通販サイトのチャット対応、その効果は?

実店舗であれインターネット上であれ「店舗」にとって“接客”は非常に重要なテーマだ。それ次第では迷っていた客は購入を決め、さらにこれからもずっとその店で買い続けるリピーターになってくれるかも知れない。逆に「ここでは買いたくない」と二度と店に来てくれなくなるかも知れない。特に販売員が直接、接することが困難な通販サイトは工夫が必要となる。その1つの方法として、以前から注目されていたのが「チャット」による対応だ。客を待たせない素早い接客が可能になる反面、運用面ではその煩雑さがネックとなっているようで、興味は持ちつつも導入に二の足を踏んでいるところも多そうだ。実際にチャット機能を導入する通販サイトに現状と効果を聞いてみた。

事例① ガシー・レンカー・ジャパンの場合

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新規ユーザーのコンバージョン率を高める

PCサイトのライブチャット画面、注文画面から注文せず戻るなど表示条件に合致すると現れる

チャットといえば、顧客コミュニケーションの充実や顧客満足度を高めるツールというのが一般的な理解だろう。だが、ガシー・レンカー・ジャパン(GRJ)が見据えるのは、さらにその先。明確に「商品購入」につなげるツールとしてチャットを活用する。昨年10月、タッチコマース社のライブチャットシステムを導入。カスタマーサービスの先にある商品購入を目的にするGRJのチャット活用術とはどのようなものなのか。

10人中8人は購入せず離脱

GRJではこれまでもカスタマーサービスの一環として既存客向けのチャット機能をウェブサイトに搭載していた(現在は休止)。電話やメールといった問い合わせ窓口同様、チャットを好む顧客の満足度を高めるためのサポート窓口の一環として開設したものだが、さほど利用率が高いわけではなかった。

今回、導入したのは、米国本社が先駆けて導入していたタッチコマース社のライブチャット。カスタマーサービスというこれまでの目的と一線を画し、ウェブマーケティングの充実を図ることによって、新規客のコンバージョン率を高めるのが目的だ。

現在、「プロアクティブ」といった商品の指名検索でGRJサイトを訪れるユーザーのコンバージョン率は15%前後で推移する。「ニキビ」という悩みが顕在化しているユーザーにリーチする商品特性も商品購入に至るモチベーションになっており、高いコンバージョン率に影響しているのだろうが、多くのECサイトの平均が6~7%と言われる中、驚異的な数字ではある。

ただ、見方を変えれば10人中8人が商品購入に至らず、サイトを去っていることになる。〝いかにして離脱していく顧客を食い止め商品購入につなげるか〟。その一手がライブチャットになる。

20超もの表示条件をテスト

GRJでは、ライブチャット画面の表示について、20超もの表示条件を設計し、常にどのような表示シーンが有効かABテストを繰り返している。

基本は、サイト内で〝迷っている〟と思われるユーザー行動を分析して設計したもの。特に、購入意欲が高い注文画面における表示条件は細かく設計している。一旦、注文を途中まで入力したのに別画面に遷移した場合は5秒後にポップアップで表示する、といった具合だ。

実際、成果がみられた事例では、注文画面にきてから「30秒」と「45秒」でチャット画面を表示するテスト。後者の方が、コンバージョン率が高かった。

反対にチャット画面の表示速度を速めて成功したのは、顧客の体験談を紹介するページ。「90秒」で表示するより「60秒」がよかったという。ニキビケアに関する情報ページでは、画面の遷移数でテスト。3ページ目まで見るユーザーより、2ページ目でチャット画面を表示する方がよかったという。こうしてPDCA(効果検証)を回した結果、ライブチャットを利用したユーザーのコンバージョン率は10~15%で推移するまでになった。

母数を増やせば購入も増える

ただ、まだテスト段階で課題も多い。利用件数が日に10~15件と少ないことだ。この点は母数(利用件数)が増えれば自然と購入件数も増えることになると考えている。今後、利用者の増加と母数の拡大を同時に進めていく考えだ。

現在、チャット画面には主力商品であるニキビケア化粧品「プロアクティブ+(プラス)」のロゴマークが表示されている。ただ、今後は「ニキビ相談窓口」といったサービス名をつけるなど、チャット機能の性格づけを行っていく。ユーザーが利用した理由を分析して適切な名称をつければ、利用件数の増加も見込めるためだ。

また、対応時間も工夫する。現在はコンタクトセンターの受付時間(平日9時~20時、土曜9時~17時、日祝日は休み)のみ対応を行っている。ただ、サイトのアクセス数が高まるのはテレビCMの放送量が増える夕方から深夜帯。そのタイミングでライブチャットが使えれば、利用者を増やせる可能性がある。

今は、購入意欲の高い指名検索のユーザーを主な対象にライブチャットをテストしているが、SEO対策も強化。「ニキビケア」などノンブランド経由のサイト流入は10倍ほどある。これらユーザーのコンバージョンを高めていくことを狙う。

クオカプランニング、ビームス、ペットのコジマの事例やチャットなどを用いたウェブ接客ツールを展開するヴィクシアの担当者に聞いた通販サイトでのチャット活用のポイントなど続きは本誌にて→購読はこちら

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