Fri, September 22, 2017

ケンコーコム、処方せん薬受の受け取りに風穴── IT活用した新サービスで利便性を向上

ケンコーコム(KC)は2月5日から、ITを活用した会員制の処方せん薬受け取り支援サービス「ヨヤクスリ」の展開を始めた。患者がスマートフォンやデジタルカメラで撮影した処方せん画像を撮影し、専用サイトから受取を希望する薬局を指定して画像を送ると、当該薬局に画像をFAXで送信。患者は処方せんの原本と引き換えに調剤された薬を受け取れる仕組みで、患者および薬局側に無料でサービスを提供する。

FAXを活用した処方せん薬の受け取りは一般的に行われているが、患者側はFAXを使える環境が必要となるなど制約が多かった。これに対し今回の「ヨヤクスリ」では、広く普及しているスマホやPCを使い、患者が受け取りに都合の良い薬局を事前に指定できるサービスを実現。これにより薬局での待ち時間短縮など利便性の向上を図ったのが特徴だ。

受け取り薬局の事前指定で待ち時間を解消

「ヨヤクスリ」の専用サイトには全国約5万2000店の調剤薬局データを地図付きで収録しており、このうち、FAX番号が開示されている東京、神奈川を中心とした約1万2000店で2月5日からサービスを開始。4月末頃までに全国の薬局への対応を完了する予定だ。

患者は、サイトの住所データをもとに薬を受け取りたい薬局を検索し、スマホなどで撮影した処方せんの画像を送信する仕組みで、受取希望時間を入力することも可能。薬局側には、患者の電話番号も表示されるため不明な点を確認することもできる。

また、サービス利用促進策として、利用者に処方せん画像1送信につきKCの自社通販サイトの買い物に使えるポイント10ポイント(1ポイント1円)を付与。2月12日から3月末までの期間、ポイント付与率を10倍にするキャンペーンを行っており、今後は、楽天など他のポイントプログラムも使えるようにする考えだ。

病院近くにある“門前薬局”の場合、患者が多く調剤された薬が出されるまでに待たされることもあるが、同サービスを使えば、職場近くの薬局を指定し、都合の良い昼休みの時間帯に調剤された薬を受け取ることも可能。また、薬局側も、患者から事前に処方せんのFAXを受け取ることで、欠品による機会損失の抑止が期待できるわけだ。

収益モデルの基盤になる“質”という切り口

また、「ヨヤクスリ」の専用サイトで画期的と言えるのは、薬局のくちコミの投稿・閲覧機能を装備したこと。これは、実際のユーザーの評価をもとに薬局が選べるようにしたもので、「説明の分かりやすさ」「対応の新設さ」「受け取りまでの早さ」「価格の透明性」「プライバシーへの配慮」の5項目および総合評価を投稿することができる。

これにより患者側は、実際に利用してみなければ分からなかっ臨店時の対応など“質”の観点から自分に合った薬局を選べるようになり、薬局側も利用者の評価を上げるために調剤応需対応の質的向上を図る流れができることも考えられる。

別の見方をすれば、規模の大小や立地などに関係なく、患者対応を重視してきた薬局にスポットが当たり、受け取りを希望する患者が増える可能性があるわけだ。

これは「ヨヤクスリ」の収益モデルを考える上で重要な視点になる。「ヨヤクスリ」を通じた収益を考えた場合、サービス利用に対するポイントの付与、あるいは会員へのメルマガ送付によるKC通販サイトでの買い物促進など副次的なものもあるが、KCが収益の柱として考えているのは、「ヨヤクスリ」専用サイトへの薬局の広告出稿料金。“売り”は、処方せん薬の受け取り薬局を探しに来た患者に、薬局側が自らの特徴や得意分野を訴求できる点だ。

これまで自店の強みを広く訴求する手段のなかった薬局側のニーズもあると見られるが、その布石となるのは、やはりくちコミによる送客効果を薬局側に実感してもらい、「ヨヤクスリ」サイトの評価を高めること。KCとしては、くちコミ投稿機能の付与による薬局の「質の見える化」(後藤代表)を図ることで新たな事業モデルの確立を目指す考えだ。

患者・薬局とも好評価、順調な滑り出しに

一方、「ヨヤクスリ」は、順調な滑り出しとなったもようで、サービス開始後1週間の利用状況は、サイト来訪者数が約7000人、ページ閲覧数が約6万8000PV、会員登録者数300人強で、実際に同サービスを通じて処方せん画像をFAX送信した会員は約100人。

また、サービスを利用した患者の声としては、「これまで知らなかった薬局の存在を知ることができた」「時間がない時に事前に薬を用意してもらえたのでよかった」など概ね好意的で、薬局側も、サービスの告知が開始当日だったことに不満の声があった一方、「近隣に医療機関がない薬局にとって便利なサービス」「薬局の特徴やサービスをPRできるのはよい」など、前向きな捉え方が多かったという。

この結果に対し、KCの後藤代表は「特に消費者向けに告知をしていないなかで(これだけの)アクセスがあるということは、潜在ニーズがかなりあるということ」とし、今後の展開に手応えを感じているようだ。

一方で、受取時間を指定してFAXを送信したが来店時に薬が用意されていなかったという患者の声があったほか、薬局側からもFAX送信された処方せんの画像が判別しにくいといった問い合わせがあるなど、実際のサービス展開での問題も浮上。FAX画像の問題については、すでにKC側でシステムの見直しに着手しているが、前者については、薬局側に委ねられる部分。今後、「ヨヤクスリ」の利用拡大を図っていく上で、薬局側の対応がカギとなりそうだ。

利用の拡大に向け機能・コンテンツの拡充を推進

KCでは今後、「ヨヤクスリ」の機能を拡充し利用の拡大を図る意向で、2月5日に厚生労働省が処方せんの画像添付したメールでの調剤応需を認める通知を発出したことを受け、メールでの処方せん調剤応需が可能な薬局についても、有料サービスの形で登録を行っていく考え。

全体の取り組みとしては3段階に分けて進め、の第1フェーズでは、すでに提供している薬局検索、処方せんFAX送信サービスに加え、有料の薬局PRコンテンツの提供を実施。第2フェーズで電子お薬手帳、服薬アラート機能など、患者側の健康管理ツールの装備を計画する。

さらに第3フェーズとして、ネット販売を含む処方せん薬の郵便等販売への対応を計画するが、これについては、昨年12月に公布された新薬事法に禁止条項が盛り込まれている状況。これに対しKCでは訴訟を提起しているが、その結果は流動的で、法改正も必要になる案件であるという点から、現段階ではあくまでも“構想”のレベルだ。

何かと古い習慣が残る医薬品流通の世界。後藤代表は「インターネットが世の中に浸透し、生活を便利にしているが、医療の世界、特に医薬品流通の世界ではIT革新の恩恵がほとんど享受されていない」と指摘する。今回の「ヨヤクスリ」が医薬品流通を変える起爆剤となるのか、動向が注目されるところだ。

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