【機能性表示食品制度がスタート】新制度で健食市場はどう変わる?

日本通信販売協会の「前夜祭」には 600 人が参加し関心を集めた

食品の新たな表示制度である「機能性表示食品」制度がついに始まった。制度は、企業の自己責任のもと、表示する内容や機能性の根拠を消費者庁に届け出る「事前届け出制」で運用される。スタートと同時に届出が確認できたのは4社。これに遅れじと制度活用を表明する企業も複数社現れており、4月16日時点で消費者庁にはすでに112件の届出が寄せられているという。表示内容が明らかになった企業をもとに、その狙いを探っていく。

表示範囲は〝ほぼトクホ並み〟

新制度で表示できる範囲は、〝ほぼトクホ並み〟。トクホは病名に言及できる「疾病リスク低減表示」も可能だが、「機能性表示食品」はできない。それ以外は、トクホと同じだ。

一つは、〝食後の血糖値の気になる方に〟〝血圧の高めの方〟など「簡単に測定できる体調の指標について、その維持や改善をうたうもの」。血圧や体脂肪など生活習慣病の指標をイメージすればよい。もう一つは、〝目の健康の維持に〟など「からだの生理機能や組織機能の良好な維持や改善をうたうもの」。関節や肝臓など身体の部位に言及した表示がこれにあたる。最後に、睡眠や疲れ、ストレスなど「からだの状態を本人が自覚でき、一時的な体調の変化の改善をうたうもの」。眠気や疲れの度合いは人によって異なるが、今ではこれらの度合いを測るさまざまな指標が開発されてもいる。こうした指標を使い、評価するのが最後の表示になる。

一方でこれまで薬事法規制を受けてきたのと同じように、当然ながら「予防」や「治療」は薬の範疇なので表示できない。あくまで使う対象者の想定は健康な人であるため、〝血圧が高めの方に〟という未病領域の表現は良くても〝高血圧の人に〟など病気の範囲のものは駄目ということになる。

サントリー、「抗酸化」で届出

では、実際、各社はどのような表示を検討しているのか。消費者庁は4月15日、8製品の届出を受理。すでに届出を行っている企業や受理された事例をもとに見ていく。

最大手のサントリーウエルネスは、「セサミンEX」で届出を行った。表示内容は「セサミンを含み、抗酸化作用があります」というもの。意外にシンプルな内容だが、理由はどこにあるのか。

健康食品の訴求は大きく2つに分けることができる。一つは、「グルコサミン=関節」「ブルーベリー=目」のように「成分」と「機能」の結びつきに強いイメージが持たれているもの。もう一つは、多様な機能から〝元気の源〟のように理解されているものだ。前者は消費者がイメージしやすく、訴求するポイントも明確だが、参入企業の増加から競争環境は厳しい。後者は、〝元気の源〟と理解されるまで、イメージの醸成に大変な労力を要するが、ビタミンやミネラルのように一端〝必須栄養素〟のように理解されれば「ベースサプリメント」として、市場を独占できる魅力がある。原料が独占できればなおさらだ。

ただ、制度を活用するには、「機能を発揮する成分を特定」し、「その機能」を明示する必要がある。多様な機能を訴求する〝マルチファンクションクレーム〟を目指す場合、「機能性表示食品」制度を活用することで、逆に表現内容が限定され、ターゲットを狭めてしまう可能性があることが悩みの種だった。

さまざまな角度の訴求から顧客を獲得してきた「セサミン」もその一つ。このため、「ベースサプリメント」の立ち位置を狙う多くの企業がサントリーの動向を着目していた。

その結果、届出した表示は「抗酸化作用」とシンプルなもの。現段階でまだ受理されていない。ただ、「抗酸化作用」は明確な機能はイメージしにくいが、「アンチエイジング対応」といった雰囲気で、その領域、ターゲットとなる層を広くとることができる。広告の表現次第で訴求の幅を広げる狙いがあるのかもしれない。

ファンケル、「製品試験」で差別化

ファンケルは、アイケア関連のサプリである「えんきん」など2アイテムを届け出た。表示内容も「手元のピント調整機能を助け、目の使用による肩・首筋への負担を和らげます」と、具体的かつ分かりやすい。

今回、複数社で届出、もしくは届出の予定が確認できたのが「アイケア関連」。「ブルーベリー=目」のようにイメージがしやすい領域でもあり、すでに厳しい競争が予想される。こうした中、ファンケルでは「えんきん」で「製品の臨床試験」によって機能を確認、独自の表示を行っている。アイケア関連で「成分のシステマティックレビュー(SR)」を使った場合、その多くは「目の健康の維持に」など各社横並びの表示になることが予想されるため、製品の試験で他社と差別化を図る狙いがあるのかもしれない。実際、受理されている「ヒアルロン酸Na」の評価はともにSR。表示も似通っている。

ライオン、「ダイエット」で訴求

ダイエット関連の表示を目指すのは、ライオンだ。同社は健食通販市場への参入で後発組ながら、13年に100億円の売り上げを達成するなど急成長している。これまで「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」を主力にダイエット訴求で成長。制度でも「ラクトフェリン」で「内臓脂肪を減らすのを助ける」「肥満指数(BMI)の改善」といった表示を行うという。

ダイエットといえば、健食では13年9月以降、消費者庁による景品表示法による措置命令が6件と相次いでおり、〝要注意〟カテゴリ。最近も中堅通販のライフサポートがダイエット健食のラジオ通販で措置命令を受けたばかりだ。今後も制度に乗らない〝いわゆる健康食品〟ではダイエットサプリに対する厳しい規制が予想されており、さらなる成長に向け、「機能性表示食品」という正攻法で堂々とダイエット機能をうたう戦略があるのかもしれない。

7割の企業が制度活用を表明

本誌が4月の制度開始を前に健食通販を展開する51社を対象に行ったアンケートでは約7割(34社)の企業が「制度活用の予定がある」と回答。「予定がない」(15社)を大きく上回った。「活用しない」という企業も3割。自社商品で制度活用に必要な「機能性関与成分が特定できない」「投資に見合う収益の回収の見通しが不透明で対応する人員が確保できない」「外部期間への依頼コストが負担」といった声が寄せられている。制度の対象にならない商品も「ある」と答えた企業が8割(40社)に上り、多くの企業が、〝いわゆる健康食品〟として市場に残る商品を抱えることになる。

大手中心に届出続く

企業各社に聞き取りを行った中では、届出を行った成分や表示内容は明かしていないものの、近く届出を行うことを表明した企業もある。

山田養蜂場は、近く3アイテムを予定。「システマティックレビューを積極的に使うほか、レビューで対応困難な(蜂産品関連など)主力商品は臨床試験で対応する」と意気込んでいる。ほかに日本水産が「EPAを使い、秋の新商品で検討しており、夏前に届出予定」、興和が「パッケージの詳細の詰めに入っており、4~5月中に予定」、小林製薬は「4月中」、森永製菓は「近日中」に届け出るとした。4、5月ではないものの、ダイドードリンコも「積極的に活用」とコメントしている。

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