Thu, November 23, 2017

個人バイヤーの力で〝旬の売り場提供〟【須田将啓エニグモ代表取締役】

世界中にいる個人バイヤーが仕入れた商品を会員に販売するCtoC型のファッション仮想モール「バイマ」を運営するエニグモは、2012年7月に設立当初からの目標であった株式上場を果たした。着々と事業拡大を続ける同社だが、設立以来約10年に渡り共同代表を務めていた田中禎人共同最高経営責任者が13年4月末の株主総会をもって退任。今後はワントップ体制として経営の舵取りを担うことになる須田将啓代表に、“新生エニグモ”の運営方針などについて聞いた。(聞き手は本誌・山﨑晋)

株式上場で知名度向上、M&Aなどの機会増加も

円安基調もバイマへの影響は軽微

――国内景気の回復が徐々にあらわれる中、直近のアパレルネット販売市場の動きをどう見ていますか。

非常に活況だと思います。昔はECといえば本や家電が中心でしたが今はファッションにも広がり、大手仮想モールでも力を入れているところが増えています。「アベノミクス」で徐々に資産効果も出ていて、富裕層を中心に購入機会が増えているため、今年も順調に推移すると見ています。

購入単価については全体で見るとまだ変化は少ないですが、企業の業績が反映されやすい6月のボーナス時期頃から上昇の動きが見られるのではないでしょうか。

――円高時には海外の商品を国内で安く買えるメリットがありましたが、現在の円安による悪影響は。

急激に(円安に)変化することは良くないとは思いますが、今のところ大きな影響は受けていません。むしろ円安で国内の景気が上向き、消費者の財布の紐が緩くなっていくことがプラスに働くと考えています。

――昨年7月に東証マザーズに上場されましたが、ここまでは当初の予定通りのスケジュールでしょうか。

上場は会社設立当初からの目標として持っていたものですが、予定としてはかなり遅くなってしまいました。途中でバイマとは別に行っていた「広告サービス事業」が好調だったことから、一時、ここを軸に上場するという話にもなりました。その時に人や拠点を積極的に増やしましたが、期待したほどの数字が伸ばせずその後もリーマンショックによる企業の広告引き上げなどが発生してうまく戦略を描けなくなってしまったのです。そこから、またバイマに専念するように仕切り直したのでこの時期まで上場が延びてしまいました。

――では改めて上場の目的や狙いについて教えてください。

会社を大きくするために必要なステップであると考えていました。目的としてはいくつかありますが、当社の場合は信頼や知名度が直接売り上げに影響を与えるビジネスなので、それを上げていく狙いがあります。もう1つは、今後少し上のステージでビジネスを展開したいとも考えているので、上場することで資金調達の手段やM&Aの機会を増やし、これまでのオーガニックな要素以外での成長を図るということです。

会員・バイヤー数は順調に推移

――現在の顧客層について教えてください。

現在の会員数は約120万人程度で順調に推移しています。利用者の約半数近くがスマホからの流入で、その割合も増えています。全体の顧客平均年齢は30代ですが、スマホ利用者は20代の人が中心です。

――売れ筋商品や今後強化していくカテゴリーなどはありますか。

時期的にはワンピースがよく売れています。米国のセレクトショップ商品などが好調なので、今後もそこを増やしていきたいです。また、今は男性顧客の比率が1割程度と低いので、それを3割程度まで引き上げることを考えています。女性よりも購入単価が高いことは間違いないので、男性向けカテゴリーを充実させていきます

そのほかには、昨年新設したスポーツカテゴリーで海外で浸透している「ヨガウェア」などが好調だったので引き続き拡充していきたいです。

――リピーター獲得に向けた取り組みはありますか。

リピートしてもらうために気をつけているのはバイヤーと顧客との関係性です。顧客は良いバイヤーに出会うとセンスも合うし、取引が気持ちよく進みます。当社が良いバイヤーとのマッチングを高めていくことが、結果的にはリピート率につながるのだと思います。

――良いバイヤーを増やしていくために行っていることは。

現在、約4万人のバイヤーがいますが、この数は毎年右肩上がりで伸びています。バイヤーに対しては専門のスタッフが常に現地の情報や売り上げ、流行の傾向などについてヒアリングしています。また、バイヤーの取引の状況が目に見えて評価できるシステムもあります。洋服のサイズ感や色の印象など購入希望者が事前に投げた質問に対して丁寧に答えることができるバイヤーなどは評価が上がっています。逆に問題があるバイヤーに対しては改善指導などを行っています。

――バイヤー個人の資質によるデメリットなどはありますか。

最終的に配送するのはバイヤー個人の手になるので、クオリティーにバラつきが出てしまうということです。そこを平準化していくために評価システムを整えたり我々でできるサポートはどんどん用意するなど、CtoCながらもサービスのクオリティーを保てるようなオペレーションを組んで対応しています。

田中共同代表の辞任も「卒業」ムードで迎える

企業側の意思によらない商品選定

――CtoC型モールのメリットはどこにあると考えていますか。

一番は品揃えが豊富であることです。アパレルは世界中で多品種小ロットの商品がシーズンごとにどんどん出るので、それを1企業ですべて網羅するのは非常に難しいことです。我々はそこにソーシャルパワーを利用することでカバーすることができています。

また、商品選定を個人に委ねているところも大きいと思います。企業側が「利益が高いから」「在庫が余ったから」ということで推している商品などは集まりません。ビジネス的な観点にならず、純粋に個人の目線で良いと思ったものがラインアップに上がるので非常にリアルな“旬の売り場”になっています。

――現在はほぼすべてのバイヤーが個人登録ですが、今後ブランドなど企業単位での出店予定はありますか。

個人でやりながら税金などの面で法人登録したいというニーズには対応していますが、こちらから大手のブランドなどに働きかけて出店を頼むことは望んでいません。あくまでもコンセプトは個人のバイヤーを立てるCtoCのモールなので、そこは揺るがないようにしたいです。

――以前は日本未上陸ブランドを購入できることもメリットでしたが、近年はファストファッションブランドの日本出店が進み、それが薄れている部分はありますか。

幅広くブランドを取りそろえているので、どこかの出店が決まったからといってバイマの売り上げが大きく下がることはありません。むしろ、ブランドの進出が決まってPRが進み日本での知名度が上がることで、逆にバイマの中でも同じブランドが売れ出すことがあります。出店場所と離れた地方の顧客もいますし、価格で見るとバイマの方が安いケースや日本の店舗にない商品が買える場合もあるので、逆に利用者は増えるのではないでしょうか。

――ラインアップでバイマに優位性があるということですか。

実店舗のビジネスはスペースに限りがあり、大型サイズなどを在庫として持つのは売れ残りのリスクが生じます。バイマでは欧州規格の大型サイズなども含めて網羅しているのでそういったニーズにも応えられます。

――ブランドが自社でネット販売を開始した場合、影響はありますか。

なくはないと言えますが、とにかく大事なのは品ぞろえだと思います。様々なサイトを回って見て比較検討するよりも、ブランドがすべてそろっている使い慣れた1つのサイトで買いたいというのが消費者心理でしょう。バイマでは1バイヤーがパーソナルショッパーでもありセレクトショップのような機能を果たしてくれるので、自分に合ったバイヤー何人かとつながっていくと世界中から好みの商品が集まってきます。これこそがバイマの本当の価値だと捉えているので、ブランドが個別に通販をできるようになったとしてもそこまでの影響はないと考えています。

米国での展開も視野に

――4月末の田中代表の退任で、今後の組織運営や事業方針での変化はありますか。

1人になることでまず間違いなく言えるのは、マネジメントチームがよりコンパクトになって権限委譲が進み意思決定のスピードが上がっていくということです。

コインの裏表ではないですが、これまでの2人代表制の良かったところは同じ目標に向ってまったく違う目線から物事を捉えられていたことです。物事の判断が稚拙にならず建設的なディスカッションの上で厚みのある答えが出せていました。これからは、より現場の意見や知恵を活用して判断しようと思っています。すでに4月1日付で現場のリーダー職だった人間2人を部長に昇格させて経営会議にも参加させています。現場で活躍している人間を上のレイヤーに引き上げて意思決定に参加させることで、より実態に近い経営判断ができるようにしていきます。

――須田代表ご自身は、田中代表が会社を去ることについてどう思われていますか。

自分もすべてを分かっているわけではないのですが、正直に言って本当にショックで寂しいです。ただ、以前から米国出張などが増えていて向こうに行きたいという要望は何となく社内でも知られていたところではあります。田中も時間を作って周りの社員一人ひとりに説明していたので、社内ではそこまでの大きな動揺はなく「卒業」ムードで迎えることができました。

――今後、須田代表とエニグモとの関わりは。

一応今後も顧問としては残る形なので、昨年12月に資本・業務提携した米国でソーシャル・ファッションサイトを手がける「Image Network(イメージ・ネットワーク)社」との事業が立ち上がるまでは、きちんと見てもらうことになります。もちろん株主でもあるので、引き続き関係は残るでしょう。

――イメージ・ネットワーク社との海外事業展開はどのような内容を想定していますか。

どちらかといえばトライアルの意味合いが強い内容です。いきなり米国でゼロから立ち上げようとすると、時間もお金もかかりますし成功確率も非常に低くなります。そのため、まずは米国でユーザーがちゃんとついているサイトにバイマの機能を入れて、どのようなニーズがあってどのような国のものが売れるのかといったところを把握します。

その上で、発展する可能性があれば提携をより濃いものにしていきますし、読み間違えていたのであればまた別の方法を模索するということになるでしょう。この部分については今のところ、良くも悪くも業績への影響は軽微になると見ています。

――今後の業績の目標については。

3年後に営業利益30億円、バイマ商品取扱高目安では500億円、5年後には同50億円、同800億円を目指しています(13年1月期は同5億9700万円、同128億4300万円)。今後も着実に事業を拡大させていきたいです。

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