「売り手」市場で、激化 する人材争奪合戦 主要通販各社の新卒採用

春の到来とともに、今年もまたフレッシュな人材が通販業界へとやってくる。上り調子の国内景気を反映してか、近年は企業の新卒採用市場も一層の激しさを増している。2016 年度は企業の採用広報活動の解禁時期が“後ろ倒し”となる経団連からの指針が出たこともあって、選考スケジュールの組み立てに苦労した企業も多かったのではないだろうか。今回は姉妹紙「通販新聞」において主要な通販実施企業約30社を対象に実施した「主要通販各社の新卒採用状況」の調査をもとに、有効回答を得られた24社の結果をまとめた。各社が取り組む最新の人材獲得手段や、独自の育成方法などに迫る。

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採用人数の前年比はまだら模様

まずは2017年4月入社予定の新卒採用社員の人数について前年実績との比較を見ると、「増加」が9社、「減少」が7社だった。また、「同数」とした企業も6社となるなど、それぞれの回答が同じような割合に分かれるまだら模様の結果となっている。
採用人数の増減幅については、前年比で2~3人程度の変化があった企業が多く、中でも最も増加幅が大きかったのがファンケルで前年比17人増の38人。総合職・研究職の採用を強化していることを理由に挙げており、2018年度についても40人の採用を計画している。一方で減少幅が一番大きかったのはベルーナで、定着率向上のために同28 人減の80 人となった。
そのほか、主な企業の増減理由としては、同3人増の千趣会が「辞退者を考慮し内定したものの、想定より辞退者が少なかった」、同2人増のオルビスも「内定辞退者数の違いのため」、同微増だったゴルフダイジェスト・オンラインは「会社の成長に伴う人員増強、若手の戦力強化」と回答。同1人減だったディノス・セシールは「『質』を重視した採用を例年実施しており、結果として今年は前年より減る形となった」、同2人減のスクロールは「採用期間を短くしたため」と、それぞれ回答している。また、増減なしのユーグレナは「事業拡大に対して人員強化の必要はありながらも中途採用と合わせた強化体制を敷いているため、新卒採用人数は同数となった」とした。

求人紹介サービスの活用が増加

エントリー数についてはおおむね1000 以上となり、中でも多かったところではファンケルが約1万6000、ベルーナが約1万、オルビスが約5500となった。全体的に前年よりも減少したという回答が目立っており、中には効率化を理由にターゲットを早期に絞ることで計画的に4割以上減らした企業もあった。
採用告知のために利用したものとしては、自社サイトが最も多く、次いで大手就活サイトの「マイナビ」や合同説明会、学内セミナーなどが上位となった。そのほかにも求人紹介サービスやSNSを利用している企業も増えており、社員からの“後輩紹介”を行っているケースも見られた。なお、採用コストの総額としては、回答企業中で最も高額だったのが1350万円。割合としては1000 万円程度と回答した企業が多く、前年と比べて増減なしという意見も目立った。
次にエントリー後の選考過程について見てみる。昨年同様にほぼすべての企業が書類選考、筆記試験、適性検査、面接の組み合わせによるスタンダードな形式を採用。面接は3回前後に設定しているところが多かった。

選考過程での特徴的な取り組みでは、ジャパネットホールディングスが表現力テストとして自分を一番表現できる方法で5分間の自由な自己PRを実施しているほか、ファンケルが学生の「素」の姿も見られるようにゲームを取り入れたグループワークを実施。Hamee はウェブ電話の「Skype」による面談を取り入れたほか、選考を短期間で終わらせる仕組みなどを採用。アンファーでは一般選考とはまた別に、学生時代に人生でNo.1と言えるものを持っている人だけを対象にした「No.1選考」という特別選考を実施した。また、初めての新卒採用活動となったドゥクラッセでは書類選考・エントリーシートがなく、人物を重視するために希望者全員との面接を実施して学生の可能性を見極めていったという。

採用活動期間は3月~夏に集中

なお、経団連などの要請を受けて、2016年4月入社を対象とした新卒採用活動から企業の広報解禁が従来よりも3カ月遅い3月にすることが指針として設けられていた。加えて、2017年3月卒業・修了予定の学生を対象とした採用活動の指針についても、選考開始時期が従来の8月から6月まで2カ月前倒しとなっていた。これにより、従来よりも短期決戦のスケジュールで選考から内定までの作業を行うことが求められていたという。

実際にアンケート回答企業の多くが、採用活動期間として3月から夏頃までの半年間弱でスケジュール調整を行っていることが分かった。中には3月から6月までのわずかな期間で行う“超短期決戦”の企業も見られた。

7割以上が「売り手」と回答

今春の新卒採用市場について通販企業の受け止め方はどうだったか。アンケートでは実に7割以上が学生有利の「売り手市場」であると回答。複数の内定を保有しながら就職活動を行っている学生も見られるなど、前回と同様に景気回復に伴い企業全体で求人数の高止まりが続いていることが伺えた。「買い手市場(企業側有利)だった」との認識は16%にとどまり、「どちらでもない」との回答も10%と低い水準だった。
「売り手市場」とした主な回答理由では、「昨年同様、内定を複数保有している学生がいた。また、説明会開催段階で、他企業とのバッティングが生じ動員に苦戦した」(ジュピターショップチャンネル)、「景気回復で学生数が変わらないにも関わらず他企業で新卒募集数が増加したため」(QVC ジャパン)、「採用活動中すでに内定を何社かもらっている学生が多く、余裕が見られた。最終的にいくつかの中から主に待遇面(福利厚生)等で内定先を選んでいた学生が多かったため」(スクロール)、「経団連の採用解禁時期の変更に伴い、中小企業は内定辞退の懸念から、また大手企業はリクルーター等を駆使することで、多くの企業が優秀な学生に内定を出していたと感じる(実際に選考解禁前から、複数内定を保有している学生が多かった)」(ディノス・セシール)。「内定を出した学生が例年より多い内定を保持していた」(アンファー)。
一方、「買い手市場」との回答では、「遅めの時期(9月後半)に行った説明会でも多くの学生が参加していたことから」(ロコンド)、「基本的にはHP募集のみにて採用を行っている中で順調な採用活動を進めることができている」(ユーグレナ)という見解や、「多くの優秀な学生たちに応募してもらえた」(オークローンマーケティング)という意見が見られた。

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