Sat, August 24, 2019

ファーストリテイリングのオムニ戦略 ―新社屋を基点に「情報製造小売業」へ脱皮

江東区有明に開設した新社屋

ファーストリテイリングでは、今春から本格稼働している物流施設一体型のオフィス「有明社屋(東京都江東区)」を基点に、リアルとネットの融合を進め新たなビジネスモデルの構築を図っている。実店舗販売を軸としたこれまでの「製造小売業」から、IT ツールを活用した「情報製造小売業」へと生まれ変わる考え。スマートフォン版通販サイトの大幅なリニューアルをはじめ、商品企画・生産体制の見直しによって顧客ごとの最新のニーズにマッチした商品をスピーディーに提供できる体制の構築などを目指していく。

物流一帯型のオフィスを展開

同社は「情報製造小売業」の実現に向けた戦略の中で、これまでの「作ったものを売る」というマスのビジネスモデルから、顧客の要望やニーズ、ネット販売での売れ筋データなどをリアルタイムで読み取って最短で商品づくりに反映させる仕組みを目指している。2月から段階的にビジネス機能の移転を進めてきた物流施設も兼ねる新社屋がその舞台となる。

同拠点は1階から4階までと、5階の半分を物流スペース(5階の残り半分は仮想店舗スペース)としており、最上階の6階(約5600m2)を業務エリアとしている。物流施設とオフィス機能を一体化したことについて、柳井会長兼社長は「物流も情報システムも商売の現場なのでみんなで一緒に仕事をやるべき。実店舗もネット(通販)も境なくシームレスでつながる」としている。

大小24台のモニターがある「アンサーラボ」では、セミナーやグローバルも含 めたミーティングなどが行える

まず着手したのは、オフィスレイアウトから取り組んだ部署ごとの垣根を取り払うための働き方の見直しだった。これまで同社では「企画」「製造」「物流」「販売」の一つひとつの行程を、それぞれの担当部署が順番に進める縦割りのリレー方式を採用していた。新拠点では執務エリア「ワークロフト」の中で、商品づくり、マーケティング、物流などに関わる各工程の担当者が全て集まった混成チームを作って作業する方式に変更。「ウィメンズ・ボトムス」「ヒートテック」「カットソー」など1つの商品ごとに上流から下流までの各担当者が同じチームで作業することで、商品づくりのサイクルを短縮させるという。
さらに、AI(人工知能)の活用に向けて2017 年春夏シーズンから各商品にRFIDタグを取り付けており、商品の流れや売れ方の見える化を図っている。これにSNSなどネットで拾った最新の市場の声も集めて一元管理し、生産部署・物流部署も含めて情報を共有。また、過去の商品デザインや素材の情報も合わせてビッグデータとして集積し、それをAIで分析して製造や流通に反映させていく。
これにより、これまで基本的にはシーズン前の段階で商品企画がすべて終わっていたが、製造サイクルの短縮化と合わせることでシーズン中でもリアルタイムに市場のニーズを反映した商品企画・販売ができるようになるという。現在では月次ごとから週次ごとの生産に切り変えてシーズン中の生産比率を高めており、売りながら次々とまた新しい商品を作り足すことができるようになっているとする。

最大2万5000冊を収納できる「リーディングルーム」は、ビジネス書や哲学書など柳井 会長兼社長が推薦する書籍もある

スマホサイトを大幅刷新

新戦略でもう一つの鍵となるのが、デジタルデバイスを通じた、時間や場所を選ばない集客施策。その一環として3月には「ユニクロ」のスマホ版通販サイトを大幅に刷新した。クリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏をアドバイザーに起用して、昨今の大型化が進む液晶画面に対応すべく、すべてが親指の範囲内で操作できるレイアウトを導入している。

これまでは商品検索窓などが画面の最上部に位置し、持ち手の親指では届かないという問題があったが、今回から検索窓を含めたメニューバーをすべて下に移動。女性の指の長さでも届く範囲に導線を収めた。「1秒でも顧客の時間を節約することで便利な体験になる。できるだけ買いやすくて摩擦のないようにした」(イナモト氏)と説明。
また、SNS のコーディネート画像に関する問い合わせが多かったことから、「スタイルまとめ買い」機能を追加。公式スタイリングサイト「ルック」などの画像を通販ページにも掲載して、1つのページ内にコーディネート商品のそれぞれの詳細画像と購入ボタンを設置。スタイリングサイトと通販サイトを行き来しなくても、同じページの中でコーディネートの確認から購入まで完結できるようにしている。

関連して、通販限定で展開しているシャツやジャケットなどのセミオーダー商品に関しても購入導線を最適化。「襟」「フロント」「柄」「サイズ」など4つのステップを1つのページ内でスクロールで選び進めるレイアウトに変えて、ここでもページ移動の手間を省いた。

ネットとリアル共通の会員制度

市場のニーズを拾う上で欠かせないのが顧客接点の強化で、その中で実店舗とネット販売共通の会員プログラムの構築にも着手している。「(会員制度で)顧客とダイレクトにつながることで個別の顧客ニーズを読み取りやすくなり、マスブランドでありながら一人一人にジャストフィットの商品を提供する」(田中大執行役員)と説明。

その言葉通り、通販サイトではジャケット、シャツでのセミオーダー商品をはじめ、XSや4Lといったニッチなサイズの販売を実施。売り場面積に限りがないネットならではの強みを活かして、顧客ごとに個別対応できる仕組みを構築してい

る。
今後についても個別接客の進化に向けて、時間や購入場所を自由に選べる通販サイトの活用が鍵になると見ており「実店舗中心の商売から、ネットとリアルを融合した商売を実現したい」(同)と説明。今まで一部店舗だけで提供していた、来店先の店舗に在庫がなくても通販サイトの商品を店頭でその場で買える「店舗レジ払い・どこでも受け取りサービス」を3月から全商品・全店舗に拡大するなど、売り場にこだわらず商品提供できる体制を整えている。

人海戦術の物流から脱却へ

そのほか、近年問題となっている人材不足などに伴う物流現場の疲弊問題についても言及。「うまくテクノロジーを使っていない。人海戦術でやっているのが現状。最新機器と人の力、インフォメーションの力で最高の物流を作り上げることが必要。なるべく早期に誰にも負担をかけずにやれるのが(目指す)新しい産業」(柳井会長兼社長)と説明した。具体的な日時などは決まっていないものの、同拠点には海外などから最新のロジスティックシステムを導入し始めていることなどを明らかにしている。
さらに、再配達や時間指定、宅配料金値上げなど業界全体で負担が増している通販商品の配送に関しても、店頭受け取りの拡充を図ることで対応する考え。現在ユニクロの国内実店舗は830店で、3月からはその全店舗で在庫のない商品を店頭でネット注文・受け取りができるサービスを開始した。
加えて外部の受け取り拠点として「ファミリーマート」「セブン―イレブン」「ローソン」と連携を図り、現在までに国内合計で4万3000カ所のコンビニで受け取れるようにも整備している。「大雑把に計算すると、国内の居住面積の中で1人当たり750m 以内に何らかの形でユニクロにアクセスできる状況があるということ」(クリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏)と説明。受け取り拠点の拡大や24時間対応のコンビニとの連携を図ることで、商品配送に関する課題を取り除いていく。

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