Thu, August 16, 2018

変化する健食市場、 「新制度」は使うべきなのか? 機能性表示食品制度の行方

安倍総理の肝煎りで2015 年4 月、「機能性表示食品制度」が始まった。だが、開始から2年、早くも制度が破たんしつつある。制度は企業の自己責任による「届出制」が基本。だが、早くも〝実質審査〟の様相を呈し、届出から公表まで1年近くを要する企業が増えている。企業は受理の遅れから販売計画が練れず、最悪の場合、制度へのこだわりを捨てて「いわゆる健康食品」に回帰するおそれすらある。ネット販売事業者は新制度を使うべきなのか。

トクホよりリーズナブル

制度の中身を簡単に振り返りたい。制度は、企業の自己責任による「届出制」を採用している。この点、国による「許可制」のトクホ(特定保健用食品)と異なる。許可に2年も3年もかかるトクホよりいち早く市場で販売できるのが売りだ。
届出では、自ら健食の機能性や安全性に関するエビデンス(科学的根拠)を集め、これを評価した上で「機能性表現」も自分で定める。ただし、表現できるのは「健康の維持・増進」に関する表現のみ。「がんに効く」「動脈硬化に作用する」など「疾病の治療・予防」に関する表現は当然行えない。
機能性評価は、「研究レビュー」と「臨床試験」の2 通りの選択肢がある。「研究レビュー」はすでにこの世の中に存在する健食原料のエビデンスデータ(論文)を使い、総合的にその機能を判断するもの。評価費用は幅があるが高くても数百万円ほどでできる。「臨床試験」は自社製品を使い、個別に評価するもの。臨床試験にかかる費用など数千万円ほどの投資が必要になる。とはいえ、トクホが「臨床試験」の費用を含め数億円の投資が必要になることを考えると、かなりリーズナブルに制度を活用できる。

トクホの許可件数、2年で抜く

これまで届出が公表されたのは615件(1月12日時点)。機能性表示の内容は、「肌の保湿」「疲労感の軽減」「目の調子を整える」「記憶力の維持」「関節サポート」「睡眠の質の向上」など17分野。トクホでも認められている「体脂肪」「血圧」「血糖値」に作用する機能も表示できる。
導入から2年、制度は早くも数の面でトクホを抜いている。1991 年に始まったトクホはすでに四半世紀が経過。だが、今も販売されている商品数は販売準備中のものも含めわずか412件にとどまる。一方の機能性表示食品は615 件だ(販売前商品を含む)。

広がりをみても、「成分数」では機能性表示食品が76成分に対し、トクホは63成分。成分の数こそ拮抗しているが、トクホの中身は素材の異なる食物繊維や乳酸菌が大半を占めている。活用企業は機能性表示食品の193社に対しトクホは201社。ただ、機能性表示食品は地方の中小企業や生鮮食品関連事業者など多くの事業者が利用する。
市場規模は、トクホは07年の6800億円をピークに減少。昨年は拡大に転じたものの、約6300億円にとどまる。また、その中身を見ても「飲料水」が約2300 億円、乳製品が約3200 億円を占めている。「飲料水」の大半はお茶、「乳製品」の多くはヨーグルトであり、〝お茶とヨーグルとの制度〟との批判もある。機能性表示食品の市場はまだ数百億円規模とされるが、販売前の商品が多くを占めており、数年でトクホに迫る市場規模に迫る規模になることが予想されている。

ネット販売事業者の利用、わずか1%

ネット販売事業者の活用は進んでいるか。本誌が独自の集計で活用企業を分類したところ、6割を占めたのが「メーカー・流通・卸」だった。一方の「通販」は2 割ほどにとどまる。
ただ、店頭市場で展開する「メーカー・流通・卸」はシリーズものやフレーバー違いで商品を横展開しているケースが目立つ。同じヨーグルトでも5、6商品を届出しているところもある。「通販」は、錠剤・カプセル形状の「サプリメント」が中心。単品訴求で展開するケースが多く、奮闘している。

問題は、ウェブ中心に展開する企業の動向だ。いまや通販にウェブは欠かせない時代。多くの企業がウェブマーケティングを展開しているが、ウェブの比重が高い企業に限って独自に集計したところ、その比率はわずか1%ほどにとどまっていた。制度の導入で市場が活況を呈す中、ネット販売事業者のみその波に乗り遅れているといえる。
そうした状況の中で積極的に活用する1社がハーブ健康本舗だ。16 年10月期の売上高は約30%増の39億円。最近では新聞やテレビの活用も進めているが、軸足はウェブに置く。
主力商品はダイエット訴求の「モリモリスリム」シリーズ。機能性表示食品では同じくダイエット訴求の「シボガード」「シボヘール」、睡眠関連の「よくネ~ル」の届出が受理されている。「シボガード」のみ機能性を臨床試験で評価。今後も積極的に制度を活用する姿勢をみせている。

ステップワールドはダイエット訴求の酵素ドリンク「ベジライフ酵素液」を中心に展開、民間信用調査機関の調べでは16年3月期の売上高が9 億5000万円となっている。機能性表示食品も同じくダイエット訴求の「ヘラスリム」を展開する。
山田養蜂場グループのナチュラルガーデンは、幅広い商品ラインアップをウェブを中心に展開している。機能性表示食品を取得したのは肌の保湿をうたう清涼飲料水「白酵ヒアプラ」だ。

広告表現は縛られる

ネット販売事業者で活用が進まない背景には「広告表現」の制限があるだろう。テレビ、新聞などの紙媒体は年々考査が厳しくなるが、相対的にみてウェブ広告の審査は緩い。一方、届出を行った場合、機能性表示はできるものの、「届出表示」を逸脱しないよう制限もされる。
また、表現自体も絞られる。一例がサントリーウエルネスの「セサミンEX」だ。15年4月の制度開始直後に届出。受理に1年を要したことから、背景に消費者庁と複数回のやり取りを経てようやく受理にこぎつけたことが想像できる。当初、「抗酸化力」という広い範囲の機能表示を目指したが、結果として受理された表現は「抗酸化力を向上させ、日常的に疲れを感じる方の寝つき、眠りの深さ、目覚めという体調の改善に役立ちます」というもの。〝抗酸化力〟という表現こそ守ったものの、全体の印象から受ける表示内容は「睡眠の質の向上」だ。
一方、明確なエビデンスを持たない「いわゆる健康食品」では、〝元気の源〟といったイメージで展開し、マルチファンクションクレーム(多機能表示)や「ベースサプリメント」を目すものが多い。間口を広くとり、多くの消費者にアプローチできるためだ。機能性表示食品は表現が絞られることでそのターゲットも絞られてしまう。ウェブ中心で展開する企業であればその影響を受ける事業者も多く、「知名度もなく、商品で売り込まなければいけない成長期にわざわざ表現の自由度を自ら制限したくない」(ネット販売事業者A社)、「ターゲットや媒体に合せて、表現のアプローチを変えられる『いわゆる健食』のほうが展開しやすい」(ネット販売事業者B社)といった考えが支配的だ。

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