キュレーションECの可能性は?”おすすめ型ネット販売”の現状とこれから

  • 2013年10月25日
  • 2020年8月26日
  • 特集1

専門的な知識を持ち、博物館や美術館などで収集資料の研究や展示物の選別などを行う専門職を意味する「キュレーター」。転じて、様々な分野の専門家が独自の切り口でセレクト・おすすめする商品を顧客に提案する形でネット販売を行う「キュレーションEC」が注目されている。価格や商品以外の「プロのセンス」という新たな訴求で消費者の購買意欲を刺激できる販売手法と見られ、様々なネット販売実施企業が続々と開始し始めている。「キュレーションEC」をすでに展開中の各社の現状を踏まえ、この注目される新手法の可能性を探る。

事例②油忠

ネット販売にも”接客”が不可欠

町の酒屋の接客力を大事に日本酒を定期販売する油忠の「サケライフ」

全国から厳選した日本酒を毎月、定額で届けるサービス「SAKELIFE(サケライフ)」を2012年4月にスタートした老舗酒店の油忠(あぶちゅう)。ネット上には日本酒の情報が極めて少なく、“知る人ぞ知るお酒”がたくさん存在するため、町の酒屋が薦めるという販売手法がマッチするという。

同社によると、成長著しいネット販売の次のフェーズとして、これまでの“いつでも、どこでも買える”から、“どこで、誰から買うのか”が問われており、その答えとしてキュレーションECが生まれ、相性のいい売り方のひとつが定期購入型ECだという。

同社では、毎月四合瓶1本を届ける「ほろ酔い」コース(月額税込3150円)、一升瓶1本に四合瓶2本を届ける「ぐい呑み」コース(同5250円)を展開して約1年半が経過。当初計画に対し、顧客獲得コストが想定よりも高くなっているという。美味しさと価格だけでなく、定期化するための説得材料が必要なためで、定期購入の良さを伝えるためのランディングページの作成など、より“プッシュ型”のサイトを構築するための費用がかかった。

一方、顧客データを洗い直したところ、顧客の平均継続率は92%と非常に高かった。同社では、顧客のパーソナルデータに即して商品を選んだり、定期の初月をどの季節に迎えるかで届ける日本酒を変えるなど、ECであっても「是非、この日本酒を飲んでください!」と目の前で薦めているイメージを大事にしているという。

昨今は、“キュレーション” という言葉が独り歩きしているが、生駒龍史SAKELIFE事業代表は「どんなに権威があって、世界中のお酒を知っていても、顧客のことを知らなければ一人ひとりに好みのお酒を届けることはできない」とし、“接客の概念”がキュレーションに加わらないと顧客エンゲージメントの高さは維持できないとする。

「実店舗からECに売り場が移る中、接客だけが取り残されてしまった」と同氏。「SAKELIFE」は町の酒屋の接客をネット上で再現することを重視。毎月、日本酒を届けるだけでなく、メルマガやSNSを通じて二日酔いしない飲み方や、おいしく飲める料理なども提案しており、週1回配信しているメルマガへの返信が多いのも顧客との結びつきが深いことを示していると言えそうだ。

また、解約理由に「毎月1本は飲みきれない」という声が多かったことを受け、半年以上継続している顧客に対しては、例えば「ほろ酔い」コースの場合、日本酒を届けるのは隔月とし、その分、2カ月分の価格でハイグレードなお酒を1本届けるという取り組みも始めた。課金は毎月実施しつつ、顧客のニーズにも応えたわけだ。

現在、定期購入客は約450人で達成率は計画の70%。成約率の改善が課題という。従来はオフラインイベントの実施などマンパワーに頼って集客してきたが、数カ月前からリスティングやアフィリエイトにも力を入れ始め、結果が出始めているようで、来年は2000人の定期会員獲得を目指す。

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