Tue, October 17, 2017

2014年のEC市場の上半期を振り返る

    4月にジャスダック上場を果たした白鳩

2014年も半年が経過。早くも折り返し地点を通り過ぎた。消費税率の引き上げをはじめ課徴金の導入などを盛り込んだ改正景表法の動き、大手仮想モール「楽天市場」での二重価格表示問題などネット販売業界にとってはネガティブな話題が多く見られた半年であったと言える。

その一方で、買収案件や新規事業の開始など企業活動は活発な動きも見せている。改正薬事法の施行により各社の医薬品ネット販売にも大きな動きが見られたほか、業界からの期待も高い健食表示制度改革の議論も大詰めを迎えた。この半年間に起きたネット販売業界の主な出来事を振り返ってみる。

改正薬事法施行でネット販売開始

年頭からの動きとして、今なおその行方が注視されているのが改正薬事法を巡るケンコーコムの行政訴訟だ。処方せん医薬品の郵便等販売(通販・ネット販売)に関する地位の確認を求める行政訴訟の第1回期日が1月14日に東京地裁で開かれたのに続いて、要指導薬の指定差し止め請求も同27日に始まった。

処方せん訴訟については6月12日の改正薬事法施行までに判決が間に合わないことから一旦は訴訟を取り下げたものの、裁判所側から「規制の違憲性を問う別訴訟を提起する手段もある」という案を提示されたため、現在同社では新たに違憲性を問う訴訟を提起する方向で検討を進めている。

なお、改正薬事法の施行当日にはアスクルが「ロハコ」内で第1類医薬品の販売を始めたほか、ネット販売専業社やドラッグストア、GMSも販売を開始。新たな市場でのパイの奪い合いは早くも過熱している。

課徴金の導入に懸念の声が続出

法規制に関連したニュースでは、内閣府の消費者委員会で議論されてきた「景表法への課徴金導入の是非」について6月、「導入すべき」と結論付け担当大臣に答申した。課徴金導入に関しては製造元だけでなく、供給先でもある通販企業を含めた小売り事業者にもその影響が及ぶことから制度の不備を訴える意見が続出。通販業界からは「本来供給メーカーが保障すべき内容を小売り業者がいちいち検査するのは大変なコスト増になる。結果的に消費者のメリットにならないと危惧している」(佐々木迅JADMA会長)との声も出ている。

景表法に関連してもう一つ大きな話題となったのが大手仮想モール「楽天市場」での二重価格問題で、今年に入り、昨年11月に開催された「楽天日本一セール」で不当な二重価格表示を行った疑いのある店舗があったことが発覚。4月には楽天のECコンサルタントが比較対照価格となる「元値」をつり上げて、あたかも大幅な割引になっているかのよう見せかけるよう指示していたと一部報道機関が伝えた。その後、同社では出店者を対象に調査を行い「不当表示を提案したコンサルは18名で、当該社員が提案を行った店舗は合計28店舗」との結果を公表した。この問題に関しては消費者庁が4月30日に同社に対して景表法違反とならないよう必要な措置を講じるよう要請している。

また、7月以降に最終的な結論が出る予定の健食表示制度改革の議論もいよいよ大詰めを迎えている。安倍内閣が提唱する成長戦略の一環として動き出した同規制改革は、消費者庁の「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」において、6月末時点ですでに7回の会合が終了。健食事業者にとって重要なポイントである身体の部位に言及した 〝構造機能表示〞が認められるかについて当初は行政の認識と温度差が見られたものの、現在は消費者庁と厚生労働省の間で最終的な調整の段階に入っているという。

駆け込みの反動、夏前には沈静化

ネット販売をはじめ、各小売業界が上半期に最も大きな影響を受けたと言えるのが4月1日からの消費増税スタートだ。増税直前の2、3月には多くの企業で駆け込み注文が相次ぎ、特に高価格帯の商品を中心に販売が伸長。一方で4月に入ってからはその反動で消費者の間に買い控えムードが広がり、ほとんどの企業が前年実績でマイナスとなった。JADMAが公表した主要会員企業約150社の総売上高調査でも3月が前年同月比で20%近いプラス成長だったのに対し、4月は同8%以上のマイナスを記録。その落差ははっきりと見て取れた。各社とも割引クーポン配布やキャンペーンなど増税後の対応に追われたが、市場の冷え込み自体は夏までとする見方が多く実際に5、6月からは回復基調に入っている企業もあった。

通販企業買収は今年も活発

企業買収の動きもいくつか見られている。1月に文具大手のキングジムが家具ネット販売のぼん家具を買収したことに始まり、韓国生活用品大手のLG生活健康による健食通販のR&Yの買収、楽天による無料通話アプリ提供のViber社の買収、爽快ドラ ッ グ に よ る あ か ち ゃ ん ハ ウ ス一二三の買収などがあった。新たな収益源の確保に向けた積極的な買収は下半期以降も拡大することが予想される。

新規上場案件では下着の通販サイトを運営する白鳩が4月にジャスダックに上場。調達した資金は配送センターのコンベア改良や自社通販サイトの改良費用などに充当するという。

また、注目すべき新サービスや新事業参入の話題も数多くあった。LINEの企業向けサービス「ビジネスコネクト」やカルチュア・コンビニエンス・クラブの健食通販事業参入、KDDIの電子マネー事業参入。そのほかにも富士フイルムがヘアケア事業への参入を表明している。同社ではスカルプエッセンス(頭皮用美容液)、シャンプー、コンディショナーの3商品を発売し、3年後の売り上げ規模は10億円を目指している。

物流関連でもヤマト運輸がANAカーゴと連携したアジア向けサービスの強化を始め、日本郵政グループが法人向け小型商品狙いの「ゆうパケット」を開始するなど、通販支援事業を拡充する動きも目立っている。

その一方で、ミクシィとDeNAが運営していた「mixiモール」を閉鎖。スタートトゥデイはファッションコーディネートサービスの「ウェア」について利用に消極的な商業施設やブランドがあることなどからスキャン機能を中止した。鳴り物入りで始まった新規サービスが相次いで停止されるなど、
浮沈の激しいネット販売の世界にあって各社の目論見も明暗が分かれる形となっている。

大規模な顧客情報流出も

情報流出問題では大きな動きがあった。通信教育大手のベネッセホールディングスが最大で約2070万件にも上る顧客情報漏えいがあったことを発表(7月9日)した。

6月26日以降、通信教育事業を行うジャストシステムからのダイレクトメールが同社の顧客宛てに届き始めたという問い合わせが急増。同社の顧客リストに基づいて営業活動が行われている懸念があったため、緊急対策本部を設置し調査した結果、「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」をはじめとする各種サービス利用者の郵便番号、名前、住所、電話番号、生年月日、性別といった情報の漏えいが発覚した。

なお、警視庁は7月17日に個人情報を名簿業者に売り渡す目的で記憶媒体にコピーした疑いでベネッセが顧客データベースの保守管理を委託していた外部業者の派遣社員のシステムエンジニアを逮捕している。

大量の顧客リストを扱っているという点では、今後ネット販売企業に対しても顧客情報の更なる管理強化を求める声が強まっていくことが予想される。

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