Thu, August 16, 2018

「.shop」はEコマースとの親和性が高い 塚原廣哉●GMOドメインレジストリ 代表取締役社長

インターネット上の住所と言われるドメイン。2008年にドメインが自由化されたことで、従来からの「.com」や「.jp」などに加えて新たな文字列が使われ始めている。GMOインターネットグループのGMOドメインレジストリは2016年1月、新しい文字列の「.shop」を落札した。専門の小売事業者を通じて、新しいドメインの提供を世界に向けて行っている同社の塚原廣哉社長が語る「.shop」の特徴や強みとは──。

商品カテゴリーを占領できる

すべて過去最高で好調な出だし

――「.shop」を今年1月に落札しました。

ECがどんどん伸びている中で、ECのためのドメインが今まではありませんでした。そこで「.shop」に目を付けて2009年にGMOドメインレジストリという会社を作りました。そこから足掛け7年でこのドメインをとってまさに今、世界に進出しているところです。

――「.shop」はドメインが自由化された後の新しいTLDという位置付けです。

簡単に用語について説明をしますと、「http://gmo.com」というURLがあるとして、その中で「gmo.com」がドメインで、インターネットの住所です。そのうち「.com」がトップレベルドメイン(TLD)と呼ばれており、例えば「.jp」などがTLDにあたります。そして「gmo」の部分がドメイン名(セカンドレベルドメイン)です。ドメインを購入する場合は「(. ドット)」の左側を購入していることになります。当社が競売で入札した「.shop」は「新gTLD」と呼ばれており、新しいジェネリック(一般的)なTLDという意味です。

「.com」「.net」「.org」「.jp」といったTLDは以前からあるため、覚えやすい良い文字列が空いていないという問題があります。それを改善するために始まったのが新gTLDです。ドメインが自由化され、実際に1930件のドメインが世界中で申請されました。「SHOP」をはじめ「HOME」「BOOK」「APP」「WEB」「BLOG」などです。こうした文字列が2013年の終わりから徐々に世界中に登場し始めたのです。

――新gTLDの中でも「.shop」は期待値や評価は高いそうですね。

実際に多くの記録を破っています。一般的にドメインは3つのフェーズに分けて解放されています。1番目が「商標権者」で、商標を持っているところにドメインを販売する期間を設けています。トヨタであれば「toyota.shop」、GMOであれば「gmo.shop」という具合に商標を持っているところに商標とマッチングする文字列を販売します。商標権者向けの最多申請数はこれまで「.london」の799件でしたが、「.shop」はそれを1.5倍近く上回り1182件の申請がありました。
商標権者の次に「先行登録」の期間があり、より良い文字列をプレミアム(割増金)を支払ってでもほしいという方々に販売するのです。今までは「.tips」というドメインが申請料売り上げで約6000万円を記録していましたが、「.shop」は1.5億円で最高売り上げを更新しました。この先行登録の次のフェーズが「一般登録」です。全世界向けに登録を募るのですが、最初の24時間の登録件数はこれまで「.online」が3.8万件で最多でしたが、「.shop」は5.6万件を記録し、その後1カ月半程度で9.2万件にまで増えています(※2016年12月9日時点で累計登録件数10万件を突破)。すべて過去最高で非常に好調な出だしです。

――何カ国から申請がありましたか。

121カ国から申請を頂戴しており、一番多いのはドイツです。ヨーロッパはそもそもドメインについて歴史があり、「.shop」についても非常に強いです。日本は国別で4位です。

当社が「.shop」から左のドメインを世界中のお客様に販売していますが、直接販売することはルール上できません。我々と消費者の間に小売事業者に当たる「レジストラ」が存在します。GMOのグループで言いますと「お名前ドットコム」が国内最大のレジストラになります。世界には同じような会社が2100社あります。当社はそうしたレジストラに卸売をして、そこからエンドユーザーにドメインを販売するという構図です。

直感的にどんなサイトか分かる

――「.shop」を利用する企業のメリットは何ですか。

ズバリ言いますと、商品カテゴリーを占拠できるということです。例えば「toyota.shop」であれば、トヨタのサイトだということは分かります。しかし仮にトヨタが「car.shop」というドメインを入手した場合、そのウェブサイトにおいて同業他社の商品は除いて、自社の車だけを掲載することができます。つまり自社が所属する業界のカテゴリーを占拠できるわけです。言い方を変えると、競合を排除できるのです。カテゴリー名を取りに行くということはインターネットのビジネスをする上で非常に重要です。「.shop」は特にEコマースとの親和性が高く、「car.shop」「beer.shop」などを取ることで競合を排除して自分の商品だけを売ることができます。
さらに直感的にどういうウェブサイトかが分かるというメリットもあります。「rice.com」であればお米のサイトであることは分かりますが、産地についてなのか品種についてなのか、あるいはお米の協会のサイトについてなのかは分かりません。これが「rice.shop」であればドメイン名を見ただけでお米を“売っている”サイトだと直感的に分かります。変なウェブサイトに行くことはないだろうという安心感にもつながります。

――集客面で効果はありますか。

日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、いまだに欧米では12~25%はドメイン名からの直接流入です。お米
探している場合に「rice.com」などとそのまま打ち込むのです。「タイプイン・トラフィック」と呼ばれるものですが、そうした直接打ち込む文化が欧米では残っています。グーグルが強化したことで検索は使いやすくなったのですが、いまだに直接流入は大きなシェアを占めており、分かりやすいドメインというのが非常に重要です。長いドメインであれば、打ち込むのに時間がかかり、そもそも覚えていられません。ですから「rice.shop」や「diamond.shop」などカテゴリーを抑えるのが大事になります。

一例を挙げると、「japanrice.shop」というドメインを取得すると、名前を覚えやすく集客にもつながります。世界中の顧客に拡販できるチャンスにもなります。ドメイン名はインターネット上の住所で、不動産のようなものです。より良い文字列は、銀座の一等地に店を構えるような意味合いがあります。そのため集客力のあるドメイン名は世界中で高値で取引されます。例えば「slots.com」は6億円で、「whisky.com」は3.4億円で販売されました。

――SEO対策の面では有効でしょうか。

その可能性はあります。ただ、グーグルはここのアルゴリズムを発表していません。グーグルとしては、新ドメインも既存のドメインも公平にアルゴリズムに組み込むということは発表しています。

――「.shop」を使う上でのコストは。

これは小売事業者によって異なるのですが、「お名前ドットコム」の例で言いますと、年間990円です。「.com」と同じ基準です。非常にお求めやすい金額で提供しています。他の小売事業者でも千円前後です。ですから頑張ってたくさん売らないといけない(笑)。ただし、ライフタイムバリューが非常に長い。ドメインは住所ですので、一度使うとなかなか変えることも難しいですし、いいドメインであれば変える必要もない。そのためリテンションは非常に高くなります。特にお店で使われるものに関してはずっとお使いいただけるのではないでしょうか。

――「一般登録」の場合の手順は?

「.com」と同じで、小売事業者である「レジストラ」を通じて、名前・住所・電話番号・カード番号といった一般的な情報を登録いただき、ドメインを検索してカートに入れて決済していたくだと、当日から使えます。

世界の巨 人と戦って勝つことができました

複数ドメインの併用も

――「.shop」の権利を49億円で取得したということですが、何社で競り合ったんでしょうか。

8社です。その中にはグーグルやアマゾン、中国のJDドットコムといった企業がおり、世界の巨人と戦って勝つことができました。
49億円が高いと思われるかもしれませんが、新gTLDの価値ランキングで1位となった「SHOP」に次いで2位に入った「WEB」は、6月末にオークションがあり、135億円で落札されました。「SHOP」の2.5倍以上で落札されたのです。そこと比較すると安く買えたと思います。半永久的に当社がこの権利を持ちます。「.shop」の左側は無限に近い組み合わせが可能になります。

――「.shop」の利用事例について教えてください。

海外ですと英国のケンブリッジ英語学校が「cambridgeenglish.shop」というドメインでウェブサイトを運営しています。ギリシアでは健康食品会社が「mastic.shop」を、ドイツでは高品質塗料専門店が「wo-we.shop」を、ベトナムではオーガニック商品を提供している会社が「nongsan.shop」を運営しています。日本ではお芋のスイーツ通販の会社が「lapoppofarm.shop」を開設していますし、準備中のサイトでは鎌倉の味噌屋が「miso.shop」というドメインを使います。

――先ほどの“カテゴリーを占拠する”という意味では、「miso.shop」は分かりますが、「lapoppofarm.shop」はむしろ「imo.shop」や「sweets.shop」などのほうが良いのでは。

併用というやり方もあります。Eコマースの利点として、実店舗とは異なり、入口をいくつも増やせます。「lapoppo」だけでなく「imo」など複数のドメインを使い、検索してクリックされるとすべて一カ所に飛ぶ「リダイレクト」という機能が使えます。これをすることで窓口が1つでなくて複数作れます。例えば芋を世界中でやりたいとすれば「imo」「potate」など様々な言語でドメインを取って、海外の言語に応したサイトにするという戦略も可能です。

――複数のドメインがあった場合、メインとなるサイトで使っているドメイン以外はどういう状態なのでしょうか。

転送用のドメインという扱いです。「oimo.shop」をクリックしたユーザーを「lapoppofarm.shop」に飛ばすことができます。もちろん別にサイトを作っても良いのですが、すべてを1つのサイトに集約することも可能です。ウェブサイトは必ずしもドメインの数だけ必要がないということです。

――集客コストとして年間1000円程度を支払って、複数のドメインを獲得するという戦略もあるわけですね。

Eコマースをやっている方々はむしろそうした傾向が非常に高い。仮想モールに出店している店舗でもそうした文字列を取って、リダイレクトさせるといったこともあります。あとは東南アジアなどフェイスブック(FB)が主流になっている地域では、FBのドメインが非常に長いため、短いドメインを取ってすべてFBにリダイレクトさせるという使い方もあります。そして、ドメインはすべて“早い者勝ち”です。

――こうしたドメインの事情について知らないEC事業者も多いのでは。

そうなんです。その活動が足りていません。ドメイン業界はある程度認知度が広がっているので、今後はEC事業者の方々と何ができるかです。ヨーロッパでは2017年にEC業界向けに「.shop」の啓蒙活動を大々的に行っていく予定です。

◇プロフィール

塚原廣哉(つかはら・ひろや)氏 1983年東京都生まれ。11歳から19歳まで米国と仏国で過ごす。国際基督教大学教養学部卒。同大学3年次に米ビバリーヒルズに本社を置く不動産投資会社社長に弟子入り。翌年、日本法人設立に伴い代表取締役社長に就任。2006年同社退任後、国内で投資会社を設立。2008年投資ファンドへ株式を売却後、親交のあったGMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏に師事し、GMOインターネット株式会社へ入社。2009年7月GMOドメインレジストリ株式会社設立に伴い同社の取締役に就任、2012年10月現職となる代表取締役社長に就任する。

◇取材後メモ

塚原氏は、ドメインの自由化に伴って誕生した新gTLDの「.shop」をグーグルやアマゾンらIT業界の巨人と競り合って手にしました。これまで日本の企業が世界で通用するようなドメインの文字列を持ったことはありません。「.com」「.net」「.org」など有名なものはすべてアメリカが持っています。そういう意味では快挙と言えるかもしれません。「.shop」は何かを販売しているサイトであると分かるため、通販サイトとの相性も良いようです。ただ、塚原氏も指摘するようにドメインは早い者勝ち。海外の企業も良い文字列を狙っています。他社に先んじて良いドメインを手に入れるにはスピード感も大事になりそうです。

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