KDDIが仮想モールをリニューアル ――買収した2モール統合、丸井との協業も

DeNAショッピングのサイトでは新モールへの移行を告知

KDDIと子会社のKDDIコマースフォワード(KCF)では1月30日、「auショッピングモール」「DeNAショッピング」の両仮想モールを統合し、「Wowma !( ワウマ)」として再スタートする。KDDIでは2016年12月28日、ディー・エヌ・エー(DeNA)とモバオクの仮想モール事業を買収し、完全子会社としてKCFを立ち上げて両事業を承継していた。DeNA時代は、楽天の「楽天市場」、ヤフーの「ヤフーショッピング」に次ぐ「第3のモール」と位置付けられていた時期が長かったものの、近年は流通額でみると、両モール、さらにはアマゾンの後塵を拝する状況だった。KDDI傘下でどこまで存在感を高めることができるか。

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有名企業の出店も予定

DeNA時代は、DeNAショッピングは誰でも買える仮想モール、auショッピングモールはauユーザーを対象としたモールという位置付け。ネット販売企業はDeNAに出店すると、同時にauにも同じ商品が販売されるという仕組みだった。
両モールを統合した新モールは、auユーザー以外も買い物ができる。買い物の合計金額に応じて1%のポイントを付与するほか、毎週土曜は還元率を10%に増量。1月20日からKDDIが開始した「auスマートパスプレミアム」(月額499円)会員に限り、毎週土曜はさらに5%プラスし、合計15%のポイントを付与する。

付与するポイントについては、auユーザーについては従来通り「WALLEポイント」を付与。これはKDDIの電子マネー「au WALLET」に変換できるのが特徴だ。一方、auユーザー以外の顧客には、新たに立ち上げた「Wowmaポイント」を付与する。
16年12月末現在の出店店舗数は3000超。他社の仮想モールに比べると見劣りする数字で、これが流通総額の伸び悩みにもつながっていた。2月にはファッション分野では丸井とトリンプ・インターナショナル・ジャパン、AOKIホールディングスが、食品では松屋フーズが、スポーツ関連ではゴルフダイジェスト・オンラインが出店する予定。知名度の高い企業を取り込むことで、出店者数の拡大につなげる。

流通額の増加なるか

DeNAでは1999年、ネット競売サービスとして「ビッダーズ」を開始。その後は2001年5月にショッピング機能を追加した。フィーチャーフォン全盛期にはモバイルに注力しており、特に若年層向けファッションが強かった。2013年1月にはDeNAショッピングに名称を変更している。
一方、auショッピングモールは、DeNAとKDDIの協業で06年にスタートしている。携帯電話の「au」ユーザーを対象としたモールで、ショッピングなどの代金を毎月の通信料金と合算して支払う「auかんたん決済」が使える点などがメリットだった。
ただ、近年は取扱高や出店店舗数が伸び悩んでおり、2016年3月期の取扱高(DeNAショッピングとauショッピングモール含む)は前期比3%減の622億円と減収に。一時期は「流通額1000億円を目指す」としていたものの、遠く及ばない数字にとどまっていた。スマートフォンにデバイスが移り変わってからは、ファッションに特化した「ショップリスト」など、他サイトにユーザーを奪われていたようだ。

DeNAでもスマホ対応を強化していたものの、フィーチャーフォン時代とは違い、各社がスマホサイトに注力しており、差別化ポイントとして打ち出すことが難しかった。同モールで人気があったギャル系ファッションも衰退傾向にあった。さらに、2013年のヤフーショッピング無料化も出店店舗数伸び悩みに影響していたとみられる。

KDDIに運営会社が変わったことで、今後はテコ入れが見込まれるが、やりポイントとなるのは幅広い出店者の取り込みだろう。例えば家電分野であれば上新電機は出店しているものの、他の大手家電量販店は出店しないなど、ユーザーの選択肢が狭かったことは否めない。
ポイント施策についてはDeNA時代もモール負担での増量キャンペーンを定期的に仕掛けていたものの、思うように流通額が伸びていなかったのが実情。楽天・アマゾン・ヤフーという3強からこぼれた需要をどう拾っていくのか。まずは流通額1000億円達成が直近の課題となりそうだ。

「Wowma !」を運営するKDDIコマースフォワードの社長にはDeNA時代にシ ョッピングモール事業部長を務めていた八津川博史氏が就任

丸井が衣料品領域で参画

丸井グループでは、KDDIとKCFが1月30日からスタートする仮想モールにファッション分野のパートナーとして参画し、春物の新作が出そろう今春をメドとして、ブランドファッション専門の売り場を開設することになった。
ブランドファッションのECについて、KDDIは2009年にファッションECモールを展開するスタイライフと提携して当該領域のEC強化を打ち出したが、その後、スタイライフは楽天に吸収合併されるなど当初計画の修正を余儀なくされ、新たな提携先を探していたと見られる。一方の丸井グループも、昨年8月に男性向けの通販カタログを廃止してネットシフトを加速。次の成長ステージに向けた協業相手を模索していたようで、両社の思惑が一致した。

丸井は、1100以上のブランド、約15万点を取り扱うファッション通販サイト「マルイウェブチャネル」を運営しており、「ワウマ!」内でもほぼ同規模の品ぞろえで展開。「マルイウェブチャネル」の共通在庫から販売する。
丸井の実店舗は首都圏が中心のため、全国にユーザーを抱えるauの顧客基盤へのアプローチを強化。ECのライトユーザーを含めた幅広い消費者層を開拓することで、「ワウマ!」内では初年度に約20億円の売上高を計画するが、KDDIグループによる当該モールの広告宣伝が本格化すれば、「計画値の上ブレも期待できる」(丸井グループ)としている。
また、新規の売り場では、丸井が2010年の投入以来、累計320万足以上を販売する「ラクチンきれいシューズ」を中心としたプライベートブランド(PB)も展開することで、好調なPB商品の認知向上と売り上げ拡大につなげるほか、同社グループのクレジットカード「エポスカード」の新規開拓を推進。「ワウマ!」のユーザーには通常のカード入会特典以外に同モールで利用できる期間限定の特典も用意する予定だ。
一方、モール内のブランドファッション領域を丸井に委ねることで、KDDI側は各ブランドと契約する必要がなく、専門サイトも早期に開設できる。また、顧客ニーズの観点からも、利用者はブランドごとに決済する必要がないため、ブランドをまたいだ買い回りがしやすくなるメリットもある。
なお、ブランドファッションのEC市場では、「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイ(前期売上高約544億円・取扱高約1595億円)に次ぐ第2位が丸井(前期売上高約200億円)だが、13年にNTTドコモの傘下に入ったマガシーク(前期売高約158億円)はドコモのECモール内で「dファッション」を共同運営して業績を伸ばしており、丸井もKDDIとの協業でさらなる成長につながるのか注目される。

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