Fri, September 22, 2017

モール出店者の意見集積し、改善図る 【北村吉弘リクルートライフスタイル社長】

“最後発の仮想モール”を自認する「ポンパレモール」の開設をはじめ、ファッション通販サイト「ERUCA」の全面リニューアルなど、今年に入ってからネット販売事業で大幅なテコ入れを進めているリクルートライフスタイル。社内での通販事業の位置づけの変化や今後の目指す方向性などについて、4月1日付けで就任した北村吉弘新社長に詳しい話を聞いた。(聞き手は本誌・鹿野利幸、本紙・山﨑晋)

「リクルートカード」発行で

モールへの集客効果を期待

――近年、通販事業を強化している印象を受けますが、社内での同事業の位置付けに変化はありますか。

以前から通販形態のビジネスは行っていましたし、何か位置付けが変わったとは捉えていません。昨年10月の分社化で「リクルートライフスタイル」という会社になったタイミングで、各事業会社の取り組みとして偶然ECに関するサービスが多く出てきたという部分はあります。特別に強化していているとか軽視しているとか、そういうことはまったくありません。

――サービスのリリースがたまたま分社化のタイミングと一致したということでしょうか。

むしろ、事業会社化したことによって、今まで分散してやっていた事業を束ねられるようになり、統合効果が出ています。例えば新しいサービスを開発する際のスピードであったり、立ち上げ後の集客の方法についても当社では会員を抱えているのでその中で内部集客ができるようになってスムーズにできるようになったことなどがあります。今まで事業部ごとに壁になっていたものが取り払われて、計画されていたものが立て続けにリリースされているのが実態です。

――以前から検討していたサービスが偶然同時期に出ているということですね。

はい。当然ながら会員に対してどんなユーザー体験を提供できるのかという中で、以前からテーマとして持っていました。元々構想の中にあったものを実現するタイミングが、ある程度スピード感を持って判断できる環境(分社化後)の中で実現しています。

――ポンパレモールをはじめ、新たに開始した事業に対してのユーザーの印象をどう見ていますか。

市場からの期待が大きいということを日に日に感じています。参画して頂いている企業様に私も直接話を伺う機会もありますが、(リクルートに)元々の会員の基盤があるが故に期待が高く持たれている印象です。

――期待が高いために、色々な意見も出ているのでは。

叱咤激励をたくさん頂いています。ECという分野で当社は最後発に当たる訳ですが、それでもこれだけの期待をいただけるのは嬉しい思いがあります。一方でその声に応えるために、現場には顧客の声をちゃんと聞いてその中でユーザーと顧客がきちんとwinwinの関係になれるようにするよう言っています。ただ単に「ないから作ります」というのではなく、可能な限りプラスアルファの価値を提供できる提案を入れながらECサービスの磨きこみをするように伝えています。

――ポンパレモール出店者の意見はどのように集めていますか。

出店者の声は全部レポーティングして、分類分けしています。どのような希望があってなぜその意見が出ているのかなどを全部集積して、それを私も含めてすべて見る体制を取っています。先ほど申し上げた通り最後発なので、こういった分析を見ながらやっていかないと、最短距離でいいサービスになっていかないと思います。

(レポートには)本当に凄く細かい所まで書いてもらっています。中には出店者から提案を頂いて、実装してみたこともあります。まだ開始したばかりということもあり、可能な限り出店者と一緒になって良いサービスを作っていければと思います。

――今後、ポンパレモールで検討されている施策については

5月30日から始まる「リクルートカード」(会員がリクルートの各サービスに利用できるクレジットカード)がその1つです。これは集客に生きてくる部分になるかと思います。ポイントを使う・貯める目的のカードで、ポンパレモール単体の利用でもポイント付与率が3%となっています。このカードとの組み合わせで利便性も高まり、ポンパレモールを利用する可能性が高くなっていくと考えています。

専門特化を新たな切り口に

――3月にファッション通販サイト「ERUCA」を下着専門に刷新し、4月には家具専門の情報サイト「タブルーム」を立ち上げました。商材ごとに特化したサイトを次々と開設している狙いとは。

背景にあるのは、当社が今後ウェブの中で販売や情報提供するやり方の学習としてのひとつのきっかけにしていることです。元々当社は情報誌というビジネスの中で大量の情報を集めて並べるということをやってきたがゆえに、ウェブ事業を行う際にも同様に大量の情報を満遍なく集めるという手法をやりがちでした。ところが、社内の若手エンジニアから「本当にそれが好きな人だけ見てくれればいいという限定的なものを作って、そこでポジションを築いてからビジネスに変えていくということが必要なのではないか」という指摘がありました。そこでできたのが「タブルーム」であったりするのです。

――「タブルーム」はどのようなサイトですか。

あれは本当に“家具オタク”が作ったようなサイトになっていますね。これは、1つのキーワードとして一部の熱狂的なファンをまずちゃんとつくるということもサービスの立ち上げ作業のバリエーションとしてあっていいのではないかと思います。「狭いところで深くやってみる」というやり方が分かっただけでも非常に成果があったのではないでしょうか。

――「ERUCA」の刷新も同様の理由で行ったのですか。

ファッションといえば何かと広くしがちになることがありますが、あえて(下着の)専門分野に特化して深くすることで一部熱狂的なファンがつきやすくなるという効果があります。このやり方を、「ポンパレモール」や「じゃらんnet」など幅広く行っているサービスと並行して使うことで、会員のロイヤリティーを高める施策として面白いものになると考えています。

――今後、また別の商材でも専門サイトを作る予定は。

可能性としてはあるかもしれません。実はタブルームを開設した時に一番反響があったのは社内のエンジニアたちでした。「自分のここだけは誰よりも詳しくてぜひやりたい」という声が非常にあったので、いくつかそういうものを作ってみてもいいのかもしれません。会員からも「こういう深いものをつくれないか」という要望もありました。「ERUCA」の下着特化と「タブルーム」の立ち上がり方は、元々が少し違う話かもしれませんが、狭く深くするという意味ではひとつの手段として見ています。

「ネットビジネスに完成型はない」

スマホとデータ活用の進化に注目

「人と地域」をキーワードに

――4月1日に社長に就任されましたが、改めて抱負は。

当社では「日常消費領域」を会社の領域として定義しています。実はこれが非常に広い領域でして、どのように定義をしてどういったビジネスの作り方をしていくかということは今まで以上にしっかり考えていかなくてはいけないポイントだと考えています。

――「日常消費領域」と聞くと非常に競争相手が多い印象を受けますが、その中で差別化を図るポイントとは。

とらえ方によっては(競合が)非常に多いといえるかもしれません。「日常消費領域」というドメインの中で当社が1つのキーワードとして持っているのが「人と地域」ということです。個人的には自分たちのような会社形態は非常に珍しいと思っています。旭川から沖縄まで事業所を持っていて、その地域でローカルでホットペッパーを通じたビジネスも行い、でもウェブでもビジネスをやっている。自分では「マルチコンポーネント」と言っていますが、色々なパーツが組み合わさったようなプラットフォーマーみたいなビジネスをやっているところはあまり他ではないと思います。

私はその特徴を生かしていくことが非常に大事だと考えています。先ほどドメインを「日常消費領域」と申しましたが、よくよく振り返ってみるとそれこそ当社の人間も旭川から沖縄まで住んでいて、その地で日常消費をしています。当社が主に扱っているのはサービスですが、基本的にその地で生まれその地で消費されるものです。いかに地域で地元の人がサービスを享受して、そこにお金を落とし産業が活性化することで雇用が生まれ、そこで余裕ができて消費に回していくというこの大きなサイクルをちゃんとイメージしながら事業展開をしていきたいと思っています。

サービスが大都市圏に集まりがちになってしまうのも自然の流れですが、我々の旭川から沖縄までの事業所という特徴を生かして、競争とは別に事業会社としての価値をきちんと提供することをしていきたいです。

――そこが通販にどういう形で反映されるかということは興味深いところですね。

私は「ネットは人々の機会を最大化する方向に動いているのか」という疑問を持っています。社内でひとつの考え方のきっかけになる事例としてよくする話がありますが、ある地方の会社で料理の「つま」として使われるもみじの葉をおばあさん(従業員)がネットで市場の相場を見ながら採りに行くという話です。これはネットで情報をリアルタイムで取得して何がお金になるのかを把握し、そこに人が動くという話なのですが、全国から自治体を含めたくさんの人がこの取り組みを見学したそうです。しかし、実際に真似したという地域はどこにもありません。それは、この前提条件としておばあさんがパソコンを使えたからできたことであってほかの地域でこれをやろうと思っても壁が存在してしまうのです。

このような現実的なギャップに対していかにしてネットの世界を開放していくのかということに非常に興味があります。まだネットを使っていない人に対して開放したその先に、何か新しい日常消費のきっかけや我々のビジネスのきっかけができればいいなと思います。

――現在の取り組みの中で優先順位が最も高いものは何でしょうか。

当社の持っている会員に対するロイヤリティーをどうやって高めていくかということに尽きます。単純にインセンティブという意味ではなく、その人たちに提供できる新しいサービスということです。もちろんポンパレモールもその一つです。

――既存のネットでのサービスなどは完成形に近いと考えていますか。

ネットのビジネスで完成系に近づくものはないと思います。デバイスひとつとってもPCからスマホに変わり、通信の速度も変わっている中で、我々が提供できるサービスのバリエーションも変化して増えていきます。どこまでいってもゴールにたどり着いたり、越えたりすることはおそらくないのかなとは思います。

――これから先、ECの世界で起きる変化としてはどのようなものを想定していますか。

1つ目はスマホの今後の進化には注目しています。他社も同じでしょうが、ある程度想定していながら動くようにしています。2つめはデータの活用の仕方です。例えば、ビックデータの使われ方が今までは単なるモニタリングだったりしたものが、実際に仕組みを動かすアルゴリズムというものに変換されてどんどんウェブの世界に入ってくるようになるとよりパーソナライゼーションが進んだりするかもしれません。また、今まで人のアイデアから生まれていた事業が、もしかしたらデータ側にある程度答えがあってそこに近づくためのサービスを作るという考え方に変わるかもしれません。

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