Sat, October 20, 2018

「ファビア」のEC化率8割に 大久保武●オットージャパン 執行役員兼ファビア事業部門長

オットージャパンは、2016年秋冬シーズンから同社のオリジナルファッションブランド「FABIA(ファビア)」のブランディング強化に乗り出すほか、1 to 1コミュニケーションの本格着手など、同ブランドの成長スピードを速める取り組みが目白押しだ。13年2月の「ファビア」スタート時からブランドの舵取りを担っている大久保武執行役員兼ファビア事業部門長が語るECを軸にした事業展開の成果や今後の戦成長戦略とは。

ECという課題に挑戦しひとつの答えが出せた

ブランディングを強化

――「ファビア」はECを主戦場にしたブランドとして誕生しましたが、この3年間の成果は。

オットージャパンは30年の歴史がありますが、カタログで成長してきた会社です。2013年2月にスタートしたオリジナルブランドの「ファビア」では、ウェブのビジネスモデルを立ち上げるという本質的な課題に挑戦して、ひとつの答えが出せたと思っています。実際に、ファビア事業のEC化率は2016年2月期の約70%に対し、17年2月期には80%に拡大する見込みで、EC比率の目標は1年程度前倒ししています。

――売上高については。

ファビア事業は初年度に13億円を売り上げて、その後も2桁成長で推移しています。けん引役はモバイルです。売上高構成比で50%を超えてきています。スマホアプリも16年9月初旬時点で57万ダウンロードに達し、17年早々には100万ダウンロードが見えてきています。ただ、売上高については、ECではずっと同じ伸び率というのは正しくないと認識しています。ファッションブランドの成長は3年目から5年目が非常に大事ですし、ウェブ・IT投資を継続して成長スピードを加速度的に伸ばすことが必要になります。

――働く女性からも支持されています。

「ファビア」は商品の価値と価格のバランスも顧客から一定の評価を得ています。一方で、市場にはファッションブランドが乱立していて、自社オリジナルブランドの優位性の発揮と認知度強化は不可欠です。「ファビア」はウェブ完結型を目指すことで、消費者の目に触れづらくなってもいます。16年秋冬シーズンからはインスタグラマーを活用したブランド周知を図ります。リアル店舗についても、16年秋冬は2店舗のポップアップストアを展開しますが、17年はさらに力を注ぎたい部分です。――ファビア事業の収益性についてはいかがですか。「ファビア」も事業として単独黒字化を目指しますが、現状はブランディングや世界観を正しく共感してもらうことに重点を置いています。しばらくはブランディングを軸に振り切りきたいと考えています。

――ブランディング面では、16年秋冬シーズンから佐々木希さんを新ミューズに迎えました。

15年春夏から「ファビア」のミューズを務めてくれています松島花さんを継続起用しながら、佐々木希さんとの“ダブルミューズ体制”でブランドの認知を高めていく戦略です。「ファビア」は3周年を迎えましたが、定量調査においても認知度はまだ低く、希さんの知名度は非常に手助けになります。さらに、都会的でクールな着こなしが似合う花さんと、柔らかくフェミニンな印象の希さんというタイプの異なる2人を同時起用することで、キャラクターを使い分けて服を提案できるなどブランドとしての世界観も広がることは大きいです。2人が登場するウェブムービーを8月19日に通販サイトで公開しました。テレビCMなどの地上波には乗りませんが、インスタグラムやLINE、フェイスブック、メールマガジン、「ファビア」のスマホアプリといった自社で発信するメディアでは活用していきます。

1 to 1対応を加速へ

――ウェブマーケティングをさらに強化されます。

「ファビア」では7月26日にLINEの公式アカウントを開設して無料スタンプの配布を始めましたが、約3週間で累計の友だち数が300万人を超えるなど大きくタッチポイントが広がりました。今後は、“パーソナライゼーション”と“マルチチャネル”をキーワードに効果的なアプローチをしていていきます。

――パーソナライゼーションの取り組みについては。

LINEビジネスコネクトを使った1 to 1コミュニケーションを実施しています。LINEユーザーがお気に入り登録した商品が値下がりしたときなどにプッシュ通知を送るもので、同様の取り組みはマーケティングオートメーションツールを活用してメール配信も行っていますが、シナリオを増やしてそれぞれの顧客に合った情報発信を強化します。

――通販サイト自体のパーソナライズ化にも乗り出しています。

人工知能アプリの「センシー」を導入して画像認識によるレコメンドを実践していますが、現状では画像を並べているだけで消費者にとっては使いにくい部分があると思います。今後は、チャットのインターフェイス上で服のレコメンドをしたり、顧客の問い合わせに答えるカスタマーサポートも行っていきます。11月上旬をメドにシナリオベースの想定Q&Aをスタートしますが、チャットの吹き出し部分に花さんと希さんが登場し、パーソナルスタイリストのように答えてくれる見せ方を想定しています。また、人工知能アプリを提供する会社の開発状況にもよりますが、2017年中には自然言語処理で回答できるサポート体制を整えたいですね。

――ウェブマーケティングでは“マルチチャネル化”をキーワードに掲げています。

従来は、メールならメール、LINEならLINEといった具合に、ひとつのメディアを介してコミュニケーションをとってきました。今後は、例えば、カート放棄メールを送っても開封していない会員にはフェイスブックでカートに入ったままの商品を広告として表示したり、ショートメッセージを活用して商品の配送状況を知らせたりします。また、通販カタログを届けたユーザーの購買状況を把握して、購入に至っていない顧客にはマーケティングオートメーションツールを使ってフォローメールを送る取り組みも16年秋冬シーズンから始めます。各種メディアをバラバラにではなく、横串にして顧客コミュニケーションのマルチチャネル化を実現したいです。

――お知らせなどが重複することはないのでしょうか。

LINEでコミュニケーションがとれるユーザーにメールは送らないなどの制限は設けます。バランス感覚が大事で、顧客にとって“心地よいパーソナライゼーション”を目指したいですし、とくにファッションECの競合に先んじてコミュニケーションのマルチチャネル化で成果を出したいです。

紙媒体はマーケティングツールの役割も担う

コレクションラインを投入

――ECを主軸とするブランドにとって、通販カタログやルックブックの役割は何でしょうか。

紙媒体はマーケティングツールとしての役割も担っています。とくに、ブランドのコンセプトや世界観を表現した16年秋冬のルックブックは従来よりも多く配布しています。活字も載ってはいますが、当社としては“エモーショナルバリュー(感情にうったえる価値)”をファッションブランドとして提供することを目指しています。ルックブックに共感したユーザーがパソコン版のサイトやスマホサイトを訪れていますし、通販カタログやフライヤーを届けるとウェブの売り上げも連動して伸びるなど紙媒体の効果は出ています。

――リアルショップ展開の詳細を教えてください。

16年秋冬シーズンはポップアップスト大久保武(おおくぼ・たけし)氏1989年3月関西学院大学経済学部卒、同年富士銀行入行、90年ソニー入社、92年にソニーアメリカ赴任、00年SonyStyle.com赴任、09年オットージャパアを都内に2店舗開設します。10月6~19日は渋谷駅・東急東横店西館1階SHIBUYAスクランブルⅠポップアップステージAに、11月3~23日までは渋谷ヒカリエShinQs4階イベントステージ4に「ファビア」の期間限定店を構えます。17年はさらに力を入れたいです。

――実店舗の展開強化で商品政策に影響出てきますか。

店舗展開に合わせて、「ファビア」では10月からは従来よりもワンランク上のコレクションを初めて投入します。裏地にこだわって脱いでもおしゃれな商品など、一歩大人の女性になれるアイテムを中心に約20型を展開する予定です。ボトムやトップス、ワンピース、アウターなどコレクションでコーディネートが組めるようにし、通販カタログやウェブでも特集を組みます。コレクションラインの価格は通常アイテムに比べて20~30%高い設定になります。

ミューズのセレクト品も

――16年秋冬シーズンのMDの特徴を教えてください。

16年秋冬は、“ファッションが日常にもたらすささやかな楽しさや心地よさ”をテーマに、ベーシックデザインや着こなしやすさに、存在感のある素材やエッジの効いたアクセントをプラスしたアイテムを提案します。秋口は「クールフェミニン」を打ち出して、少しキリっとしつつも可愛らしい商品や、素材も光沢のあるものをとり入れ、クールであっても丸みのあるアイテムを展開します。秋は「アーバンボヘミアン」を切り口に、フェミニンさの中に少しエスニック調をプラスします。冬は「ウォームコントラスト」をテーマに、ウィンターパステルを使うことで重みを出さずに軽さと丸みを出していきます。

――ファッション業界全体ではいかがでしょうか。

「ファビア」は全体として甘すぎないフェミニン、辛すぎないフェミニンのゾーンを狙っています。ファッション市場全体を見ても、そうした傾向にあると思います。働く女性の幅も広くなっていますし、ハイファッションを着てバリバリ働く女性だけでなく、仕事を楽しみながら続ける女性も多いですよね。「ファビア」はそうした層に向けて、手に取りやすい価格帯、テイストのアイテムを開発して、オンでもオフでもファッションを楽しんでもらいたいと思っています。

――ダブルミューズの企画もあるようですね。

「ファビア」ブランドの3周年を記念して、2人のミューズには16年秋冬の一押し商品からオリジナルカラーをセレクトしてもらいました。丸みのあるワンピースや、配色ニットコーディガン、オフィスでも着用できる薄手の羽織ものなど、花さんには4点、希さんには5点、選んでもらいました。ミューズによるセレクトアイテムを展開するのは今回が初めてです。

――16年秋冬での強化商材などはありますか。

16年秋はニットを強化していて、暖かく吸放湿性に優れた混紡糸として知られるミリオンホットを使用したトップスやニットワンピースなどを展開します。また、15年の冬は暖冬の影響でアパレル各社はアウターの販売に苦戦されましたが、「ファビア」はアウターの消化率が高かったのが実情です。16年冬シーズンも各ブランドはアウターを作り控えているようですが、「ファビア」はアウターの型数は減らしません。商品ごとの奥行はそれほど積みませんが、ラインアップはしっかりとそろえることにしています。

――今後、強化する商品カテゴリーはありますか。

「ファビア」ではワンピースが商品構成比、売り上げ構成比ともに高いのが特徴ですが、ブランドコンセプトでもある働く女性を応援するためにも、シューズを強化します。履き心地と格好良さを両立した新コンセプトの靴を17年春夏シーズンから投入したいと思っています。靴のポテンシャルは高いと見ています。

◇プロフィール

大久保武(おおくぼ・たけし)氏1989年3月関西学院大学経済学部卒、同年富士銀行入行、90年ソニー入社、92年にソニーアメリカ赴任、00年SonyStyle.com赴任、09年オットージャパン入社。10年同社マーケティング営業部門長、11年執行役員兼マーケティング営業部門長、14年執行役員兼ファビア事業部門長。

◇取材後メモ

同社はカタログで成長してきた会社ですが、2013年に主力媒体の大幅刷新に踏み切ったのと同時に、初めてECに軸足を置いた「ファビア」を立ち上げました。ターゲット層である30~40代女性の開拓には欠かせないデバイスとしてスマホ対応に力を注ぎ、通販業界では初めて電子透かし技術を採用したカタログを発刊してスマホから商品ページに誘導する仕掛けを試したり、専用アプリにはCM風ムービーが簡単に作れる機能を導入したり、雑誌感覚でトレンドをチェックできる無料ウェブマガジンを展開したりと常に意欲的です。大久保執行役員が「ひとつの答えが出せた」と言うように、同ブランドのEC化率は今期、80%に拡大する見込みです。今後はさらにウェブマーケティングを強化し、成長速度を速める同社の展開に注目が集まりそうです。

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