店頭・ロッカー受取、早朝深夜・スピード配送は付加価値をもたらすか? 注目のEC配送、現状と効果は?

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キタムラでは店舗受け取り特典もある

【店頭受け取り】

立地や店舗数活かす家電関連
アパレルは取り置きで機会ロス削減

ECの最大の利便性の1つは時間や場所に制約を受けずに「いつでもどこでも買い物ができること」。これは注文後もしかりで場所や時間の制約を受けずに注文した商品を受け取ることができればECの利便性はこれまで以上に高まりそうだ。そうしたニーズに対応して、店頭やロッカーでの商品の引き渡しやこれまで対応していなかった時間帯である早朝・深夜帯の配送、注文から一定時間以内に配達するスピード配送などに取り組み始めたEC事業者も出てきた。では、そうした注目されるEC配送の現状はどうなっているのか。各配送方法別に現状と効果を見ていく。

比較的古くから行われている、通販商品の店頭受け取りサービス。店頭在庫が販売できるため、送料がかからないのがユーザーのメリットであり、店舗にとっては“ついで買い”が期待できる。オムニチャネルが注目される最近は、導入企業が広がっている。家電関連やアパレルでの効果を探った。

専門店の強みで店受け取り拡大

実店舗を全国各地に有する家電量販店や専門店では、店頭受け取りを実施している企業が多い。中でも目立つのはカメラ専門店のキタムラだ。
キタムラでは、「宅配売上」と「店受取売上」を合算した数値を「EC関与売上」としている。宅配は消費者の自宅まで届ける一般的な通販だが、店受取売上に関しては、通販サイトで注文した商品の店舗受け取り売上高のほか、店舗においているECタブレットを利用した取り寄せ注文も含まれている。2015年3月期のEC関与売上は、前期比1.1%減の430億3400万円で、このうち宅配売上が約119億円、店受取売上が約311億円。宅配は価格競争により売り上げをやや落としたが、利益は予定通り確保、店受取売上については、店頭におけるタブレットの活用と新製品予約が進み、売り上げを伸ばしている。

店舗受け取りの利用が多い理由として挙げられるのが送料だ。宅配は税込8000円以上の購入で送料が無料となるが、店舗で受け取れば無条件で無料に。また、カメラは専門性の高い高額商品だけに、知識のある店員に説明を受けたいというニーズは非常に高い。消費者にとっては「商品説明や使い方の相談ができるだけではなく、自分にあったアクセサリー類の紹介といったフォローを受けることができる」(キタムラの逸見光次郎執行役員)。

カメラは買う事が目的ではなく、写真を撮って思い出を残すことが目的であり、さらには撮り続けることで上手くなっていく。そのため「相談する窓口があることは非常に重要」(同)。店員に相談した後は、ネット注文→いきつけの店舗受け取り、もしくは宅配を活用してもらうわけだ。

カメラはナショナルブランド商品のため、基本的にはどこで買っても同じ。ゆえに、買った後のフォローが重要となる。同社では、カメラ専門店であり、全国に約900店舗を有する点を強みとしている。

さらに同社の場合、店舗が自店を受け取り拠点に指定された場合、売り上げが自店につくというメリットがある。そのため、店頭でのネット会員獲得にも積極的という。

家電量販店では、ヨドバシカメラの店頭受け取りサービスの充実が目立つ。東京都千代田区の「マルチメディアAkiba」と大阪市北区の「マルチメディア梅田」、福岡市博多区の「マルチメディア博多」では、通販サイトで注文した商品の受け取りが24時間可能。店舗に在庫がある場合は30分以内に用意する。例えば閉店時間にスマートフォンから注文した場合でも、すぐに商品を受け取ることができる。ターミナル立地を活かしたヨドバシならではのサービスだ。

アーバンリサーチは各商品の店舗在庫を表示するとともに、店頭での取り置きや取り寄 せを申し込めるようにした

アパレル大手は店頭取り置きをサービス化

アパレルの場合はサイズ感や色味、素材感といった商品特性の問題もあり、購入アイテムの店頭受け取りよりも消費者ニーズの高い“店頭取り置き”機能を自社通販サイトに実装して利便性の向上や機会ロスの低減につなげるケースが増えている。

店頭取り置きとは、実店舗での“試着予約”のことで、従来であれば消費者が通販サイトやショップブログ、商品カタログなどを見て気になる商品があった場合、最寄りの店舗に電話して型番と色、サイズを伝え、在庫があれば一定期間、取り置きしてもらって実物を見たり試着したりするアパレルでは一般的なサービスだ。

昨今、消費者はリアル店舗に行く前にECで新作をチェックするのが当たり前になっていることから、大手を中心に展開アイテムの取り扱い店舗や、在庫の状況を通販サイトの商品詳細ページに表示したり、在庫のある店舗への取り置き依頼をサイト上で行えるようにする企業が増えてきている。
当該サービスの運用方法は企業によって異なり、例えば顧客が最寄りのA店で商品を試着したい場合、A店に在庫がなければウェブ上に「取り置き」のボタンを表示しない企業もあれば、B店もしくは通販サイトの在庫をA店に送るといった「取り寄せ」を行うアパレルもある。

具体的な事例としては、アバハウスインターナショナルの子会社アットシェルタが2014年3月にショップブログの進化版「アバハウスショップポータル」を開設したのと同時に、会員サービスの一環として気になる商品を実店舗に取り置きできるサービスを始めている。同社によると、それまでの電話依頼に比べて手間をかけずに申し込めるようになった分、申し込み件数は増えているものの、成約率は電話よりも低いことは課題という。

セレクトショップのユナイテッドアローズは、14年3月末にスタートした自社通販サイトから実店舗への“商品取り寄せ”サービスについて、対象範囲を全ブランド、全店舗に拡大。同サービスを紹介するランディングページを設置したこともあって認知拡大とともに利用件数は伸びており、何度も同サービスを利用するユーザーが出てくるなど、スタート当初に比べて約2倍の利用件数があるほか、取り寄せ店舗についてもルミネやマルイといったターミナル店だけでなく、地方店も含めて広く利用されているという。

同社では、“商品取り寄せ”の依頼があった場合、物流拠点から店頭に当該商品を送っており、店頭のオペレーションにも問題はない。取り置き依頼がワンクリックでできる利便性と、指定した店舗で商品が手にとれる安心感が顧客満足度の向上につながっている。

セレクトショップのアーバンリサーチも2015年8月から、同社が展開するブランドを総合的に扱う「アーバンリサーチストア」の全8店舗を対象に店舗取り置きサービスをスタートしている。開始から半年強が経過し、サービス利用者は多いという。利用者を会員に限定しているため、来店できないユーザーからはキャンセルの連絡が入るなどしており、来店せずに放置するような顧客はかなり少ないという。

運用面での課題としては、取り置きボタンが押されると、店舗側で在庫を確認し、当該商品を確保できると顧客にメールを送っているが、この作業を自動化できれば店頭の負担が軽減できるため、サービスの仕組み、フローを修正することも視野にあるようだ。

また、16年3月4日からは、同社が展開する各ブランドの人気商品などを販売するコンビニ型セレクトショップ「アーバンリサーチメイクストア」の全12店舗を対象にした“取り寄せ”サービスも始めた。
これまでは店頭にある在庫を取り置くサービスだけだったが、「メイクストア」はトラフィックの多い立地に開設した小規模店舗で、展開商品や在庫も少ないため、通販サイトで扱う商品を当該店舗に取り寄せられるサービスを開始。通勤や通学の途中で試着したり、受け取れるようにした。会員向けにもまだ告知はしておらず、「取り寄せ」ボタンを商品詳細ページに追加しただけだが、テスト段階から利用があり、顧客ニーズを感じたという。
同社では、「ゾゾタウン」などのファッションECモールにも出店しているが、直営の実店舗やECに来店してもらうにも、送料無料で最寄りの店舗で気になる商品を確認できたり、受け取りたいといった顧客ニーズに応える環境作りを重視しているという。

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