楽天が「レビューで値引き」禁止 ―― 質や信頼性上げる目的で

「レビューで値引き」は定着していた

楽天が仮想モール「楽天市場」の商品レビューに関するルールを変更した。2015年11月12日から、「レビューを書いたら送料を無料にする」「レビューを書いたら値引きする」といったキャンペーンを禁止。同社では、レビューの質を向上するための施策を実施しており、今回の取り組みはその一環となる。

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「レビュー数重視」から転換

楽天市場をはじめとした仮想モールでは、購入者がレビューを書くことを前提に、送料を無料にするといったインセンティブを与えるキャンペーンが定着している。これは、レビューの数や評価によって購入を決めるユーザーが多いのはもちろん、「レビューの数が多い方がモール内検索順位で有利」とみる店舗が多かったからだ。

ただ、インセンティブを与えた上でのレビューは、評価にバイアスがかかっている恐れがあるほか、「義務を果たす」ために商品到着前にレビューをするユーザーも少なくない。「まだ届いていないが、期待を込めて評価は星5つ」などというレビューは、購入するかどうか迷っているユーザーにとっては無価値なものといえる。

楽天では、レビューの数よりもレビューを投稿したユーザーの“質”を重視する方針を打ち出している。「ヘビーユーザーによるレビューと、サクラ投稿の可能性もある誰だか分からないユーザーのレビューでは書き手の質に差がある」(河野奈保執行役員)ことから、こうした要素を楽天市場内の検索やレビューにおける総合評価(星の数)に反映している。今回の「インセンティブ禁止」も「レビューの質や信頼性を向上されるための取り組み」(PR推進部)という。

店舗にはRMS( 店舗管理システム)で告知した。違反した場合の罰則などは検討中。期間限定で行っている場合は、キャンペーンが終了次第のルール適用となる。「今回の注文へのインセンティブ」が禁止対象となるため、レビューを書いたユーザーに対し、次回購入時に使えるクーポンを発行するというキャンペーンは認める。

購入率上げるための工夫を

「レビューを書いて送料無料」「書かずに送料有料」とあった場合、多くのユーザーは前者を選んで購入していたはず。また、以前はレビューを書いたユーザーと購入者とを紐付けるのは難しかったため、実際にはレビューを書かなくても値引きされていたのが実態だった(現在はレビュアーの注文番号が確認可能に)。

確かに、何も条件がない時よりはレビューを書いてもらえる確率は上がっていたのだろうが、「実質的に値引き」という販促に見合う効果が出ていたかどうかの切り分けは難しい。

それでも出店者がこうした販促を採用していたのは、市場内のSEO対策として有効だと思っていたからこそ。ただ、楽天が「レビューの数を重視しない」と明言している以上、「値引きは効果的なのか」という視点から検討する必要がある。

出店者からは「商品力やサービスで総合評価を高める方向に進むことは歓迎したい」(雑貨関連の出店者)といった声が出ている。一方で、「ユーザーにとっては値引きがあった方がいいのでは」(スポーツ用品関連の出店者)という声もある。購入時に送料がネックになるケースは少なくないだけに、購入率を高めるための工夫が必要になりそうだ。

楽天では、「ユーザー対応の良い店ほどナビゲーションが優遇される」という取り組み「スマイルプロジェクト」を15年1月から行っている。“(ユーザー対応などで)良いことをしているお店は優遇する”というもので、具体的には、「市場内のサーチ結果のロジックに反映しており、こうした店の商品は検索上位に来るというイメージ」(河野奈保執行役員)。店舗には、こうした楽天の動きに柔軟にあわせた施策が求められそうだ。

現状は猶予期間が設けられているため、まだキャンペーンを続けている店舗も少なくないが、猶予が終わっても行っていた場合、何らかのペナルティが課せられることになってもおかしくない。本当に参考になるレビューとは何なのか。書いてもらうためにはどうすべきか。モールと店舗双方が考える時期といえるだろう。

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