Sun, May 27, 2018

「いわゆる健食」の表示 規制、健増法運用が活発化 保健所が新たな〝規制当局〟に

国民の健康づくりを担う「保健所」が健康食品の表示を監視する〝規制当局〟として急浮上している。昨年4月、国は健康増進法の「虚偽誇大広告の禁止」に関する執行権限を地方自治体に移譲。以降、保健所による「いわゆる健康食品」への改善指導が活発化しているためだ。中でも、取締り状況が最もアツいのが「東京都・港区」。というのも港区は、大手代理店や民放キー局のすべてが本社を置く〝広告業界の火薬庫〟であるためだ。

「いわゆる健食」狩り

「『いわゆる健食狩り』をするんだと。科学的根拠があるなら『機能性表示食品』を使え、というメッセージを感じた」。保健所の指導を受けたある事業者はその心象をこう語る。この事業者が指導を受けたのは、薬機法(旧薬事法)でも景品表示法でもなく、「健康増進法」だ。なぜ健増法の運用が活発化しているのか。
これまで健食の広告表現は、主に薬機法、景表法の2法で監視されてきた。薬機法は「NG ワード」が明確。「がん治癒」や「病気の予防」など医薬品的効果をうたえば規制される。その特徴を活かし、ニセ薬と受け取れるサプリメントの監視を中心に行ってきた。

景表法もその規制対象は「優良・有利誤認」と明確に定まっている。「不実証広告規制(合理的根拠の要求権限)」によって根拠がないと〝違法とみなす〟強力な執行権限もある。「食事制限や運動を行うことなく痩せることはない」という専門家の確定的評価を背景に、主にダイエット対応の健食の取締りに長けていた。

一方、その中で宙に浮いた存在となっていたのが健増法の「虚偽誇大広告」の取締り規定だ。

厚労省が法制化した健増法は、そのルーツを薬機法に置いている。規制対象も「何人も」。薬機法と同じ建てつけで、広告主だけでなく新聞やテレビ、ネットメディアなど媒体社を含め幅広く規制できる。ただ、景表法のような「不実証広告規制」がなく、扱いづらいのが難点だった。違法性を判断する構成要件を満たすのが難しいのだ。

「いわゆる健康食品」を積極監視する港区みなと保健所(写真中央)と消費者庁(同㊨)、厚生労働省(同㊧)

あいまいな〝健康イメージ〟を規制

健増法が取り締まるのは「著しく事実に相違する(広告)」と「著しく誤認させる(広告)」。ただ、法執行(勧告)には、その広告によって「国民の健康に重大な影響が及ば」なければならない。具体的には「診療機会を逸した場合」、「(消費生活センターなどに)多くの苦情が寄せられている場合」の2つ。「国民への重大な影響」というのハードルが高く、迅速な運用が可能な景表法や薬機法が利用されてきた。

ただ、薬機法や景表法にも弱点がある。イメージキャラクターを使って表現するあいまいな〝健康イメージ〟を取り締まりにくいことだ。
昨年3月、権限移譲を前に「勧告」を受けたライオンのトクホ飲料「トマト酢生活」を例にすると分かりやすい。
「トマト酢生活」は血圧の低下作用を認められたれっきとした「トクホ」。広告で「血圧低下作用」といったところで国がその合理的根拠を認めているため違法性はない。広告では「『50・60・70・80代の方に朗報』ともうたっていたが、この表現自体が〝ほかの商品に比べて著しい優良性を表すものか〟といえば、該当しない」(行政の元執行担当官)。つまり、景表法では取り締まれないわけだ。
だが、健増法ではどうだろうか。「50・60 ~」「薬に頼らず食生活で血圧対策」といった複数の表示から構成された広告を総合的に判断すると「全体(的)印象」から〝医者いらず〟とも受け取れないだろうか。これは、健増法適用に必要な「診療機会を逸する」と合致する。

「指導」中心にプレッシャー

とはいえ、「全体印象」を生み出す表示箇所をきちんと特定し、「勧告」の認定を行っていくのは、いち保健所にはやはりハードルが高い。だが、「指導」ならばどうか。「全体印象」は、主観的要素が強い。〝これはおかしい〟と思えば、指摘すればいいため一気にハードルは下がる。いわばプレッシャーだ。
実際、ある保健所の担当者も「消費者庁からは指導に力を入れて、と言われている」と話しており、消費者庁はこうして健増法の運用を拡大する狙いがあるとみられる。
そうなると全国に480の監視網を持つ保健所は絶大な威力を発揮する。消
費者庁は出先機関を持たないため、景表法は全国に8つある公正取引委員会の地方事務所にも調査権限を移譲して
いる。15年12月、処分権限が都道府県に移譲されたが、それでも規制当局の数は50ほどの計算だ。監視の目は一気に増え、また、「何人規制」によって広告主だけでなく媒体社まで規制対象にできるのも強みになる。

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