アマゾンに匹敵する在庫規模へ【堀内康隆●ブックオフオンライン 代表取締役社長】

ブックオフコーポレーションの子会社でネット販売を手掛けるブックオフオンライン(BOO)が売上高100億円を視野に事業を拡大している。2020年4月期の売上高は16年3月期売上高見込みの倍となる100億円に到達する見込みだ。4月1日付でBOOの社長に就任した堀内康隆氏(ブックオフコーポレーション取締役執行役員)は「ネットでの中古書籍販売は品揃えを充実させればまだまだ伸びる余地がある」と語るが、アマゾンジャパンが中古書籍買取を始めるなど、今後は競争が激化する可能性もある。BOOが進める売上高倍増に向けた取り組みとは。(聞き手は本誌・川西智之)

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店舗に比べ低い知名度が課題、ヤフー会員取り込む工夫を

単品管理導入で「せどり」減少

―中古書籍の市場をどうみていますか。

一般的にはダウントレンドにあると言われていますが、私はそこまで需要が減っているとは思っていません。本を読む人自体は、若干減っているとしてもおおむね横ばいです。ユーザーの手元に残っている本がまだまだ多く、それをわれわれのビジネスの中に取り込めていないがために、機会を損失しているのだと思います。ですから、いかにブックオフに売ってもらえるかが重要になってくるわけです。ネットでの中古書籍に関しては、品揃えを充実させればまだまだ伸びる余地があります。BOOでも在庫がゼロだったりすぐに回転してしまったりする商品は多数あるので、品揃えを圧倒的にすることが必要でしょう。

ただ、仕入れ強化に加えて、露出も工夫しなければいけないでしょうね。在庫を増やすだけではいずれ伸びは鈍化するので、関連する商品などをまとめて買ってもらうことも考えなければいけません。

─BOOでは店舗との在庫連携も進めています。

店と連携しながら、アマゾンに匹敵する1000万冊という規模感を目指したいですね。インターネット買い取りサービス「宅本便」だけではなく、店舗で一定期間陳列しても売れなかった高単価商品については、物流センターに集め、BOOの在庫としていきます。これまで宅本便で買い取った本はBOOと店舗でシェアしていたわけですが、今後店舗では家電などの取り扱いが増えます。これは、ハードオフコーポレーションとのフランチャイズチェーン契約が3月末で切れたことによるもので、店舗での書籍販売スペースが少し狭くなる。都市部の大型店は買い取る書籍の数が少ないので、宅本便買い取りの本を回していたのですが、こうした店で在庫が不足した場合でも、周辺の店舗からの融通で賄えるようになるでしょう。つまり、宅本便で買い取った本をネットですべて売れる状態になるわけです。

―店舗でも単価の高い書籍については単品管理を進めています。

以前は半額と税別100円という2種類の値付けしかなかったわけですが、現在は商品の状態に応じて値付けをしています。物流費をかけても収益につながる商品については、一定期間店に陳列し、売れなかったら物流センターに集めるというオペレーションとなります。この際、ネットでの販売価格は下げる場合もありますが、必ずというわけではありません。店で売れないというのは、その商圏ではニーズがなかったというだけなので、同じ価格でもネットで出したら売れる可能性があります。

―値付けについてはすべての本でこうした仕組みを採用するのですか。

いわゆるハードカバーの本だけです。全商品で値付けを変えることもできますが、単価が高い商品の方が効果はあることが分かりました。現在は直営店だけではなく、フランチャイズ店でも一部でこの仕組みを導入しています。

─全店舗の在庫状況をネットから確認できるような仕組みを導入する計画はありますか。

今のところは考えていません。その仕組みにすると、メンテナンスするためのコストが必要で、100円の本も含めて『どの店にどのタイトルが何冊あるか』を管理しようとすると、常時棚卸しをしなければなりません。その結果、販売価格が上がったとしたら本末転倒です。ネットでユーザーに安く本を提供するには、いったん物流センターに商品を集めた方が良いと思っています。

─値付けの仕組み変更により、ブックオフなどで買ってアマゾンマーケットプレイスやヤフオク!で転売する、「せどり」ビジネスを営む個人の来店は減っているのですか。

確実に減っています。例年、正月に開催するセールはせどりの人たちであふれていましたが、2015年は少なかったですから。これまでは、せどりの人たちが購入することで、本を読みたい人のチャンスをロスしていました。本を読む人は継続しての購入が期待できるので、真の意味でリピーターとなってくれるでしょうし、読み終わった本を売りにきてくれるかもしれない。その商品の価値を転売することで見出す人に売るよりも、読むことで見出す人に買ってもらう方がいいですからね。ただ、以前は店舗で売れずに値下げした商品をせどりの人たちが買い、ネットで売るという形で、需給のマッチングをしてくれていたのは事実です。現在はブックオフ自身がネットに注力していますから、せどりの人たちに商品を売るのはちょっと違うんじゃないでしょうか。

倉庫拡張で在庫増へ

─親会社のブックオフコーポレーションでは、昨年からヤフーと資本業務提携しています。ネット販売ではどんな成果が出ていますか。

BOOへの直接的な効果は今のところありません。ただ、ブックオフ店舗で買い取った商品をヤフオク!で販売する形となり、販売効率の向上が期待できることから、物流センターの拡張がしやすくなりました。これまでは限られたスペースの中で、商品を回転させるために値下げ販売をすることもあったわけです。この6月に倉庫を拡張しましたが、今後も来年度にかけて広げる計画です。在庫が今までより保有できるようになったため、無理な値引きをする必要がなくなりました。また、今年度中には当社の在庫をヤフオク!のストアと連携する予定です。

─ヤフーが展開するサービスからの送客も期待できそうです。

店舗の会員カードを3月に刷新しましたが、これをBOO、ヤフーのIDと有機的につなげるためのプロジェクトを立ち上げています。実現すれば、サービスの融合が期待できるし、送客に関してもよりやりやすくなるはずです。そうなれば、書籍やソフトが欲しいからサイトを来訪するという現在の導線以外にも、例えば、GYAO!の動画を見た人に対し、BOOやヤフオクにおける関連商品をレコメンドし、サイトに来てもらうことができます。BOOの知名度は、店舗に比べるとまだかなり低いのが実情なので、3000万人いるヤフー会員を取り込むことを考えていきたいですね。

─大日本印刷グループが運営する書籍通販サイト「honto」で中古書籍などの買取サービスを請け負っています。成果は。

期待にはやや足りませんが、まずまずというところです。当社は買い取り機能を実装しているので、他の企業とも同様の提携が可能です。

─本やCD・DVD以外にも新たな商材の取り扱いを計画しています。

まだ具体的にこれと決めているわけではありませんが、消費者の声を聞きながら進めていきたいですね。例えば、スポーツジャンルの書籍を購入した人に対し、スポーツ関連商品のリユース品を提供するといったことが考えられるでしょう。また、CD・DVDを買った人に、オーディオ機器をおすすめするのも良いですね。そうなると、個々の顧客に対し、適切な中古品をレコメンドする仕組みが必要になってきます。ただ、アパレルは商品点数が多く、採寸などの手間もかかるため、取り扱いは考えていません。そういう意味でも、オールジャンルの書籍を扱い、なおかつ品揃えを豊富にすることが、向こう2年間の最重要課題となります。場合によっては、書籍以外の商品も含めて、ジャンルを重視した陳列スタイルにするなど、サイトの作り方を変える必要があるかもしれません。

─家電など他ジャンルの中古商品を扱う場合、価格面での競争も出てきそうです。

そうなった場合でも、中古商品は新品に比べると利益が出しやすいのが強みとなります。ただ、中古の場合、顧客の欲しい商品の在庫が必ずあるわけではないので、レコメンドのパワーという意味では弱い部分があります。構想段階ではありますが、店舗がヤフオク!に出品している商品の情報も提供できる形にしていきたいですね。顧客分析が深掘りできていない部分もあるので、品揃えを拡充しながら進めていきます。

書籍だけでは80億円が限界、ジャンル拡大し売上高100億円へ

書籍の冊数を現在の4~5倍に

─BOOの前期売上高を教えてください。

約5%増の48億円です。消費増税の余波などもあり、計画の50億円には達しませんでした。今期売上高は50億円強を見込んでいます。

─5月に公表した中期計画では、2020年3月期のBOO売上高目標を100億円としています。達成に向けたポイントは。

まず来年度末に向けて、書籍の冊数を現在の4~5倍に引き上げることで売り上げを伸ばしていきます。ただ、書籍だけで伸ばせる限界は80億円くらいだと思っているので、新たな商材を取り扱うことで、100億円に到達したいですね。

─新商材はいつ頃から扱うのでしょうか。

買い取りは来年度からスタートする予定です。ただ、宅本便で買い取ってすぐにネットで販売するというよりも、店舗に供給することから始めたい。その中でどんな商品がネットで売れるかを分析するとともに、店舗商品のヤフオク!出品も増えていくはずなので、そことリンクさせてネットでの見せ方も工夫したいと思います。まずはフィギュアや鉄道模型といったホビー関連、さらにはカメラなど、趣味性の高いものが向いているのではないでしょうか。競合も多々ありますが、たくさんの商品をワンストップで買い取れる強みを活かしたいと考えています。

─アマゾンが中古書籍の買い取りを開始しました。どう見ていますか。

実は私も実際に利用してみたのですが、「アマゾンが欲しいものを買い取る」というスタンスで、買い取りのシェアを取りに行く戦略ではないと思っています。現段階では市場における人気商品をアマゾンが欲しがっているという感じはないからです。マーケットプレイスのセラーがカバーしにくいような古い本の買取価格が高い印象がありますね。今のところ、アマゾンの参入の影響が数字として出てくるとは思っていなません。ただ、アマゾンが自社で本を買った人に対し、「今売ってくれれば○円で買い取りますよ」という働きかけをしていくようになったら非常に怖い。特に、書籍以外の家電製品などでその仕組みを採用したら、大きな脅威になるでしょう。

◇プロフィール◇

堀内康隆(ほりうち・やすたか)氏

1976年生まれ。1999年4月中央クーパース&ライブランドコンサルティング(当時)入社。2004年8月トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)入社。2006年3月ブックオフコーポレーション入社。2009年6月取締役執行役員管理本部長。2013年4月取締役執行役員(現任)。2015年4月ブックオフオンライン代表取締役社長(現任)。

◇取材後メモ◇

やや遅れてネット販売に参入したブックオフグループですが、ネットの世界でも地歩を固めつつあります。単品管理の導入により、アマゾンマーケットプレイスやヤフオク!で販売していた「せどり」の人たちへの在庫流出の量が減りました。これまでネットでの中古書籍といえば、アマゾンマーケットプレイスやヤフオク!が目立っていたわけですが、品揃えや在庫を拡充することができれば、これらのサイトに流れていた需要を取り込むことができるわけです。

今後は書籍やCD・DVD以外にも取り扱いジャンルを拡大することで売上増を目論むBOO。どこまでお得感のある価格で提供できるかがカギになりそう。ただ、ここで気になるのが巨人・アマゾンの動き。果たしてどこまで本気で中古書籍買取を行うのか。ブックオフ対アマゾンという図式になるのか、注目したいところです。

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