「機能性表示食品」に自主規制、業界団体が「広告ルール」策定へ

4月に始まった「機能性表示食品制度」を巡り、業界団体が広告の〝自主ルール〟策定に乗り出している。化粧品やトクホでは、業界団体つくった自主ルールに沿って広告運用が行われている一方、新制度では、明確な広告ルールがないためだ。ただ、基準策定を巡っては、機能性表示食品特有の制度設計も相まって「業界自ら小さくまとまろうとしている」といった批判も業界内から聞こえてくる。

判断基準ない「機能性表示食品」

「血圧対策はじめてみませんか?」というコピーとともに示された試験データ(=グラフ)。2週間区切りで示されたグラフを見ると、12週目に血圧が低下している様子が一目で見てとれる。ある食品会社が展開するトクホ飲料の広告だ。

国が審査して、許可したトクホは、その試験データを使い、広告を行うことができる。一方、健康食品はこうした広告を行うことができない。食品分野であるにもかかわらず、身体に変化をもたらすような効果を表示することは景品表示法や薬事法に抵触する恐れがあるためだ。

では、機能性表示食品はどうだろうか。

あるのは「パッケージ」の基準のみ

機能性表示食品は、食品表示法に基づく「食品表示基準」に細かなルールが定められている。安全性や機能性の根拠を国に届け出れば、企業の〝自己責任〟で機能を表示できるというもの。6月にはキユーピーやキリン、ファンケル、ライオンなど一部の大手の製品が市場に並び始める。

ただ、「食品表示基準」は、注意表示や機能表示の配置箇所を定めた「パッケージ」に関するもの。「広告」に関しては、届け出た内容を逸脱しない範囲で行うことが求められている以外、明確なルールが存在しない。これを逸脱した場合、景表法や薬事法で処分の対象になる、ということが分かっているだけだ。

一方で、商品には各分野に、業界団体が定めた〝自主ルール〟というものがある。例えば、化粧品なら、日本化粧品工業連合会が定めた「化粧品等の適正広告ガイドライン」、トクホならば日本健康・栄養食品協会(日健栄協)が定めた「特定保健用食品適正広告基準」がそれにあたる。

こうした状況を受け、日健栄協をはじめ業界8団体で組織する「健康食品産業協議会」が新制度を巡るさまざまな課題の議論を重ね、2年後に控える制度見直しに備えるため「表示広告分科会」など4分科会を発足。遅くとも来年3月までに報告をまとめる。広告の自主ルールも同分科会で議論。より緊急性が高い検討課題として「年度末を待たず、より早い段階で策定したい」としている。

「業界自ら可能性つぶす」との批判も

確かに、広告を巡る判断は難しい。前述の試験データしかり。トクホの自主基準では、「誤認を与えるような極端な軸のスケール変更、トリミングは避けるべき」、「棒グラフを折れ線グラフに変えるのは差し支えない」、「瞬間的にグラフが出ることで誤認につながる可能性があるため、15~30秒のコマーシャルではグラフの使用は控える(テレビのみ)」など細かいルールが定められており、機能性表示食品で試験データの使用に関する各企業の判断は分かれる。現状では、複数の企業が「『トクホの広告自主基準』を参考にする」としている。

ほかにニーズの高いものでは「機能性表示食品」自体を強調する表示。例えば〝消費者庁に正式に受理された機能性表示食品です〟といった表示も〝厳しい基準をクリアした〟といったコピーとともに行えば、国の認可を得たかのような印象を消費者に与えかねない。医薬部外品や医薬品、トクホなど他の商品分野とのバランスからどの程度まで許されるか、調整が必要にも思える。

ただ、制度は、企業の〝自己責任〟であることが前提となっているものでもある。にもかかわらず、業界自らその可能性を縛るような自主ルールの策定には、冒頭のような批判もある。新制度の開始で新たに持ち上がった「広告問題」の行方を気にしておく必要がある。

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