アマゾンが予約販売を出品者に開放 、期間を「1カ月」から「1年」に延長

出品者はこれまで「30日先まで」だったが今後は「1年先まで」予約販売ができるようになる(画像はあ る出品者の商品。すでに30日以上先の予約販売を行なっている)

アマゾンジャパンは3月10日から「マーケットプレイス」の出品者の予約販売機能を強化した。これまで最大で“30日先”までだったが、“365日先”までの予約販売を可能とした。予約販売期間の延長で出品者は人気商品などについて効率的な需要の取り込みができるようになりそうだ。アマゾンでは予約販売機能強化で出品者の販売を支援し、アマゾン全体の流通総額拡大につなげたい狙い。

通販サイト「アマゾン」では、同社が仕入れ販売する「アマゾン直販商品」の予約販売期間は無制限だが、同社の仮想モール機能「マーケットプレイス」を活用して商品を販売する事業者には予約販売期間を制限しており、これまでは「30日先」までとしていた。これを同日から延長し、ほとんどの商品カテゴリで「365日先」までとした。

さらに「出品者から要望が特に強かった」(同社)という「おもちゃ&ホビー」のカテゴリでは最大730日先まで設定できるように改めた。なお、「当社の戦略上の都合」(同)として“書籍”に関しては予約販売の「対象外」とする。出品者は出品管理ツール「セラーセントラル」内の「在庫管理」という箇所で対象商品を選択し、予約商品の発売日などを設定できる。

なお、予約販売機能は同社サイトで商品を販売する出品者の中でも主に法人を対象とした大口出品サービス利用社のみ。予約適用商品は「メーカーから発売日が発表され、出品事業者が在庫入手可能な商品」で、かつ出品事業者自身で出荷する商品に限られており、アマゾンが提供する商品配送代行サービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン」を活用して配送する商品は適用外となる。

同社では「マーケットプレイス」出品者の予約販売機能を延長・強化することで「アマゾンのお客様は欲しい商品を確実に安心して購入できるようになる」というユーザーメリットに加えて、出品者にとっても、販売数が予測しにくい新商品やCDやDVD、フィギュアなど人気の高い商品、地ビールや吟醸酒など生産に時間がかかる受注製品などについて、予約数を把握しながら効率的な仕入れや生産ができるという利点のほか、おせちや果物、花など季節限定の商品についても予約販売で確実な需要の取り込みができるようになり販売機会ロスを軽減できるとしている。

モールビジネス拡大に舵

一見、単に多くの施策のうちの1つに見えるこの予約販売機能強化だが、実は現時点で出品者の予約販売期間の「30日先まで」という“縛り”を解いたのはアマゾンジャパンのみで、米本社や他の海外のアマゾンではいまだ「30日先まで」のまま。通常は米本社が実施した施策をアマゾンジャパンが遅れて開始することが多い中、日本独自の異例な機能強化策と言える。

米本社を含めて他国のアマゾンがなかなか出品者の予約販売延長に踏み切れない理由の1つが、予約販売機能がアマゾン自身の直販において1つの大きな武器だからだ。「マーケットプレイス」という仮想モールビジネスを展開していても、それはアマゾン自身のECの補助的な位置付であり、やはり自社直販が収益の柱であることは間違いない。予約販売に関しても出品者には「1カ月先まで」という制限をかける一方でアマゾンの直販商品では予約期間は無制限として、すでに発売日が決定しているDVDやゲームといった人気商品などの予約需要を少なくとも「アマゾンサイト内」では出品者商品でなく、アマゾン商品が選ばれる1つの要素となっていたわけだ。

今回、アマゾンジャパンが行った施策は自社直販と同様に、“無制限”とはいかないにせよ、言わばアマゾン自身の”専売特許“を出店者にも一部開放したことになる。そこまでした理由はアマゾンジャパンが直販よりも、伸びシロの大きい仮想モールビジネスの強化の大きく舵を切った1つの証左とも言えそう。予約販売機能の強化で出品者のアマゾン内でのビジネスを支援し、アマゾン全体の流通総額の拡大を図っていく狙いのようだ。

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