Sat, December 16, 2017

なぜEC専業が実店舗運営に挑むのか ECサイトの店舗、狙いと効果は?

EC専業でこれまでビジネスを展開してきた事業者が「実店舗」を構えるケ
ースが増えてきている。各社とも店舗には様々な狙いや思惑があるようだ。
ただ、同じ小売業とは言え、ECと店販は大きく異なるわけで一定の労力が
生じたり、リスクを抱えることにもなる。それでもあえて、店舗に挑む思惑
とは何なのか。注目すべき各社の店舗運営の狙いや現状を見ていく。

輸入壁紙を多数展示

【事例① iemo】

インテリア各社と共同運営

ディー・エヌ・エー(DeNA)子会社でキュレーションメディアを運営するiemoは5月1日、東京都渋谷区の代官山に「DECOR TOKYO(デコールトーキョー)」をプレオープンした。
内装デザインを手掛ける夏水組など、インテリア関連各社と共同で運営するもので、夏水組が東京都杉並区で運営していた、インテリア関連店舗を移転した形となる。iemoの村田マリCEOは「O2Oにトライしたいと思っていたので、(夏水組から)声を掛けてもらえてありがたかった」と話す。

キュレーションメディア「iemo」を運営する同社。最近はトラフィックが大きく伸びている。ただ、O2Oへの意欲こそあれ、ショップを持つなどといった具体的な案はなかったという。インテリア関連各社と共同で運営するデコールトーキョーだが、iemoの役割は来店促進だ。村田CEOは「メディアとしての真価が問われている」と意気込む。
広告出稿も好調というiemo。スポンサーはインテリア関連の販売店のほか、衣料品メーカーや消費財メーカー、さらには住宅関連ではデベロッパーや建材会社など多様だ。一部スポンサーからは、「ぜひ商品を店舗に置いて欲しい」といった声があるという。村田CEOは「『iemo』は月間1000万UU(ユニークユーザー)を超えており、家や暮らし・インテリアに特化した、今までにないメディアとして注目いただいている」と話す。

商品の活用法をiemoアプリで公開する

DIYへの関心高まりに対応

「iemo」のトラフィックが伸びている要因の一つに、ターゲットとなる30~40代女性間でのDIYへの関心の高まりがあるという。
近年は誰もがソーシャルメディアを使っているが、村田CEOは「フェイスブックやインスタグラムが普及し、今まで閉じた部分だった住環境がたくさんの人の目に触れるようになった。いろいろな暮らしのスタイルがあるんだ、という気付きとともに、写真を掲載することなどで承認欲求を満たすために、自分らしさを追求する人が増えてきたのではないか」と分析する。「自分らしいすてきな部屋」を実現するための消費行動が高まっているというわけだ。

また、スマートフォンが普及したことで、「さまざまな人に共有されるまでのスピードが早くなっている。『すてきな店ができた』、『かわいい商品がある』という情報の独り歩きが加速している。こうした中で、発信する側は、消費者にどのようにサービスを知ってもらうか、良さを伝えるかが非常に重要」(村田CEO)。

賃貸でも使えるグッズ充実

店舗は30~40代女性が対象で、代官山という土地柄にあった顧客を呼び込みたい考え。マスキングテープやペンキ、輸入壁紙などさまざまな商材を揃えた。都内は持ち家に住んでいない人も多いため、賃貸でも使える、壁を傷つけないインテリアグッズなども多数用意している。
店内には部屋を模したブースを設けており、テーマを定めてコーディネートを施している。例えば、子供部屋を模したブースでは、ベッドを中心に、動物をモチーフとしたさまざまなインテリアで飾り付けをした。さらには、ワークショップ用のコーナーがあるため、体験型イベントを開催することもできる。打ち合わせスペースには、各種カタログを揃えており、ユーザーはそこからインテリア小物などの発注も可能。工務店やコーディネーターは、顧客との打ち合わせの場としての活用もできる。

店舗立ち上げにあたり、無料のタブロイド誌を発刊した。デコールトーキョー店内のほか、全国関係各所に配布する。隔月刊で、毎回3万部の発行。旬の人物へのインタビューや、商品紹介などを掲載する。創刊号では、村田CEOが特集されている。

「iemo」からの流入に期待

店舗への導線としては、「iemo」からの流入も想定しており、5月2日にデコールトーキョー関連の記事を掲載した。今後も、店舗で販売する商品の使用方法や、製作に至ったメーカーの意図なども含め、背景を深掘りした記事を投入。村田CEOは「iemoには1本で100万ページビュー(PV)を記録する記事もある。記事の量よりも質を重視し、より多くのユーザーを店舗に送り込めるようにしたい」と話す。
記事にはクーポンを表示し、レジで見せると販売価格から割り引く。2日に掲載した記事の場合、記事末尾の画像をレジで見せると、5%割引となる。

6月には店舗と連動した通販サイトを夏水組が開設する。店舗にある商品を買えるようにしたもので、開設時には400~500商品を扱う予定。さらには、記事から通販サイトへの誘導も行う。誘導したユーザーが商品を購入した場合、一定の料率をiemo側が得る仕組みとなる。

どの程度送客できるにかついては「初めての試みなので、未知数」(村田CEO)としているが、夏水組の坂田夏水代表取締役は「『iemo』からの導線は非常に期待しているし、恐らくメインの流入経路になるのでは」と話す。

店舗では、商品の購買データに紐づく属性データが得られることに加え、その商品を紹介した「iemo」でどんなユーザーが読んだのかも分かる。このデータを活用し、ロフィールの似た別ユーザーに宣伝する、といったことも行っていく。今後は両者によるオリジナル商品開発にもつなげる狙いだ。

「iemo」の閲覧者は関東地方が中心だが、地方在住者も少なくない。東京とは違い、持ち家比率が高い地域もあるだけに、デコールトーキョーとは違った切り口での商品展開ができる。「iemo」からの送客効果次第では、多店舗展開も考えられそうだ。

iemoの村田マリCEOが語る

「商品を店頭に置いて欲しい」という声多数

当社のクライアントからは、記事における商品紹介だけでなく、ぜひ店頭に商品を置いてユーザーに触れて欲しいという声があり、引き合いはかなりのものです。O2Oの場としては、ワークショップスペースもあるので、「実際に使ってもらう」ことができる。非常に広がりがあるのではないか。参加募集告知を「iemo」で行えば、かなりの応募があるのではないでしょうか。こうしたユーザーからいただいた意見は、コンテンツに還元していきたい。「iemo」経由で集めたユーザーの体験や声をコンテンツ化するというのは、いうなれば、エコシステムであり、新しい試みだと思っています。スマートフォンにデバイスが変わってから、ユーザーのアクションが早くなっています。例えば、イベントであれば申し込みボタンを押せばすぐ参加できるし、感想も写真付きですぐに投稿できる。スマホというデバイスで可能性が無限に広がっています。

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