“ジャパネットのEC”の答えが見えた 髙田旭人●ジャパネットたかた 代表取締役社長

ジャパネットたかたが通販サイトの全面リニューアルに踏み切った。これまで通販サイトで取り扱ってきた8500点の商品を600点弱に絞り込んだ上で全商品に45秒の商品説明動画をつけるなど商品説明を手厚くしたほか、サイト構成も全面的に変えて、目的の商品を検索しやすいようにしている。商品の絞り込みで配送リードタイムも大に短縮できる模様で当日配送商品も増やし顧客の利便性を高めたい考えだ。今回の大幅刷新で同社を率いる髙田旭人社長は「ようやくずっと探してきた『ジャパネットにとってのインターネットとは何か』という問いの“答え”のようなものが見えた」と話す。ジパネットが目指すネット販売とは──。

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ジャパネッ ト ならではの
インターネットの形とは?

販売商品を600点に絞る

――7月に通販サイトの大規模なリニューアルを行い、販売する商品を大きく絞り込みました。狙いはなんでしょうか。

もともと当社では、数ある商品の中で選び抜いたよい商品を皆様にご提案する「少品種多量販売」というコンセプトが強かったわけです。テレビショッピングなどではそうした商品を展開しています。ただ、インターネットだけはロングテールという特性を活かそうとベンダーなどから提案があったものを最低限のチェックをした上で、まずはアップしようというやり方を採ってきました。そのため、これまでは8500点くらいの商品を通販サイト上で掲載、販売してきました。ただ、そうしたやり方は当社のやり方ではないのではないかと常々考えていました。
では、『ジャパネットならではのインターネットの形とは何なのか』と考えていく中で、やはり、当社の強みを生かすためにもインターネットにおいても商品を絞るべきではないだろうかと。そして商品を絞ることでお客様に対して何を提供できるようになるのかと考え始めました。
例えば、掲載商品が少なければ、すべての商品に対してバイヤーが自分の担当商品をすべて細かくチェックでき、また、商品説明の精度もより深めることができるのではないか。全商品に説明動画を付けられるのではないか。商品をすべてあらかじめ在庫として持っておくことができるようになってお客様へのお届け時間を早くできるのではないかとか、コールセンターでの対応も集中でき、効率的になったり、商品の仕入れ条件もよりよくなってくるはずです。もちろん、販売をやめてしまう商品についての売り上げはなくなってしまいますが、それ以上にお客様にとってのメリットを提供できると思いましたし、当社にとってもメリットがあ考えました。
そうした考えのもと、7月5日からパソコン用サイト、7月12日からはスマートフォン用サイトを「Japanet senQua(ジャパネットセンカ)」としてリニューアルし、取扱商品数を600点ちょっとまで絞り込んでスタートを切りました。全面的なサイト刷新は2000年の通販サイト開設以来、初めてになります。ようやく探していた「ジャパネットにとってのインターネットとは何だろう」という問いに対する“答え”のようなものが見えたという感覚は持っています。

45秒動画を全商品に

――「答え」とは何ですか。

インターネットで商品を購入する際には様々なサイトを見ながら探すのが一般的です。一方、テレビショッピングは「掃除機はこれがいいです」と厳選した商品を提案するわけですが、“ジャパネットのインターネット”はその間だと考えています。100も200も商品を比較したくないが、5~6点くらいの中から選べるという、ほどよくインターネットショッピングを楽しめる世界を作りたいと考えました。

ラインナップをそろえることではなくて、厳選して掲載した商品をとにかく丁寧に伝えるということをインターネット上でも行っていくと。リニューアル後のサイトではすべての商品に45秒の説明動画を付けたことはもちろん、商品の特徴の説明もより充実させました。また、設置サービスや下取りサービス、分割払いなどに生じがちな疑問を説明する動画もアップしました。さらにほぼ全商品に対してコールセンターで使っているFAQを掲載したり、今までは掲載していなかったカスタマーレビューも始め、サイト上でのレビュー付けだけでなく、ハガキなどで寄せられる意見もこちらで集計してできるだけ当該商品のいい声も悪い声も載せています。

まだリニューアルして間もないタイミングであるため、効果検証などはこれからですが、商品説明の動画の再生数などは想定通りに伸びてきています。これからが勝負だと思っています。これまではテレビショッピング番組や新聞広告などを見てくださった方が通販サイトに来て頂き、購入して頂くという流れが多かったと思いますが、今回のリニューアルでは、そうした方はもちろん、そうではない人にもジャパネットのサイトで買って頂くという新しいチャレンジだと思っています。それはそんなに簡単な話ではないと思っていますので、常にレベルアップさせていきたいです。お客様にせっかくサイトに来て頂いても「何だ、全然、商品厳選されてない」と思われてはそっぽを向かれてしまいます。売れる商品と売れない商品も見え始めてきていますので、これから商品の入れ替えを進めて、常に掲載商品を厳選しながらサイトのレベルを高めていきたいです。
そのためにも常に新しい面白い商品を見つけてこなければならないため、バイヤー採用も強化しています。現在は20人ほどの体制ですが、年内までに新たに10~20人を採用していきたいと考えています。当社のバイヤーの仕事は独特で仕入れから販売、商品品質まで責任を持てるくらいのマインドを持っていないとなかなかできないと思いますので人数ありきではないですが、きちんと人員を確保してきたいと思っています。

配送スピード 劇的に早く

――商品の絞り込みに連動して、通販サイトの商品の配送スピードも速くなっているのでしょうか。

販売する商品すべての在庫を持ってよいという指示はすでに現場にはしていますので、近くすべての商品の在庫がある状態で販売できる体制が整うと思います。
それに並行して千葉・市川の物流拠点で7月末から新しいマテハン設備を導入しています。これによってこれまで手作業で行っていた商品の方面別仕分けが、当該商品をベルトコンベアに乗せるだけで自動的にできるようになり、効率や庫内作業のスピードも劇的に早くなります。そうなるとインターネットでその日の朝9時までの注文分はその日中にある程度のものは届けられるようになります。今、まさにそうしたスキームを作っていっているところです。秋くらいまでにはまずは関東圏のお客様から始めていきたいと考えています。

クルーズ旅行や店舗など新

手の試み

――今年はインターネットだけでなく、7月にクルーズ旅行の販売、9月には実店舗を開設するなど様々な挑戦を行います。

世の中に知られていないが良いものはたくさんあります。クルーズ旅行についてもそうで、一部では人気があるが知らない人はどこで申し込んだらよいのかなどもわからないはずです。そういう方に我々の目で見て、これなら価格に対して価値があると思えるものを提供したいと考えました。昨年末のキャンペーンの賞品がクルーズ旅行で、参加されたお客様に非常に喜んで頂けたこともありましたし。その時にも帯同した当社の社員が参加者の皆様とゲーム大会などを企画して隣の方と仲良くなったりなど好評だったこともあり、今後はそうした試みを行うことも考えており、ジャパネットの旅行を通じてコミュニティ作りなどにも貢献できればと思っています。今回の反応を見ながら継続してクルーズ旅行を販売していくか決めようと思っています。やってみてお客様に喜んで頂けるようならまたやりたいです。

9月下旬に福岡市内の商業施設「マリノアシティ福岡」内に設置する店舗「ジャパネットレクリエーションラボ」(所在地・福岡市西区小戸2‒12‒30)は店内で商品をお試し頂いたり、レンタル頂いたお客様に、アンケートやインタビューをして許可を頂いた上で、“お客様の声”を文字や映像で頂き、文字は通販サイト上のレビューに反映させたり、映像は番組内で率直な反応などの様子を使用させて頂こうと考えています。このほか、テレビ通販などで紹介する掃除機や高圧洗浄機、調理家電、デジタル家電、お客様のご都合で返品された中古品など10~20点程度の商品を販売します。また、実際にラジオ通販の収録なども行うラジオ放送ブースや通販番組のMCの気分を体験できるスタジオ体験スペースも設置するなどお客様と直接、触れあえる貴重な場になることを期待しています。

今期は過去最高売上高の1760億円を目指す

上半期は業績好調

――現状の業績面はどうでしょうか。前期から、前社長の髙田明氏に代わり、社長に就任し、新体制でスタートしました。そして今期の初めには前社長がMCとしても退任されましたが。

前期は今後に向けた様々な種まきと、父が抜けた中で新たな体制をどう構築していくかという土台作りを行ないました。結果的には両方ともよくやれたのではないかと思っています。業績面でも増収(前年比1.3%増の1559億1400万円)で、利益は今後に向けた必要な投資をしたため、減益でしたが大幅なものではなく、新体制での1年目としては悪くない着地だったのかなと思います。
今期の状況と致しましては上期(1~6月)までは順調です。掃除機の売れ行きが引き続き良いことに加えて今年はエアコンの立ち上がりもすごく早く順調です。また例年、そこまでは売れてはいなかった冷蔵庫も好調です。このほか、調理器具や白物家電全般も売れ行きは良く全体的に悪くない状況で前年上期比で売上高は20%増で推移しています。半年以上前から特定の商品に絞り込んで、在庫を確保して計画的な販売戦略を採っていることがこれらの商品ではうまくはまっています。また、販売する商品と展開する媒体との相性を今まで以上に見るようにしていることも功を奏していると思います。
ただ、確かに期初に髙田明前社長がMCとしても“退任”した影響は感じてはいます。特に父が前面に立ってやっていたテレビショッピングについては多少、壁にぶち当たっている感じはあります。業績的に極端に悪いというわけでないですがこれまでなら“MCの語り”でもっと売ってきたものが(高田明前社長が退任して)別のMCがやるとなかなか同じようにはいかないわけで、期待値に対して届いていないところがあります。もっと商品の良さをまっすぐに伝える力を付けて行かなければいけないですね。テレビの制作チームやMC陣は試行錯誤しながら、壁を乗り越えようとしています。前期は新聞広告や折込チラシといった紙媒体での通販が非常に好調で業績をけん引したのですが、この要因はこれまでトップダウンで決めてきた様々なやり方をボトムアップでチームで行う形に切り替えたことが大きいです。成果が出るまで昨年も上半期くらいまでは結構苦しみました。テレビの状況もそれと同様だと思っています。“産みの苦しみ”ですね。数字はまだこれからですが、チームの雰囲気は徐々に変わりつつあり、よい方向に向かっていると思っています。
今期は創業30周年という記念の年だということもあり、過去最高売上高を目指そうと、地デジ化前でテレビが非常に売れた2010年度の売上高を上回る1760億円を目標に掲げています。上期が順調に推移したことや下期の出足の7月も悪くなく、よいペースで今のところ、進んでいると思います。とは言え、売上面だけを追求するのでなく、企業として社会的意義についても取り組みたい。6月27日からは防災用品の売上金額の10%を熊本地震の被災地に寄付する試みを始めました。地震発生後も支援活動を行わせて頂いたが、もう少し継続的にやるべきだろうと考えました。9月からはテレビや新聞などでも防災用品を訴求して皆さんの防災意識を高めるきっかけになれればいいと考えています。また、ずっとアクセルを踏みっぱなしでキャンペーンばかりやってもお客様に飽きられますので、これからのためにもしっかりと地に足を付け、「商品の良さを丁寧に伝える」ということにもう1回、きちんと向き合っていきたいですね。

◇プロフィール

髙田旭人(たかた・あきと)氏
1979年長崎県生まれ。東京大学卒業後、証券会社を経て03年にジャパネットたかた入社。販売推進統括本部、商品開発推進本部の本部長などを歴任し、12年にジャパネットたかた取締役副社長兼ジャパネットコミュニケーションズ取締役に就任。15年1月よりジャパネットホルディングスおよびジャパネットたかたなどグループ数社の代表取締役社長に就任、現に至る。

◇取材後メモ

社長就任前からECの責任者として、「ジャパネットらしいEC」を追い求め続け、様々な試行錯誤を繰り返してきた髙田旭人社長ですが、今回のリニューアルでようやくジャパネットらしいECサイトに近づけたといいます。同社の強みであるテレビ通販で培った「このジャンルで一番良い商品はこれ!」という“目利き”をECにも生かす取り組みです。とは言え、髙田社長自身が言う通り、「勝負はこれから」。戦い方の異なるECという領域でどこまで「ジャパネットらしさ」が通用するのか。その行方を注目していきたいです。

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