Thu, August 16, 2018

「独身の日」の速報&海外EC成功のポイントとは? 海外でのEC展開、現状と今後

今年の独身の日も「Tモール(天猫)」でのセールでは流通総額が前年比3割増となる1.9 兆円に達するなど相変わらずの勢いを見せたようだが日本勢は明暗分かれた(画像は独 身の日当日の「Tモール」のトップ)

日本のネット販売実施企業にとってもだいぶ身近なものになった海外へのEC展開。消費意欲が旺盛な消費者を抱える海外マーケットは日本の事業者にとっても挑んでみる価値はありそうだ。また、越境ECを支援する各種サービスやインフラも続々と登場し、以前よりは格段にスタートしやすくなっている。とは言え、文化も商習慣も異なる海外でのECはもちろん、たやすいものではなさそう。11月11日に行われた中国最大のECセール「独身の日」における日本勢の現状を通じてすでに海外でのECを展開を始めている日本企業の状況を踏まえつつ、今後、海外でECを展開し成功を収めるのは何がポイントとなるか。海外でのEC展開の現状と今後について見ていく。

各社好調も成長は鈍化? 税制変更など影響か


【中国「独身の日」セールの速報 注目すべき日本勢の状況は?】

今年も中国における年間最大のネット販売セールが11月11日の「独身の日」に行われた。アリババグループが運営する中国最大手の仮想モール「Tモール(天猫)」でのセールでは流通総額が前年比3割増となる1.9兆円に達するなど相変わらずの勢いを見せている。アリババによれば今年の「独身の日」のセールにおける海外勢(越境EC)の国別売上トップは日本だったとしており、日本からも多数の企業が参加し恩恵を得ているようだ。とは言え、4月に越境ECの税制変更がされており、扱う商材によってはそのことが逆風になったことも懸念される。加えて、日本郵便のEMS(国際スピード郵便)の値上げ、さらには円高の進行も事業者へのコスト増として重くのしかかったようだ。そのため前回の「独身の日」で躍進した企業の中でも明暗が出たようだ。注目すべき日本の通販実施企業の今年の「独身の日セール」における状況を見ていく。

トーキョーオタクモードではアリババが提供するVR技術を使った販促を実施。専用 の装置を目元に装着するとリアル店舗の360度画像が映され、ユーザーは東京・秋葉 原の店舗でのショッピングを疑似体験できる

保税倉庫のぬいぐるみがヒット

「天猫国際(Tモール・グローバル)」経由で海外向けにアニメやゲームのキャラクターグッズなどの中国向け越境ECを行っているトーキョーオタクモード(TOM)では今年の「独身の日」の戦略として、売り上げではなく利益を重視した。「円高やEMSの値上げにより同じ商品が去年の1.3倍の価格になっている」(薮崎宏晃China eCommerceManager)ためだ。昨年は全商品20%引きで販売したが、今年は10%引きと割引率を変更。その結果、今年の「独身の日」の売上高は前年比微増、利益は2.5倍と、当初の計画はクリアした。
売れ筋の商品はうさぎのぬいぐるみ「ぽてうさろっぴー」だ。「ぽてうさろっぴー」はもともと日本のゲームセンター用に展開されていたもので、色や大きさで複数の種類があり、ポシェット状のものもある。「しろっぴー」というキャラクターのぬいぐるみは在庫していた250個が事前の予約期間内に完売の2週間で完売。「ぽてうさろっぴー」の小さなサイズで赤い目のタイプも人気で、通常の月間売り上げの5倍程度が売れた。ポシェットもヒットし普段の月商の3倍を売り上げた。
「ぽてうさろっぴー」など売れた商品の多くはアリババが中国に構える保税倉庫から出荷された。保税倉庫を使うと日本から送るよりも送料が安くなり、さらに届くまでのリードタイムも短くなるため、消費者からも人気がある。TOMは10SKUを保管していたが、「独身の日」当日は保税倉庫の商品のコンバージョン率は通常時の5倍に伸びた。この実績から「売り上げを伸ばすには保税倉庫を使うというのは不可避」(薮崎氏)という。
しかし、保税倉庫の活用も一筋縄ではいかないようだ。同社によると、アリババの保税倉庫を使うには事前の審査が厳格で、輸送には船便を使うため入庫まで時間がかかる。実際に保税倉庫に送った後も、「到着する港を変えてほしい」という連絡がアリババから入り、急きょ対応に追われたこともあったという。薮崎氏も「審査から入庫されるまでのリードタイムも読みづらい」と明かす。

「保税倉庫に預けた商品は、一定の期間内に販売しなくてはいけない在庫の割合が決まっている」(鄧澤恒ChinMarketing Specialist)とし、期限が来て、仮に定められていた量が売れ残っていればその商品は廃棄されるという。「日本に送り返すことは禁止されている」(鄧氏)そうだ。
「独身の日」の前に、TOMが在庫を補充できる最後のタイミングが8月19日。その段階で保税倉庫に預ける商品については売れる量を予測して発送した。しかし蓋を開けると予約販売の時点で完売した商品もあり「利益を優先してコンサーバティブ(控えめ)に在庫を見積もった。今から考えるともと保税倉庫に在庫を積んでおいてもよかった」(薮崎氏)と悔やむ。保税倉庫を使うにあたって、このあたりの需要予測も難しいようだ。
また、今回の「独身の日」に合わせて、アリババが提供するVR(仮想現実)技術を使った販促を実施した。これはアリババが世界で6社を選んで提供し、日本ではマツモトキヨシとオタクモードの2社だけ。他にはアメリカのメイシーズやコストコなどが名を連ねている。

このVRの仕組みは、専用の装置を目元に装着すると画像にリアル店舗の360度画像が映され、ユーザーは中国にいながら、各国の土地でショッピングを疑似体験できる。目の焦点を合わせるだけで画面内の商品を購入することも可能だ。
アリババではこれを「独身の日」目玉企画として専用デバイス50万台を用意して会員に配布した。11月1日から先行してVR購入を開始。オタクモードはEC専業のためリアル拠点がなかったが、東京・秋葉原の実店舗を借りて商品を陳列し、一時的な店舗を特設した。35SKUで臨んだところ、「毎日オーダーは入ったが、爆発的には売れなかった」(同社)としている。

開始30 分で前年突破、日商13倍

売れ筋となっている日用品を販売する事業者はどうか。
アスクルが運営する日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」における「独身の日」の売り上げは出店するアリババの越境仮想モール「天猫国際」の店舗で売れ筋のスキンケア商品を軸に開始早々から売り上げを伸ばし、セールスタート後、30分間で昨年の「独身の日」の売上実績を超える勢いで推移し、最終的な日商は昨年比で約13倍となり、好調に着地したようだ。
「ロハコ」ではアリババが開設した「独身の日」セール用の特集サイト内でバナー広告やリスティング広告、クーポンでの値引きなどを実施。また、「独身の日セール」前の販促策として「ロハコ」で商品を販売するメーカーなどと共同で都内、また、直近では6月に上海でブロガー向けの商品体験会を実施したり、11月3日には「Tモール」のアプリ上の動画配信ツールを活用し、上海の有名タレントブロガーを東京・豊洲のアスクル本社に招待し、2時間に渡って「ロハコ」商品の紹介を行うなどの試みを実施した。ちなみに当該動画には配信した2時間で273万の「いいね」がついたという。
こうした販促策の効果も加わり、ユニチャームのウェットティッシュ「シルコット」やロートのシミ対策美容液「メラノCC」、資生堂の浸透美容液ヘアマスク「fino(フィーノ)」、ハーバー研究所の「美白福袋」などスキンケア商品を軸に売れ行きを伸ばした。「ロハコ」は昨年9月に天猫国際に出店。売れ筋の化粧品やヘアケア商品、生理用品など40品目に絞って越境ECを開始し、11月11日を前に取扱商品数を300点に拡充して初の「独身の日」セールに臨んだが、「越境ECを開始して間もなく、準備期間がなかったこともあり中国の消費者ニーズへの対応ができなかった」として目玉商品が早々に完売してしまうなどで集客面に影響が出て、期待値に届かなかったよう。今年は「(昨年の)反省と消費者ニーズを踏まえ、夏場から準備を進めた結果、売れ筋のスキンケア商品などを中心にしっかり品ぞろえすることができた」(同社)ことで好調な結果につながったとしている。

1日で“3カ月分”目薬などが売れる

ケンコーコムの売り上げは昨年とほぼ同等の結果に。通常の日と比べて3カ月分程度の売り上げだった。目薬などの一般用医薬品の販売が好調という。販促としては、クーポン配布、SNS配信などを実施した。最近の中国向け越境ECについては、「仮想モールから出店店舗への要請に基づく価格競争の激化が、消費者の購買行動を活性化させており、仮想モール全体の高い流通額につながっている」と分析。また、課題としては、来年5月に予定されている税制変更を挙げた。

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