトコミテ」は販売できる海産物はなしという結果に。「今年はまだ暑く鮭がまだ遡上してなかった」(同社)との
こと。

ただ、皮肉にも漁が不発に終わった秋鮭漁の動画が「いかにもライブっぽい」と人気を呼んだよう。「トルトコミテ」はライブ動画配信サイト「ユーストリーム」にもアップしているのだが、その回の視聴数はかなり伸びたようだ。「まさにライブならでは。2回目の漁は何も獲れず、何も販売できなかったが、逆に多くのお客様から視聴されたようです(笑)」(同社)。

3、4回目となる9月27、28日には長崎・五島列島の五島ふくえ漁協による定置網漁の模様を生中継。カンパチなど「定置網」でとれた魚を「鮮魚セット」として送料込み5250円で販売。数は明らかにしていないが完売したようだ。なお、10月5日には再び「秋鮭」の漁を実施。今回は見事、の秋鮭がとれ、3キロ6300円で販売。また、10月11、12日には鳥取漁協によるイカの定置網漁を生中継した模様。

企画のユニークさや目新しさが受け、完売が続くなど顧客からも反応がよい様子の「トルトコミテ」。ただ、「まだ現地からのオペレーションが大変でノウハウの蓄積を優先している。試行錯誤をしながらやっていきたい」(同社)とし、まずは安定的な仕組み作りを進め、いずれ「トルトコミテ」を同社のネット利用率を高めるためのキラーコンテンツの1つに育てていきたい狙いもあるようだ。

モールとの差別化ツールに

先行受注会アイテムを動画で見せる

セレクトショップ大手のユナイテッドアローズ(UA)は、自社通販サイト「ユナイテッドアローズ・オンラインストア」で動画を活用した着こなし提案を強化している。新客獲得のほか、他社ECモールとの差別化を図る集客ツールとして動画を定着させたい考えで、2012年8月2日には自社通販サイト内にスタイリング動画を集積したページ「WATCH MOVIE」をオープンした。

UAは、2012年2月にも動画活用をテストしているが、その際は対象8アイテムの各商品詳細ページに動画を貼り付けただけだった。それでも当該アイテムの閲覧率や買い上げ率を押し上げる効果があったため、本格運用に踏み切った。

動画コンテンツを導入するのに当たっては、ブライトコーブ社の動画プラットフォームを活用し、撮影業務などは外部企業に委託。PCに加え、12年3月に開設したスマートフォン用のサイトでも見られるようにした。

「WATCH MOVIE」のスタート時には、いずれも先行受注会の目玉商品で、「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」で展開するメンズ向けのオリジナルレーベル「モンキータイム(MT)」のミリタリージャケットなどアウター8商品を紹介。インナーやスカーフの合わせ方などスタイリングで見せるのと同時に、アイテムの生地感や裏地の柄などディテールをしっかり伝えることに重点を置いた。

その後、「ユナイテッドアローズ」のメンズの先行受注商品でも動画活用を始めており、同ブランドのウィメンズについても年内の動画配信に向けて準備を進めているという。

多くの顧客に動画コンテンツを見てもらえるよう、「WATCH MOVIE」のバナーを通販サイトのトップページに設置し、動画を集めたランディングページに誘導した。一方で、動画の尺はテスト時の90秒から48秒に短縮。企画スタッフのインタビューを省き、商品のディテールなどを伝えることに専念した。

動画コンテンツの成果は、「MT」については、直接コンバージョンは取れなかったものの、先行予約商品のスタイリングで一緒に着用したアイテムにも商品詳細ページへのリンクを貼ったことで、アシストコンバージョンは数アイテムで取れたという。

また、2月にテストした動画対象商品と比べると、ページ訪問数は上がっており、ここでも動画コンテンツから商品ページへの導線を確保したことが奏功したようだ。

「MT」の後に掲載した「ユナイテッドアローズ」メンズの秋冬商品は、直接コンバージョンも取れ、「MT」よりもさらに多くの売り上げを後押しする1コンテンツとして機能しているという。

UAではシーズンの目玉商品の提案には動画の活用を定着させたい考え。また、将来的には撮影した動画を自社通販サイトだけでなく、店頭でも売り上げをアシストするツールとして利用していきたいとしている。

機能商品をTV通販風に紹介

スポーツ用品大手のミズノは、自社通販サイト「ミズノショップ」で動画活用のテストを始めた。総合スポーツメーカーとして高機能商材が多く、商品の特徴を動画で見せることで購入率の向上などにつなげる狙いだ。現時点で本格導入は未定だが、アクセスやコンバージョンの状況を検証して決めるという。
ミズノがスタートした動画コンテンツは「ミズノショップTV」。シューズ、サポーター、ウエアの3カテゴリーから計9アイテムをとり上げ、各3~4分の動画で紹介する。

同コンテンツではFM局のDJを務める仙石幸一さんなど2人をMCに起用。スタジオでのかけ合いや屋外での商品使用状況、性能比較の実験映像などをテロップも活用してテレビ通販風にじっくりと説明する。

同社は大手テレビ通販にも商品を卸しているが、ウェブ動画については当該部署との連動はなく、動画制作も通販番組のノウハウを持つ外部の制作会社が参画した。

シナリオや演出面では、「商品の特徴をわかりやすく端的にまとめることを意識し、レポーターは実際に使ってユーザー目線の声を視聴者に伝える」(ミズノ)という。

同社では通販サイトのトップページにバナーを配して動画コーナーにサイト訪問者を誘導するほか、動画は対象商品の詳細ページでも視聴できるようにしている。

テスト販売期間では、わらじの知恵とウォーキング科学を融合したアウトドアサンダル「ウエーブリバイブOD」などのウォーキングシューズを中心に、より詳しく商品の特徴を確認して、納得した消費者が購入しているという。本格導入後は販売予算の大きい主力商品を動画で紹介したい意向だ。

ユーストリームで通販番組

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は2012年7月29日、同社では初めてとなるライブ動画配信サイト「ユーストリーム」を活用したショッピング番組「夏だ! アディダスゴルフだ! テーラーメイド祭りだ!GDO特別企画Ustreamショッピング」を放送した。

同企画はアディダスグループでゴルフ用品メーカーのテーラーメイドとのコラボレーション企画として行ったもので、同グループが展開するゴルフシューズブランドのSAMBA GOLF」をメーンに取り上げた。

番組にはナビゲーターとしてプロゴルファーの関雅史氏と、ゴルフ雑誌ライターの鶴原弘高氏が出演。同商品の魅力を伝えながら、夏ゴルフに向けたカラーコーディネートについて、さまざまなアドバイスを行った。さらに、GDOからもショップの担当者が出演して、リアルタイムでナビゲーターとの価格交渉や、おまけ商品の交渉を行うなど販売だけでなくバラエティー要素も盛り込んだ内容で展開した。

取り扱いアイテムは「SAMBA GOLF」シューズのほか、数量・時間限定で提供する商品や、ドライバー、アイアン、グローブなど。放送時間は20時から23時。放送終了後にも、自社通販サイト内に特設サイトを開設し、8月上旬まで動画を公開した。

同社ではユーストリームを活用した理由について、商品への質問に対する回答や価格交渉をリアルタイムに行えることや、番組中に商品購入で“サンバ隊”が踊るなど、エンターテイメント要素を高めることで、より購入への高揚感を演出できることが狙いだったという。

今回の放送での視聴者数は瞬間最大で102人、トータルでは930人となった。ユーストリームも含めた、それぞれのキャンペーンなどの売り上げ数値は公表してないものの、今回の動画紹介での個別商品、特に動画内で強調した商品に関しては、受注額で64%増の結果を残した。

今後については、商品の選択、セット商品の組み合わせ、紹介方法によっては動画紹介販売もあり得るが、現時点ではユーストリームを含めた動画による新たな販売企画は決まってない。

Share This :

Twitter Delicious Facebook Digg Stumbleupon Favorites More

Comments are closed.