Thu, November 23, 2017

ECのあり方や形態を変える【光本勇介 ブラケット 代表取締役兼CEO】

ネットベンチャーのブラケットが8月15日、「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイの完全子会社となった。ブラケットのサービス「ストアーズ・ドット・ジェーピー」は誰でも簡単に自分の通販サイトを開設することができるというもの。昨年9月にリリースを開始。立ち上がったサイト数はアパレル関連を中心にすでに4万を数える。ゾゾ傘下となったことで、さらなる規模拡大を目指していく。光本勇介氏に今後の戦略などについて聞いた(聞き手は本誌・比木暁)

1人1個オンラインストアを

――スタートトゥデイの完全子会社となりましたが、その狙いについて教えてください。

簡単に言うと、“思いっきりサービスをジャンプさせたい”というのが前提としてあります。当社はいろいろなサービスをやっていますが、「ストアーズ・ドット・ジェーピー」はありがたいことに一番順調に推移しています。スタートしてから10カ月程度が経ちますが、(開設された)ストアの数はおよそ4万店に到達しています。4万店をどう見るかですが、楽天さんの楽天市場でさえ4万店です。楽天さんと同じくらいのストアの数を、楽天さんは10年とか15年ビジネスされてらっしゃいますが、当社は10カ月程度で到達しました。ただ、1店舗ずつの規模はもちろん小さいですし、今後はこのサービスに大きな資本を持った競合も出てくるでしょう。たぶん今年いっぱいで、この“簡単EC市場”という新しい市場の骨格はでき上がるだろうと思っています。その時に誰がどれだけのシェアを持てているかというのが一番重要になってくるという気がしています。せっかくまだ競合も少ないこのタイミングだからこそ、一気にアクセルを踏みたいと思っていました。

ゾゾさんとであれば一緒にジャンプできる

──ゾゾと組むことでアクセルを踏めると?

私たちが今持っているストアの約70%は、もちろんアクセサリーや小物を含めてですが、アパレルというカテゴリーに所属するストアです。ゾゾタウンさんは何しろ売るパワーを持っておられますし、500万以上の会員データベースを持ってらっしゃいます。私たちが一番強化したい「スケールしたい・ストアの数を増やしたい」という軸と、ストアの数と商品の数がどんどん増えている中で「売る導線を作りたい」という2つの軸を、ゾゾさんとであれば解決できるのではないかと、一緒にジャンプすることができるのではないかという観点でご一緒させていただくことになりました。

──そもそも、どちらから子会社化の話があったんですか?

もともと売却しようという意向で動いていたわけではもちろんなくて、私たちは資金調達をしようと思っていました。そこで、資金調達をするのであれば、事業会社さんからも出資していただいて深く一緒にやらせていただくのがいいんじゃないかと思っている中で、ぜひ資本関係を持たせていただけないかなと思っていたのがスタートトゥデイさんでした。もともとは業務提携の話をさせていただいていました。これは子会社化といったこととはまったく別で。普通の業務提携のお話をさせていただく打ち合わせの最後に、「ちなみに今、資金調達しようと思っていて、(資金を)入れていただけたらもう少し深い関係でやらせていただけると思うんですがどうですか?」という話からポンポンポンと進んでいった流れです。

──ゾゾ傘下となることで生じるシナジーとしては、具体的にどういったことが想定されますか?

1つは、ストアの数を私たちはどんどん増やしていきたいので、彼らの持っている会員、すごく極端なことを言えば、1会員様に1オンラインストアを持っていただくこともできるかもしれません。そうすると、極端に言えば、一気に500万ストアができる可能性があります。また、アパレルのカテゴリーで言えば、日本に16万店くらいアパレルの小売店舗がありますが、この小売店舗がすべてオンラインストアを持てているかというと、持ててないところのほうが圧倒的に多いと思います。街の古着屋さんとか、地方のセレクトショップですとか。そういったお店にも私たちは1つずつオンラインストアを持てるような開拓をしていきたい。アパレルの業界を攻めるのであれば、ゾゾタウンさんは圧倒的に認知が高いので、ゾゾさんと一緒に展開するのは一番強力でスピードが出せます。

──1店舗に1つのECサイトというイメージですね。

あとは、日本の1億2000万人の方々がクローゼットに眠らせている古着はボリュームで言うと大量にあると思います。そこで例えば、1人1個オンラインストアを持ちましょうというのが私たちの究極のゴールなわけですが、1人1個、古着屋さんをやりましょうという提案もできなくないわけです。今、ゾゾタウンでは「ゾゾユーズド」という古着の買い取りサービスをやっています。あれは買い取りです。私たちの場合は、1人1個オンラインストを持っていただくという行為は違う言い方をすると、全国の個人のクローゼットの中をデータベース化することができ、可視化することができます。そうすると誰がどういった洋服をもっているのか、誰の家のクローゼットにどういった洋服を持っているのかということが私たちのデータベースの中に蓄積されていきます。それだけでもいろいろな活用ができますし、何せアパレルのアイテムであればゾゾさんのパワーを使ってそれを売りさばくこともできます。そういう意味で、新しいビジネス機会も作れると思っています。

露出する導線が重要なキーに

──ゾゾの販売力を生かすということで言うと、ゾゾへの出店がしやすくなるということですね。

そうです。結局、今、4万店を開いていますが、個々のストアのオーナーさんが自分で販売しています。ECの素人の方が多いので、マーケティングできる規模や内容がどうしても限られてしまいます。「ストアーズ」でストアを開設したら売れるということが言えるかどうかが、ECである以上はやはり大きいわけです。売れる導線を持てているかどうかというのは今後競合と戦っていく上でも圧倒的な差別化のポイントになります。ゾゾさんは売るのが得意ですので、その意味でも一緒に組ませていただくことで私たちが補いたい販売の部分を強化することができます。

──売れる導線を持てているのかが競合と戦う上で差別化ポイントになるということですが、その「導線」というのは非常にわかりやすく言うと、ゾゾにいかに出店できるかという意味でしょうか?

出店であったり、そのほかにも私たちは4万ストアに紐づく30万点ぐらいの売れる商品のデータベースを持っています。この商品データベースに、光が当たっていないことのほうが圧倒的に多いんです。ショッピングモールはその商品に光を当てることができます。集客力を持っていますので、ユーザーがその商品に触れる機会を作るのが得意です。それをやるかというのは別にしてすごく単純に言えば、私たちの商品を露出する機会をゾゾ内に作れば売れる可能性が高まります。

──出店という形にこだわらなくても、ゾゾという枠をうまく活用して光を当てればいいわけですね。

そうですね。売れれば私たちのビジネスにつなげることができる仕組みが作れるでしょうし、ストアのオーナーさんもハッピーで継続的に私たちのサービスを使っていただけるでしょうし、売れるのであれば競合ではなくて「ストアーズ」で店を開く方も増えるでしょう。やっぱり売る導線、露出する導線というのが1つ重要なキーになるのではないかと思っています。

──ゾゾ傘下になって、まず手を付けていこうと決めていることはありますか?

常にいろんなこと仕掛けていますので、「今回を機に」ということはありません。ただ、私たちが何をできるようになったかと言うと、ゾゾさんの持っている強みや経営資源にアクセスができるようになりましたので、これを活用しない手はない。ですから、どれだけ効率的に早いスピードで、1つずつ彼らの持っている強みや経営資源を使い倒していけるかというのを、計画を立てて実現に向けて動いています。ただ、それについて優先順位をつけて動きながら、ゾゾさんとは関係のない仕掛けの展開というのももちろん準備しています。

──ネット印刷のラクスルと組んだストアカードの無料作成や、エキサイトと行っているポータルサイトとの連携など以前からの提携先との関係は続くのでしょうか?

はい、そのイメージです。逆にゾゾさんと私たちが組むことで、既存のパートナー会社さんに提供できるメリットのほうが多いんじゃないかと思います。私たちの規模感が大きくなるほどお戻しできるメリットは増えますので。

“スケール”という点に最大の力を注いでいく

注力するサービスを絞って展開

──レディースシューズのカスタマイズサービス「シューズ・オブ・プレイ」も継続して展開していくのでしょうか?

「ストアーズ」と「シューズ・オブ・プレイ」は私たちの主力のサービスとして展開してきましたので、引き続きそれは多分変わらないです。ただ、正直なところ私たちもこの2つのサービスにほとんどのリソースを使ってきましたので、他のサービスについてどう身を振るかというのは検討して、早々にまたアナウンスしていきたいです。

──モデルのマッチングサービス「モデルタウン」やワンピースのカスタマイズEC「プライベートローブ」などユニークなサービスもやって来られました。

まあ、選択と集中と言いますか。どれもこれもやってしまうと、どれも中途半端になってしまうので、今は注力するサービスを絞って展開していくという感じです。

──今後「ストアーズ」だけにフォーカスするのでしょうか、あるいはまた新しいことも始められるのでしょうか?

まったく別物の新しいサービスを始めるということは多分ないと思います。今やっているサービスを大きくできるという可能性を感じているので、これを自分たちの手でどこまで大きくしていくかということに注力していきます。

──サービスを大きくするために、従業員も増やしていくのですか?

現在、従業員は10数人程度ですが、とりあえずここ1、2カ月くらいで20人程度にする予定です。

──人材としてはどのあたりを強化していくのでしょうか?

開発です。エンジニアですね。やっぱりITサービスですのでエンジニアは必要です。とりあえず20人規模のチームで頑張ってみて、後はサービスの成長に伴いながら、強化していくというイメージになります。

──スタートトゥデイの前澤社長がブラケットの取締役に就きました。先方の気合の入れ具合も感じられますが、プレッシャーは感じていますか?

それは特には感じてはいません。もうやらなければいけないことは明確ですので、それを粛々とやっていくという感じです。前澤さんが役員に入っていただくということは、熱い思いでいただけるということで嬉しいです。一緒にタッグを組ませていただけるので、それだけ深く連携をとりながら展開していければいいなと思います。と言っても「ストアーズ」としては“どれだけスケールしていくか”という点に最大の力を注いでいきます。究極的には新しい市場を作るということや、ECのあり方や形態を変えるということ、自分たちでどれだけそれが変えられるのかというチャレンジをしていく心構えでおります。

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