Sat, December 16, 2017

オムニ化と海外展開で EC強化へ 有店舗アパレル

ブランド単位のO2O サイトを数多く展開するTSI グループ

国内の大手有店舗アパレルでは、ウェブチャネルに経営資源を投下してEC売り上げの拡大や全社的な収益力の向上、消費者視点でのオムニチャネル体制の整備を急いでいる。総合アパレル系ではTSIホールディングスやオンワードホールディングスが、カジュアル衣料系ではアダストリアが自社通販サイトと「ゾゾタウン」や「マガシーク」などファッションECモール由を合わせたEC売上高が前期までに100~200億円規模に到達し、今期からの3カ年計画でそれぞれ300億円規模への拡大を目指している。

企業ごとに取り組むべき課題は少しずつ異なるものの、ECの一段強化に向けて共通しているのは、リアル店舗とネットの融合を進める“オムニチャネル化”や“海外EC展開”で、3カ年におけるEC増収計画の最重要分野ととらえているようだ。300億円規模への拡大を狙うTSIとオンワード、アダストリアのEC事業の現状と成長戦略を見ていく。

TSI グループでは中国の富裕層向けEC にも商品を卸している

O2Oサイトがけん引役に

TSIホールディングスは、傘下でネット販売事業を手がけるTSIECストラテジーを軸にしたECの拡大を図っている。とくに、グループEC戦略のけん引役として期待しているが、商品の店頭受け取りや取り寄せ(試着予約)、店舗在庫の確認などができるブランド単位のオムニチャネルサイト(O2Oサイト)だ。
前期(2016年2月期)は、TSIECストラテジー管轄でECを展開するブランドのうち14ブランドのO2Oサイトを新たに開設し、O2Oサイトを25サイトまで広げた。
O2Oサイトの開設ラッシュとなったのは、基幹システムの刷新で新サイトを立ち上げやすくなったことに加え、2年前に先行実施した5ブランドのO2Oサイトの成果を検証できたことが大きいという。
とくに、「マーガレット・ハウエル」と「ナチュラルビューティーベーシック(NBB)」というテイストや価格帯が異なる主力ブランドを先行して開設したところ、ECとリアル店舗を併用する顧客の購買単価は、どちらか一方の販売チャネルだけを利用している顧客に比べ、前者のブランドではプロパー期で約2.7倍、セール期は約3倍に、後者もプロパー期で約2.5倍、セール期は約2.7倍となり、ブランドに触れてもらえる時間が多いほど購買額が高まる傾向が得られたことをグループの各ブランドが共有し、O2Oサイトの開設ラッシュにつながったようだ。
グループのブランドを横断的に扱うモール型の自社通販サイト「ミックスドットトウキョウ」とは異なり、O2Oサイトではブランドごとの集客施策が奏功したことや、各ブランド事業部と店舗のECに対する意識が変化したこともあり、前期のO2Oサイトの売上高予算比で40%増と好調に推移。「新規開設したすべてのブランドで成果が得られた」(柏木又浩TSIECストラテジー社長)とする。
今期(17年2月期)は、残りのブランドについてもO2Oサイトの開設を推進する。6月までにグループの東京スタイルが手がける「ヴァンドゥー・オクトーブル」や「ピンキー&ダイアン」など5ブランドを含む6ブランドでスタートする。
オムニチャネル化については、次のステップではブランドごとのスマホアプリを始める。展開ブランドの顧客は30代後半から40歳くらいの層が多いものの、すでにEC売上高に占めるモバイル比率は60%程度で、80%近くに上るブランドもあるため、前期はスマホサイトの利便性改善などに努めることでも売り上げ伸ばしており、今期はスマホファーストの開発・運用を加速。各ブランドのアプリはECだけでなく、ポイントカード機能やブランドサイトの役割も担うことになる。
アプリは6月から順次、スタートし、ファストメディアが開発した、専門的な知識がなくても簡単にアプリを制作できるサービス「yappli(ヤプリ)」などを採用。今期中に10~15ブランドでリリースを予定する。

アプリにはチャット機能も実装しており、ECでも店頭でもアプリがコンタクトポイントになるほか、店頭受け取りや問い合わせを含めてアプリひとつで完結するため、顧客の利便性も高まるという。

また、今期は越境ECや海外ECモールへの本格出店にも乗り出す計画だ。それに先がけ、前期の後半からはグローバル展開を前提にした、クラウド型のグルーバルECプラットフォーム「デマンドウェア」を、「ジルスチュアート」や「ヒューマンウーマン」「ヴィヴィアンタム」など5ブランドのO2Oサイトに採用している。
TSIECストラテジーでは、デマンドウェアを使った直営EC(O2Oサイト)での海外展開に加えて、現地のECモールへの出店を計画。パイロットブランドを数ブランド設定して出店し、テストを実施する。すでに、中国の富裕層向けECモールの「SECOO(セクー)」では前期末にトライアルを開始。「ナチュラルビューティー」や「ピンキー&ダイアン」など4ブランドのアイテムを卸し始めた。今夏には中国の大手ECモール「天猫国際(Tモールグローバル)」に出店するとともに、直営での越境ECを並行して展開する考えという。
なお、TSIグループのEC売上高は2016年2月期に前年比7.9%増の196億8400万円まで拡大している。グループ全体では、低収益ブランドの廃止といった構造改革を実施中で、19年2月期までの3カ年計画では、低収益ビジネスの再編が100億以上の減収要因となる見込みだが、ECでは約100億円の増収に向けて取り組むようだ。

オンワードホールディングスやアダストリアのEC強化策については本誌にて→購入はこちら

Share This :

Twitter Delicious Facebook Digg Stumbleupon Favorites More

Comments are closed.