Sat, December 16, 2017

健康食品表示新制度、枠組み固まる EC事業者による制度活用の道は?

7月まで8回の会合を開いて検討していた

消費者庁で検討されていた健康食品を含む食品の新たな機能性表示制度に関する検討が積み残しとなっていた争点のほぼ全てに結論を得た。消費者庁では、制度の概要を示した報告書を策定。2014年4月のスタートから2年後に改めて制度の運用状況を踏まえた検討を行うことを決めた。制度導入までに事業者の活用を踏まえたガイドラインも整備する。

対象成分、制度導入時は限定的に

争点となっていたのは「対象成分の範囲」「表示可能な機能性表示の範囲」など。対象成分は機能を発揮する成分である「機能性関与成分」を明らかにすることを条件とすることで合意に達した。このため、DHAやEPA、グルコサミンなど身体に働きかける成分が明らかな素材は対象になりうるが、ローヤルゼリーエキスやノコギリヤシエキスなど天然物に由来する植物エキスは、その特定が難しい場合も少なくな
く、新制度の対象とはならない可能性が高い。

また、ビタミンやミネラルなど栄養機能食品に規定されているような成分も対象とはしない。制度に参加できる成分が絞られる可能性はあるが、参加できない成分が多ければ制度活用が進まないため、運用状況を踏まえ対象成分は2年後に再検討する可能性がある。

機能性表示が行える範囲は、健康の維持・増進に関する表現の範囲であれば、目や関節、臓器など「身体の部位に言及した表現」も、ただちに医薬品とは判断しない。ただし、表示に必要な科学的根拠は、「生活習慣病や疾病にり患する前の人」「境界線上の人」、つまり健康な人を対象に評価する必要がある。制度を活用する事業者は文献データを世界中から集めてくる必要があるが、文献の多くは疾病を抱えた人を対象にしたものが多い。健康な人で十分な根拠を集めるのは簡単ではなさそうだ。

また、健康被害の未然防止を図ることを目的に、情報収集体制も強化する。事業者は、相談を受けつける体制を整備するほか、保健所などへ報告する場合は、消費者庁への報告も行うことを義務化していく。

「根拠情報」届け出、透明性高める

新制度を活用する場合には、自社で集めた科学的根拠に関わる情報などを消費者庁に届け出る必要もある。消費者庁では、届け出を求める項目のイメージを公開している(=表)。今後、制度導入までに正式に整備するが、「製品名」や「機能性関与成分名」「1日摂取目安量」などは、これまでの製品でもパッケージなどに表示されてきたもの。それ以外、新制度を活用する条件として、安全面では「食経験に関する情報」や「安全性試験に関する情報」、「相互作用に関する情報」などを、機能面では「機能性の根拠情報」などを新たに届け出る必要がある。具体的な日数は決まっていないため今後検討するが、これらの情報は販売前に届け出なければならない。

安全性や機能性の「根拠情報」は、米国制度では開示する必要がないとされている。米国ではそのために根拠情報を明かさない事業者が続出しており、日本ではこうした課題を克服するため、透明性を高めた。「根拠情報」は、文献など専門家向けのものと、消費者が分かりやすいように平易な言葉で体裁をまとめたものの2つを提出する必要がある。根拠情報は、提出された時点で消費者庁が中身をチェックすることはなく、規定の項目を満たしているかをチェックするのみ。ただ、消費者庁が誰でも根拠情報にアクセスできるような仕組みを整備する。当然、そこに監視の目も働くことになる。

安全性、自社評価なら2000万円超?

では、実際、ネット販売事業者はどういった形で制度を活用できるだろうか。安全性、機能性で必要な準備をそれぞれ検証したい。

安全性は、まず「食経験」で評価する。全国規模で長年に渡り摂取されているような場合、これで安全性評価は十分になる。ただ、流通量や取り扱い年数がそれほどあるとは言えない健食の場合、「食経験」はクリアできない可能性が高い。そうなると、トクホで確認するものと同レベルの「安全性試験に関する情報の評価」が必要になる。

これは、必ずしも自社試験を行う必要はなく、文献でも良い。ただ、文献に記載されている成分の規格、摂取量と製品に使う成分の規格、摂取量が同じでなければ文献による安全性評価が十分とは言えない。自社で試験をした場合のコストは、「例えば、動物による安全性試験は700万円前後、ヒトを対象にした過剰摂取試験や長期摂取試験はいずれも500~700万円かかる」(評価試験に詳しい関係者)という。コスト回収を考えると2000万超の費用を選択する道は厳しく、豊富な安全性情報を持つ原料メーカーの素材を使い、〝無難〟な量を配合することが現実的といえそうだ。

機能性、「文献調査」活用が現実的

機能性評価を行う方法は、「最終製品を使ったヒト試験による実証」と、最終製品もしくは成分ベースで「研究レビュー(文献調査)による実証」を行う2択がある。

ただ、これも最終製品によるヒト試験で評価しようとすると「最低でも3000万円前後の費用はかかる」(同)という。試験規模や、原料メーカーとの費用負担の分担にもよるが、安全性、機能性を合せ5000万円近くのコストを見込まなければならないことになる。

一方、活用できそうなのは「研究レビューによる実証」。これもある成分の機能について同じ規格、同じ配合量を想定した文献から肯定的、否定的なものを網羅して総合的に評価する「システマティック・レビュー」を行う必要はある。ただ、文献調査は「70~150万円程度でできる」(同)というから活用しやすい。

また、新制度の特徴は制度を活用した事業者の製品の「根拠情報」は届け出により誰でもアクセスできるように開示されているところにある。〝二番煎じ〟とはなるものの、他社が行った機能性評価を参考に根拠情報を収集してくることができないわけではない。同じ文献を使い、同じ規格の製品を作ることになるわけで、表示内容も当然コモディティ化し、競争力は弱くなる。ただ、この選択肢は残されていると言
えるだろう。

部位を表示できる強みを活かすために新制度を活用するか、「いわゆる健食」のままイメージで売るか、ネット販売事業者も選択を迫られることになる。ただ、新制度導入を機に行政の「いわゆる健食」に対する監視を強化するなど風当たりが厳しくなることを忘れてはならない。

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