Sun, November 19, 2017

ドコモ傘下で次の成長ステージ目指す【井上直也・マガシーク社長】

 マガシークは、NTTドコモによるTOBに賛同し、2013年3月下旬には同社の傘下に入る見通しとなった。衣料品ネット販売市場には大手資本の参入が相次いでおり、“ネットで服を購入したことのない層”をどれだけ取り込めるかは、今後の業界勢力図に大きく影響しそうだ。マガシークの井上直也社長にTOB賛同の背景や、同社の足元の取り組み状況などについて聞いた。(聞き手は本誌・神崎郁夫)

ドコモさんとの提携は

新客開拓の切り札になる

EC初心者獲得へ

――ドコモによるTOBが発表された。

親会社の伊藤忠商事はBtoBが強いけれど消費者の顧客基盤はありません。すでにアパレル企業とのネットワークやロジスティクスでの強みは十二分に活用しました。ただ、アマゾンさんを含めて、ファッションECの競争の土俵が大きくなってきている中で、伊藤忠だけが親会社でいいのかという議論が2~3年前からあり、良い提携があればやろうというディスカッションは両社でしていました。

――TOBに賛同した理由は。

ドコモさんから、かなり本気でECをやりたいという話がありました。伊藤忠はビジネスが多岐にわたっていて、社長が「ECをやるぞ」という会社ではありません。ドコモさんは今後、サービス企業となって、ECにも本腰を入れると言ってますし、会社を挙げて当社を応援してくれるという意味で良いパートナーだと思います。顧客基盤も6000万人あり、当社が飛躍するための株主としてふさわしいと感じました。

――昨年夏から資本提携の話が進んでいた。

元々は、ドコモさんの「dショッピング」の中でファッションを始める際に、資本提携とは関係なく当社と組みたいという話がありました。ただ、「dショッピング」で売れた商品の手数料などを考えると、折り合いのつけどころが難しかったというか、当社としても本気で「dショッピング」に商品投入できるかを考えたときに、資本提携して一体化すれば、そうした問題もクリアになると判断しました。

――TOB成立後のサイト運営は。

当社が運営する「マガシーク」と「アウトレットピーク」の両サイトはもちろんこれまで通りで、第3のサイトとしてドコモさんとの新サイトを立ち上げる計画です。

――「dショッピング」内にファッションカテゴリーを開設するのか。

現状の「dショッピング」は日用品や飲料などが多く、その並びでファッション商材を売るのは難しく、ファッションは違った見せ方をしようという議論が始まったところです。

――スタイライフはKDDIと「ブランドガーデン」を運営するが、自社サイトの周知につながっていない。

われわれの場合はダブルネームのサイトを立ち上げる予定です。「マガシーク」の名前が出せる点は、提携の話が出る前から提案されていました。

――ドコモに一番期待することは。

いまの顧客層からユーザーを広げられることが大きいですね。成長が見込まれるファッションECにあって、当社も縮小均衡に入るタイミングではなく、ブランド認知を高めるために広告宣伝も打ち、送料無料などのサービス面も拡充する必要があります。ドコモさんが持つ顧客に向けて、効率的な会員獲得や認知拡大につながると期待しています。

――「dショッピング」はこれまでに150万人の訪問者があった。

ドコモさんはECのライトユーザーを囲い込むという戦略のようなので、コアのリピーターは「マガシーク」で買ってもらいたいし、もう少し裾野を広げたところというのが、ドコモさんと組んだ “のびしろ”の部分になります。単価は多少低くてもネットで初めて服を買ってもらい、徐々にヘビーユーザーになってもらうのが理想です。

――キャリアが運営するサイトの設備投資額は大きくなりがちだ。

今回のシステム投資はドコモさんが行うことになると思います。新サイトも「dショッピング」の横展開のような形でサイト構築するわけで、当社の投資負担は少ないです。

――伊藤忠が25%の株を保有する。

ドコモさんとしても、ネットワークや人脈、商品調達力などの面で伊藤忠の強みを引き続き発揮してもらいたいと考えているのでしょう。

利益より規模拡大狙う

――ファッションECにおけるM&Aの流れをどうみている。

それだけマーケットが伸びそうだということで、注目を集めていること自体は悪いことではありません。大手が参入し、各社の体力がある分、いろいろな取り組みが出てきてトータルとして業界のユーザーは増えていくでしょうし、競合が宣伝をしてくれれば、比較として「マガシーク」への来訪者も増えると思います。

――サービス競争は過熱気味だ。

やり過ぎはまずいですが、マーケットが成熟してくればサービス競争も落ち着いてくると見ています。いま、ファッションEC市場は成熟期の少し手前にあり、各社が“のびしろ”をとりに行っています。当社も短期的な利益よりもポジショニングを重視しています。今まで、あまりにも平和な時代が続いていたということでしょう。

――シェア争いは激しくなる中でのサービスのあり方は。

社内では、他社がやっているからではなく、お客様視点で、業界初のサービスやオンリーマガシークの発想が大事だと言っています。とは言っても、消費者にとっては送料無料の方がいいわけで、顧客が喜んでもらえることはなるべくやっていきたいですね。送料無料は当面、続けていきたいと思います。もちろん負担はありますが、増収効果を考えると悪くないサービスです。とくに、単価の安い商品は伸びがまったく違います。ポイント還元率を上げるよりも、送料無料の方がストレートに売り上げに効いてきます。

――売上高100億円を目前に足踏みしている。

新規顧客の獲得で苦戦しています。同じ経費をかけても前の年より効率が落ちてきています。ネットで服を購入するのに慣れた層が選ぶ売り場はけっこう固まってしまっていて、新規客の獲得効率が落ちている中では、ドコモさんの力を借りてEC初心者を開拓していくことが必要になります。

――リアル出店の取り組みも。

O2Oということで、リアルとの接点は持っていきたいし、効果の高い低いはありますが、経験値を積むことは大事で、スタッフもリアルの場で顧客と接することでモチベーションの向上につながっています。期間限定店はイメージの良い場所でできればいいですね。1月に「アウトレットピーク」の期間限定店として新潟市内の商業施設「ラフォーレ原宿・新潟」に出店した際は、その場で会員登録してもらえれば10%オフになる取り組みなどを行って、新規会員の獲得にもつながりました。O2Oの目的のひとつは新規顧客の開拓です。

――次の成長に向けたポイントは。

ドコモさんとの提携はひとつの大きな切り札になってきます。既存の「マガシーク」と「アウトレットピーク」の両サイトについては引き続き、認知度を高め、品ぞろえを充実させます。サービス面でもマガシークならではのものを追求してファンを増やすことが基本戦略になります。

――売上高500億円を目指した計画は修正するのか。

今現在、変更していません。ただ、ドコモさんとの資本提携が進む中で、見直すタイミングは出てくると思います。500億円を諦めるわけではなく、ロードマップや中身が多少変わってくる可能性はあります。

――人材教育での取り組みは。

不定期ですが、「井上塾」のようなものを開いています。全事業部門の課長クラスに当たるチーム長20人程度を2チームに分け、それぞれ約3カ月かけて当社の次期戦略を作らせる取り組みをしています。プレゼンをさせ、ダメだしもしながら、ブラッシュアップしたものをチームメンバーにプレゼンする機会を設けています。目的は、社長が考えた戦略を共有するだけでは“自分事”にならないからです。チーム長が自分で考え、自分の言葉で会社の戦略を語れるようになれば、現場にも浸透しやすくなります。春以降は新規事業を立ち上げるプロジェクトメンバーを募集し、事業計画やPLを作るノウハウも教えながら、プロジェクトマネージャーを育てたいですね。

戦略を共有するだけでは

“自分事”にならない

中国事業は想定通り

――ゾゾさんは中国のサイトを閉鎖したが、御社の中国展開の状況は。

ゾゾさんの撤退で、日系アパレルを扱うのは当社くらいになりました。現地の日系企業からも期待されていて、単価は安いですが、メンズがとくに売れています。中国はレディース先行型のアパレルが多く、メンズは、スーツは多いけれどカジュアルは少なく、値段も高い。そういう意味で、手ごろな価格のメンズアパレルはニーズがあると見ています。

――進出前の想定と比べてどうか。

流入数は想定値を下回っていますが、コンバージョン率は高いです。日本よりもずっと高いという印象ですね。まだ、選択肢が少ないということも関係していると思います。現状、三十数ブランドを扱っていますが、3月くらいからはブランド数を増やしていきたいと思います。

――ゾゾさんは苦戦したが。

「天猫Tモール(旧タオバオ)」で販売したことが失敗の原因ではないでしょうか。あのサイトでは埋もれてしまいます。日本の「楽天市場」に近く、相当の広告費を出さないと、気づいてさえもらえなえないのが実情です。確かに、モール全体のユニークユーザーやページビューは化け物みたいに大きな数字です。ただ、トラフィックがあっても、トランザクションがありません。当社では中国に2人の駐在員を派遣していて、当初から「Tモール」では売れないと判断していました。得られる売り上げに対して、広告費がかかり過ぎるからです。当社が出店する「V+(ヴイプラス)」はページビューが若干想定より少ないものの、全体としては想定範囲内の立ち上がりとなっています。2013年度中には単月黒字化を目指すというスピード感で取り組んでいます。

――黒字化に必要な施策は。

「V+」以外のサイトに売り場を広げることも検討しています。品ぞろえの面では、まずは日系アパレルの商品をしっかり売っていくことです。現状、セール品の販売比率が高いですが、いまは顧客を増やすステージなので、低単価でも購入してもらい、プッシュメールなどを送れるようにすることが重要です。

――プロモーション面は。

中国版ツイッター「ウェイボー」の公式アカウントをもっていますが、基本的には「V+」内の日本館で集客していて、マーケティング費用を抑えています。ただ、中国で出版している日本のファッション誌との連携は今後、行っていきたいです。

――中国で100億円という目標も。

コツコツと売っていった100億円という数字を作るのは難しいですね。今後、1~2年をかけて中国のECでノウハウを得た段階であれば、現地の数十億円規模の衣料品ネット販売企業を買うなどの選択肢もあり得ます。

――中国以外の展開は。

出版社や伊藤忠は東アジアや東南アジアなどで事業を展開していて、話はたくさん来ています。ただ、資金やマンパワーの問題もあり、まずは中国事業の黒字化に全力を注いで、将来的には同じ中華圏の香港や台湾などに横展開できればいいと思っています。

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