クリテオ、モバイル広告に本腰 アプリ内リターゲティング広告も開始

仏ネット広告配信事業会社の日本法人、クリテオがモバイル領域での広告配信事業を強化する。その一環として今夏をメドに「アプリ内リターゲティング広告」の配信を開始する。4月3日に開催した事業戦略説明会で明らかにした。

広告主のスマホアプリ内におけるユーザーの行動を分析して、SNSなどの別のアプリを閲覧している際に関連性の高い広告バナーを表示するもの。例えば通販事業者の通販アプリである「靴」を閲覧したユーザーに対し、別のアプリを閲覧中に「その靴」や「それに類似した靴」の情報を表示した広告を掲載することで広告主は見込み客にリーチできる。この試みは欧州などではすでにテスト運用を開始しており、日本でも開始に踏み切る。年内に数十社程度の広告主獲得を見込むとしている。

「アプリ内広告」のほか、昨年からはiPhoneやiPadのブラウザ「Safari(サファリ)」への広告配信も始めており、パソコンサイト中心だった事業展開を今年からは伸びシロの高いモバイル領域に広げていきたい考えだ。スマホでのネット販売展開を進めるEC事業者にとっても行方が注視されそうだ。

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アプリでリターゲティング広告を

クリテオが今夏をメドに開始する広告サービスは「モバイルアプリ内パフォーマンス広告」。すでに1月から欧州や米国ではテスト展開に踏み切っており、日本でも開始する計画だ。

同広告はスマートフォンおよびタブレット向けのアプリの中に表示するリターゲティング広告で、広告配信契約を結んだ様々なアプリ上に、広告主のアプリ内におけるユーザーの行動履歴に基づいた関連性の高いバナーを表示する仕組み。例えば通販事業者が配信する通販アプリで“青いスニーカー”を閲覧したユーザーに対し、SNSやゲーム、ニュースなど別のアプリの使用時に当該アプリ上に、閲覧した“青いスニーカー”や同ブランドの“赤いスニーカー”といったお奨め商品などの写真や商品情報を表示してユーザーそれぞれの興味や関心を引くパーソナライズした広告バナーを掲載するもの。ユーザーが当該広告をクリックすると、広告主のアプリが立ち上がり、当該商品ページなどへリンクする流れとなる。

ネット販売事業者が販促のため、スマホ向けに自社通販の利用に特化したアプリを制作することは多く、大手通販事業者を筆頭に様々な通販アプリが配信されているが、アプリをダウンロード後、あまり使用しなくなるケースは多い。日常的に使用するゲームやSNS、ニュースのアプリ内に広告できることで、通販アプリの利用促進も期待できるようだ。

まずは広告主数十社の獲得へ

すでにβ版でテスト運用に踏み切っている欧州や米国ではグーグルやツイッター傘下の米MoPubなどのモバイル広告ネットワーク内のアプリで広告主の広告を配信しており、日本でもモバイル広告ネットワークを持つ企業と組んでアプリ内広告配
信を行っていく考えのようだ。

日本における「モバイルアプリ内パフォーマンス広告」の目標広告主数や売上金額などは明らかにしていないが「広告主のアプリにユーザーをトラッキングできるツールを実装してもらう必要があり、それに多少、時間がかかる。年内では何百社の広告主に利用頂くということにはならないと思う。まずは数十社程度になると想定している」(日本担当マネージングディレクター・鈴木大海氏)としている。

既存領域外への事業展開を強化

フランスに本社を置くクリテオは大手ポータルサイトなどと契約し、通販サイトなどで商品を閲覧した人に当該商品の写真や情報を瞬時に広告に挿入し、リターゲティングを行うディスプレイ広告の配信を展開。見込み客に的確にリーチできる高い効果性が受け、グローバル全体で広告主は5000社以上におよび、およそ9割が継続して利用し、直近(2013年度)の売上高は前年比63%増となる4億4400万ユ
ーロ(627億円)と急成長している。

日本でも3年前から事業をスタート。ヤフーのポータルサイトなどを中心に広告配信を行い、親和性の高い通販事業者を中心に利用が進んでいるようだ。日本での売上高は明らかにしていないが、クリテオの総売上高の20%(=約125億円)がアジアパシフィック地域の売り上げで「その大多数は日本」(上野正博社長)としており、一定の成功を収めている模様だ。

クリテオは次の一手として、新たな領域への事業展開に着手していく考えで、これまで広告主に取り込めていなかった化粧品や健康食品といった商品数が少ない単品通販企業などに向けて、例えば色や商品のランクで広告バナーを内容の最適化することができる広告サービス「シングルパフォーマンスバナー」を今年に入り開始。また、従来の広告が直近でユーザーが興味を持った広告主の商品などを広告バナーに表示するのに対し、休眠顧客へのリーチを目的に、広告主のサイトに来訪してから最大400日(従来は30日間)まで広告バナーを表示できる「ミッドファネル」も昨年10月から開始し、大手総合通販企業などに本格的に売り込んでいく。

これらパソコンサイトをベースとした広告商品の拡充に加えて、最も強化していくのがモバイルへの広告配信だ。すでにクリテオ全体に占めるモバイル広告の売上高は1割。日本に限っては18%まで拡大しており、今後も成長が期待できることからこれまでパソコンサイトを軸とした広告事業と並行して、モバイル領域での事業を強化する意向。先の「アプリ内広告」のほか、ブラウザベースでも従来から広告配信するAndroid (アンドロイド)に加え、日本のみが先行してiOSのブラウザ「サファリ」への広告配信も昨年から対応を始めており、スマホ上の広告事業展開などを強化していく考え。

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