Sun, April 23, 2017

今後のECは「CtoC」が伸びる【鶴岡裕太BASE代表取締役】

無料で通販サイトが運営できるサービス「BASE」が好調だ。「誰でも簡単にネット販売が始められる」ことを売り文句として、2012年11月のサービス開始から1カ月強で利用者数は1万を突破した。流通額も月間1000万円を超えるなど、新手のCtoCネット販売サービスとして注目を集めている。BASEとはどんなサービスなのか、そして今後どのような形でマネタイズしていくつもりなのか。「CtoCのネット販売は今後さらに伸びる余地がある」と断言するBASEの鶴岡裕太代表取締役に聞いた。(聞き手は本誌・川西智之)

まったく知識のない人でもネット販売ができるシステム

無料でショップ運営が可能

――BASEとはどのようなサービスですか。

まったく知識のない人でもネット販売ができるような仕組みにしたいと考えて作った、無料のネットショップ作成サービスです。実は、私の母は大分で婦人服を販売する小売店を営んでいるのですが、数年前に「ネットで商売したい」と言い出したことがきっかけとなっています。

母はパソコンにもネットにもまったく詳しくなく、楽天市場のような既存の仮想モールを使って物を売るのは難しい。私が付きっきりでサポートしないと難しいでしょう。さすがにそれは無理なので、お金も知識もない人でも、気軽にネット販売を始められるシステムはできないものかと考えたわけです。

――paperboy&co.の創業者である家入一真氏が率いるクリエイター集団「Liverty(リバティ)」から生まれたプロジェクトだとか。

もともと私は、家入さんが代表を務めるハイパーインターネッツ社でインターンとしてエンジニアを務めていましたのです。2012年4月からはLivertyでウェブサービスの立ち上げに特化していました。12年5月にネット上で炎上し、現在はサービスを停止している学費支援サービス「studygift(スタディギフト)」にもエンジニアとして関わっていました。

今までは家入さんの企画をサポートする形だったのですが、今度は自分でもプロジェクトを立ちあげたいと考えて始めたのがBASEです。12年12月に「BASE」として会社化しました。

――家入氏はどのような形で関わっているのですか。

実は企画段階でいろいろな人に相談したのですが、利用料金を徴収しないシステムと聞いて「もったいないよ」とか「バカじゃないの」とか言われることがほとんどでした。ただ一人家入さんはだけ「面白い」と賛同してくれました。その言葉があったからこそ、自信を持ってサービスをリリースすることができたので、非常に感謝しています。家入さんの作ったロリポップ!(安価なレンタルサーバーサービス)みたいですね、と言われるのは一番の褒め言葉です。その他にも、さまざまなアドバイスをいただいています。

――本当に誰でも使える仕組みなのですか。

初期費用や月額費用はありませんし、販売数量に応じた手数料も不要です。ただ、クレジットカード決済の場合は手数料(3.6%と40円)が発生しますが、これは当社側からペイパルに支払う実費です。「無料」をうたうネットショップ作成サービスは他にもありますが、本当にまったく費用がかからないのはBASEだけのはずです。

登録の際に必要なのはURLとメールアドレスとパスワード。あとは販売する商品を登録し、テンプレートからデザインを選んでカスタマイズするだけです。決済手段としては、クレジットカードのほか、代引きや銀行振り込みも使えます。

お金の管理も誰でも分かるようになっています。売上高は「今までの売り上げ累計」を見ればひと目で分かりますし、カード決済の分は「引き出していない残高」として記録されます。とにかくシンプルなものを目指しました。

予想以上のユーザー数の伸び

――個人での利用が多いのですか。

やはりCtoCが多いですね。現在のところ、個人が6割、法人が4割といった感じです。ただ、法人といっても個人運営に近いようなところが中心ですね。

――ヤフー!オークション(ヤフオク)のようなネット競売が競合となるわけですか。

そうですね。ただ、同じURLで商売ができますから、ネット競売よりもリピーターを獲得しやすいのがメリットとなります。例えば、今まではヤフオクでSIMフリーのiPhoneを販売していた人が、BASEに流れてきているケースもあります。

楽天市場のような圧倒的なプラットフォームではありませんし、店を作ったところでBASE側が宣伝をするわけではありません。お金はなるべく使わず、ソーシャルアプリを活用し、周囲の人たちからくちコミで広めて集客するのが理想でしょう。わざわざ仮想モールに出店して、月額費用をかけるまでもない商品を売るにはもってこいだと思います。

――ユーザー数は好調に増えているようですね。

1月上旬現在で1万2000ほどです。このうち、実際に物を販売しているアクティブなユーザーは3000程度でしょうか。「取りあえず登録してみた」というユーザーが多いのは確かですが、当初は3月までに1万ユーザーを超えれば上出来だと思っていたので、非常に順調だと思います。

――流通額は。

サービスを開始したのは12年11月20日ですが、12月末までの流通額は1080万円です。予想よりも多い額ですね。将来的には10億円規模にしたいと思っているので、まだまだ第一歩ではありますが、サービスのリリース1カ月目という観点では最低限の額はクリアしていると思います。

――どんなお店に人気があるのですか。

例えば、マックブックに貼るファッショナブルなシールを販売している店舗は、有名ニュースサイトに取り上げられたこともあって、非常に好調のようです。

――決済手段として代引きと銀行振り込みを選んだ場合、やりとりは店舗と顧客に任せる形となるわけですが、「商品が届かない」といったトラブルが起きる可能性もあります。どのように対応しますか。

今のところ目立ったトラブルは起きていませんが、確かにそれは問題だと思っています。カード決済に関しては、こちらが商品代金をいったんプールする形になりますし、商品がきちんと配送されたかどうかのステータスを確認しています。もし「商品が届かない」といったトラブルが起きれば代金は店側に振り込まれませんから、安全性は担保できています。

代引きと銀行振り込みに関しては、将来的にはこの2つが使える決済代行サービスを利用し、そちらに任せることで安全を担保するという形も想定しています。

数年後には誰もが気軽にネット販売できる時代に

マネタイズは半年間考えない

――利用者からは実費以外徴収していないわけですが、このスタイルで利益は出ているのですか。

今のところ儲けは出ていません。まず向こう半年間はマネタイズを考えず、まずは利用者を集めるとともに、機能を追加して満足度を高めることに専念したいですね。

1カ月で1万店舗も増えているネット販売サービスは他にはありません。仮想モールにしても、利用店舗の伸びは頭打ちでしょう。現段階では、マネタイズを遅らせてでもユーザーを集めたいと思っています。

――利用者はどうやって集めるのですか。

主にツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアで宣伝しています。

――将来的にはどのように利益を出すつもりなのですか。

ひとつ考えられるのは決済の部分です。現在はこちらがペイパルに支払う実費を利用者から徴収する形となっていますが、トランザクション(処理件数)が増えれば、決済代行会社に支払う手数料率が下がります。利用者から徴収する手数料率を現在のままにすれば、この部分がマージンになるわけです。ただ、現在の手数料率を上げてまで利益を出すことは考えていません。なるべく今と条件は変えたくないと思っています。

有料で使える機能としてプラグインを販売する、といった手法の方が楽なのですが、それだとサービスのコンセプトとずれてしまいます。お店を開く前にお金をもらうというのは、こちらも安心してしまいそうで少し怖いんですよね。商品が売れてからシステムにお金を払う方が、利用者にとっては理にかなっているでしょうし、こちらとしても売り上げを伸ばしてもらいたいですからね。

――機能の改善は進めているのですか。

ユーザーの要望もどんどん取り入れています。例えば、当初は送料込みの価格表示のみだったのですが、送料を別途表示できるようにしました。他にも「在庫発送を請け負ってもらえますか」という声もあるので、今後は外部連携も考えたいですね。

ただ、あまりややこしい機能を付加すると当初のコンセプトからずれてしまいますから、高機能と分かりやすさの両立が重要になります。有料で使える機能の導入については、現段階では考えていません、

初年度流通額目標は3億円

――楽天市場など、仮想モールに出店している企業の取り込みは考えていますか。

機能的には仮想モールで本格的に商売している人たちを取り込むにはまだ足りないと思います。ここを取りに行くにはもっと機能を付加しないと駄目でしょう。現在のターゲットは、paperboy&co.の「カラーミーショップ」を使っている人たちのやや下にあたる人たちです。気軽なネット販売を可能にすることで、今まで市場に出てこなかったような人たちが参入してくれれば面白いですし、市場も活性化するでしょう。

――流通額の目標は。

当初は1年間で1億円を目標にしていましたが、開始から1カ月で1000万円を達成したので、今は3億円に上方修正しました。

――BASEを利用する店舗の仮想モールを作る考えは。

将来的にはありえますが、今は考えていません。

――CtoCのネット販売は今後伸びていきそうですか。

今後のネット販売のテーマはCtoCになるでしょう。昨年は「ヤフー!バザール」のように、個人でも簡単に使える仕組みがでてきましたが、2、3年もすれば誰もがネット販売ができるようになり、ネットで気軽にお金を稼ぐことができるような時代が来ると思っています。まだシェアを云々する段階ではありませんから、他のサービスと一緒に市場を拡大していければいいですね。

取材後メモ

今まで、個人がネットで商品を売ろうと思った場合、ヤフオクなどの競売サービスや、アマゾンマーケットプレイスを使うのが一般的でした。これらは集客力が大きな魅力ではありますが、消費者は「商品」を切り口に検索しますから、個人やそれに近い人たちにとっては固定客をつけるという点では、ややハードルが高いのは事実です。その点、通販サイトであればリピーターは作りやすいですし、ソーシャルメディアの活用など、工夫次第ではお金をかけずに集客を図ることも可能かもしれません。

ただ、懸念は取引上のトラブルです。競売サービスでは個人間のいざこざはつきものですし、「BASE」の店舗でも高額な商品を買うのをためらう消費者は多いのではないでしょうか。一方で、店にとっても「無料」なのは魅力ですが、システム提供側が永続的に続けてくれるのか、という心配もありそう。流通額を目論見通りに伸ばせるかどうかは、こうした不安を解消することも重要になるでしょう。

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