Fri, September 22, 2017

ファッション商材の鮮度は2週間【工藤正樹ネオグラフィック代表取締役】

ネオグラフィックは、楽天市場などで人気のギャル服ブランド「GALSTAR(ギャルスター)」を展開する。トレンドのファッシ
ョンアイテムを早く、安く販売するスタイルが若年層から支持されている。最近では、「ギャルスター」に続く新ブランドの育成
にも力を入れている同社。急成長している理由やネットで商品を販売するコツ、次の成長ステージに向けた課題などについて聞い
た。 (聞き手は本誌・神崎郁夫)

サイトは “  生き物”3カ月ごとに刷新する

毎日15商品を投入

――「ギャルスター」は仮想モールでランキングの常連ですが、成功している理由は。
攻め方としては、おしゃれな子をたくさんつかまえるということに力を入れてきました。ブランディングの一環として、商品の着用モデルには雑誌などにも登場するトップモデルを起用しています。そういうモデルが「ギャルスター」の服を着ることで、より憧れが強くなるのだと思います。

当然、服はおしゃれに着こなしたいというのが大前提ですので、いいモデルを使うことで、「自分もこうなりたい」と思ってもらうことが大事です。ファッション誌にも露出していますし、ソーシャルメディアでのくちコミもあって、爆発的に顧客が広がりました。

それと、成長の要因という意味では、2012年の「楽天市場」全店舗の中でモバイル大賞を頂きました。これにはスマートフォンの成長がかなり大きく影響しているとおもいます。当社の売り上げは2011年7月期の19億6000万円から、12年7月期は30億2000万円と大きく伸びました。

フューチャーフォンからスマホに切り替わり、より一層、消費者が通販に触れる機会が増えたことと、企業側としてもサイト上で表現できる範囲が広がったことが売り上げを押し上げたと見ています。

――「楽天市場」が売り上げの中心でしょうか。

売り上げの内訳は、自社通販サイトと「楽天市場」が全体の約4割ずつで、残りの2割がその他のモールでの売り上げです。プロモーションについては、自社サイトでは雑誌媒体への露出やリスティング広告などいろいろなことができますので、草の根活動にはいつも取り組んでいます。

モールでは基本的にモール内広告でしか集客の方法がありませんよね。

――モール内広告の効果が低下しているとも言われていますが。

当社では、ひとつひとつの広告に対してしっかりと効果測定をしていて、回収率に問題のない媒体に出稿しています。広告を打たないと間口を狭めてしまうことになりますので、前向きに考えています。
――仮想モールではヒット商品がすぐに真似される傾向にあるます。ランキングに掲載されるリスクもあります。
モールでは、ランキングにどれだけ掲載されるかが重要だと考えています。それには“先行逃げ切り型”の事業モデルが不可欠です。どこよりも早く、安くトレンドの商品を販売します。競合他社に真似されることも考慮して、ファッション商材の鮮度は2週間くらいだと考えています。真似されても次の新商品を投入できるようにしています。

当社では、新作を毎日平均して15アイテム投入しています。新作の多さは顧客にはすでに浸透していて、「ギャルスターで買えば間違いないよね。早いよね」と感じて頂いているのだと思います。

――アイテム数が多くなると生産工場の確保も大変です。
はじめは本当に苦労しました。当社は中国生産が中心です。多くの型数を作っていますので、協力工場の生産ラインや貿易の安定化には苦労しました。枚数もかなりありますので、工場に資本は入れていませんが、ほぼ専用ラインを持っています。年間を通じて動かしていますので、生産、品質を安定させるまでは大変でした。

いまは、数を売る商品は中国生産がメーンで、柄物などの生地は韓国が早いので、使い分けています。

商品スピード大事に

――仮想モールで商品が埋もれない工夫は。

消費者が商品を手にとれないということをどう攻略するかがEコマースでは重要になります。画像を多用して、いろいろな角度から商品を撮影したり、着用モデルのコメントを入れたりして、できる限りしっかりと商品を伝えて納得して購入してもらわないと、イメージ違いの返品が多くなりますので、非常に重要なことです。

最近では韓国勢などのサイトが画像を多用する見せ方をしていますので、注意して見ています。
――「ギャルスター」のサイトは完成形ではないと。
サイトは本当に“生き物”です。われわれが唯一、顧客との接点が持てる場ですので、四半期ごとにサイトリニューアルを実施しています。そのときの服のトレンドに合わせてサイト全体のテーマカラーを変えますし、フォントひとつにもこだわって、いまは細めが流行っているとか、太めがいいとかも調べた上で修正しています。
当社の顧客はファッションに敏感な子たちです。彼女たちは雑誌を見ていて、雑誌の掲載商品に近いテイストのアイテムを安く買いたいという意識でネットを見ていますので、サイトの見せ方には本当に気をつかいます。
――SPA型ECを展開している。

当社のアイテムは8割以上がオリジナルです。仕入れではトレンドに遅れますし、たくさん売れたときの追加発注が間に合わないこともあります。また、他社でも扱うような商品は価格競争に巻き込まれてしまいます。

よく、ネットのファッション商材は店頭ブランドのコピーだと思われがちですが、当社の商品スピードではまったくの逆です。商品のサンプルが上がった段階ですぐに販売できますので、ブランドさんが「ギャルスター」の商品を毎月大量購入して研究する企業もあるくらいです。

――商品の投入スピードは。

商品の企画からサイトアップまで約10日間というスピードでできます。サンプルだけでも受注できるネットの特性を生かして、予約販売型で在庫リスクを低減しています。売り上げに占める予約販売商品の割合も高いです。

在庫を抱えて売るという、商品の滞留期間が長ければ長いほど、流行に乗り遅れたアイテムになってしまいますので、商品の鮮度には人一倍気をつかっています。いま、これだけネットショップが多い中で、流行遅れの商品は安くしても売れません。3~4年前であれば、値段を下げれば飛ぶように売れましたが、いまはまったく売れないですね。


――トレンドの商品を早く作るための取り組みは。


モデル対談をやったり、スタイリストと定期的に座談会を開いたりして情報収集しています。海外のコレクションからの落とし込みもしています。顧客の意見はそのとき、その瞬間のものですので、少し先のトレンドを知るためにはモデルやスタイリストからの情報が必要です。
――サイト全体ではどれくらいの商品を扱っていますか。
1日15アイテムの新作を投入して、全体では1500アイテムくらいです。ただ、その入れ替え速度は速いです。ロケットペンシルのように、新しいものをさすと、古いものがなくなるという感じです。

海外から人材採用も

――会社の成長に物流面などは対応できていますか。
インフラの整備には力を入れています。衣料品を扱うネット販売企業では珍しいかもしれませんが、商品はSKU単位でラベル管理を徹底しています。そうしないと、リアルタイムでの在庫管理と、作業単位でコストの発生原価を把握する物流ABCに対応できません。出荷件数は月15万件、ピース数ではその2~3倍になりますので、件数をうまくさばけるような棚割りをしていますし、たくさん売れるものを作業棚の近くに置いて、倉庫スタッフの歩数を極力少なくするなど動線管理にも気をつかっています。

――人材の確保はいかがですか。
自分で通販サイトを開設してみたけれどうまくいかず、打ちひしがれたという人も囲い込んでいます。もちろん、未経験者も積極的に採用

しています。ルーチンでできる作業はたくさんありますので、最初はそこから学んでもらい、ポテンシャルのあるスタッフにはどんどん次のステップにチャレンジしてもらいます。事業拡大とともに人材も育てないといけないので、勉強会などもしっかりやっています。

最近では、韓国など海外での人材確保にも乗り出しています。将来的には、画像処理やバナー制作といった業務を海外に移すことも検討しています。ただ、顧客窓口は引き続き日本で対応します。

よくコールセンターを中国におくという話も聞きますが、なかなか日本の道徳観を持った人はいません。カスタマーサポート部門をこの冬から「コンシェルジュデスク」に名称変更しました。消費者の声を吸い上げる部隊に改めました。ECではとくに、顧客サポート業務が流れ作業になりがちですが、過去の問い合わせ内容を蓄積し、購入商品の履歴などとも紐づけて管理できる体制を構築しています。服の提案もできるように社内でトレンドセミナーも行います。

“ LA発” の  切り口で価格競争を回避したい

新ブランドで店舗展開

――次の成長に向けては。
新ブランドを育成していきます。というのも、「ギャルスター」の認知度が高まったことで、他の人と同じ服を着たくないという顧客も出てきていますので、よりおしゃれな子に買い物を楽しんでもらえる仕組みが今後は必要だと考えました。

既存顧客が年齢とともに収入が増えることも考慮して、プライズゾーンを2~3ランク上に設定しました。ギャルからラグジュアリー感のあるブランドとして「GROWZE(グローゼ)」を開発しました。

――新ブランドはどう攻めますか。
通常の切り口で攻めると二番煎じ、三番煎じになってブランディングが難しいということで、海外に着目しました。2012年4月に、「ジャパニーズカンパニーが攻めてくる」という切り口でアメリカのロサンゼルスに「グローゼ」の実店舗を構えて新事業をスタートしました。

アジアよりも、ファッションに敏感で、コレクションを含めた発信地になっているアメリカの方が攻めやすいと判断しました。新ブランドのリアル店舗では極力、トレンドの商品をミニマムで展開します。2週間で店の中がガラッと変わる商品スピードです。
――日本展開については。
2012年10月に、大阪の阪急うめだ本店に「グローゼ」の日本1号店を開設しました。米国展開とは逆に「LA発のブランド」というブランディングを仕掛けることで激戦区のレディースアパレルでも価格競争に陥らないビジネスモデルを目指します。

また、2月28日にルミネエスト新宿店、3月8日には渋谷109店をオープンしました。国内での認知度アップを図りますが、足もとを固めながら大切に育てます。

――通販企業が実店舗で失敗したケースもあります。
会社の収益については「ギャルスター」で取れていますので、「グローゼ」は投資に近いです。通常、実店舗を展開している企業が「通販も面白そう」となるのがセオリーですが、当社の場合は逆で、すでに数百万件の個人情報を持っていて、拡販については大丈夫ということでリアルをやろうと決心しました。

もちろん、実店舗はネットに比べて営業時間、立地も含めて効率が悪いですので、「グローゼ」の価格帯であればできるというものあります。

取材後メモ

工藤社長は主力ブランド「ギャルスター」の事業モデルを“先行逃げ切り型”と表現します。

SPA型のネット販売企業として、商品がたとえ競合に真似されても、すぐに次のヒット商品を投入するというスピードが急成長の原動力となっているようです。昨年、スタートした新ブランド「グローゼ」では、ブランディングの切り口が他社の二番煎じとなることを嫌い、海外の実店舗から攻めるという思い切った戦略をとりました。
ネット販売企業が実店舗に足を突っ込み過ぎて失敗した例はよく聞きますが、同社では主力ブランドで得た利益を次の成長領域に“投資”するイメージと説明します。「足もとを固めながら、ゆっくり育てたい」と工藤社長。新たなチャレンジに挑む同社にさらに注目が集まりそうです。

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