Sun, May 27, 2018

アマゾンジャパン、出品者への最安値保証条件を撤廃 ―公取委の独禁法違反調査受け

最安値保証条件を自主的に撤廃したアマゾンジャパン(画像は同社サイトのトップページ)

アマゾンジャパンは6月1日、これまで同社サイトで商品を出品・販売していた事業者との間で結んでいた競合サイトと同等以上の価格・品ぞろえを取引条件とする契約を見直した。同日付で「最安値保証を求めない」など契約見直しの通知を出品者に始めた模様。同社の取引が独占禁止法違反の疑いがあるとして調査・審査を行っていた公正取引委員会が明らかにした。

公取委はアマゾンジャパンの自主的な契約内容の変更を受け、同社への独禁法違反の審査を打ち切るとしており、注目されていた「違反があったか否か」の認定および処分は行わなかった。

条件、守られているか否かを監視

アマゾンジャパンが運営する通販サイト上で展開する仮想モール「Amazonマーケットプレイス」の出品者と結ぶ契約を見直した。
公取委によると、これまで同契約には価格等の「同等性条件」および「品揃えの同等性条件」、つまり、アマゾンと競合する仮想モールや通販サイトと同等かより安い価格・最多の品ぞろえとしなければならないなどの条件が盛り込まれ、それが順守されるよう調査を行い、守っていない出店者には通知し、順守するよう求める取り組みを実施していた。

EC 市場の競争を阻害

公取委はこれらの取引条件を課すことで、出品事業者がアマゾンと競合する他の仮想モールなどで自由に商品の価格の引き下げや品ぞろえを拡大できなくさせ、それにより、事業活動を制限させたり、競合の仮想モール自体も、出店者に対して手数料などを引き下げるなどの営業努力を行ったとしてもそれが出店者の商品価格の引き下げや品ぞろえ拡大につながらなくなったり、アマゾンジャパンが競合モールと競争する努力をすることなく、最も安くまた、最よい品ぞろえを実現できることでEC市場の競争や新規参入が阻害される恐れがあるとみて、独禁法で禁じた「拘束条件付取引」に違反する疑いで2016年8月に同社に立ち入り調査を行い、その後も審査を続けてきた。

自主的に条件を見直し

公取委の調査を受けて、アマゾンジャパンから4月に「自発的に契約内容を全面的に見直し、問題となった条件を撤廃するとの申告があった」(栗谷康正上席審査専門官)とし、契約から「最安値販売保証」などを削除し出品者に通知、今後の新規契約にも同条件を盛り込まないことやその旨を従業員にも周知徹底し、今後は3年に1度、公取委に状況を書面で報告するとしたという。

違反の認定行わず

公取委はアマゾン側の自主的な契約見直しで「我々が問題視していた疑いが解消され、是正を指導する必要がなくなった」(同)とし、アマゾンジャパンへの審査を終了するとした。独禁法違反の行為があったかどうかについては「違反の認定を行っていないだけで、“なかった”とも言っていない」(同)と含みを持たせつつも、違反の認定やそれによる行政処分などは行わなかった。

「コメントは控える」

なお、本誌ではアマゾンジャパンに出品者との契約内容の自主的な変更の理由などについて聞いたが、「コメントを控えさせていただく」(同社)とコメントしている。

条件撤廃後の変化は

取引条件を見直し、出品者に「最安値」「最多商品」を求めなくなったアマゾン。出品者であるネット販売事業者にとっては制限がなくなったこと自体はプラスだろう。とは言え、その2つの“条件”はアマゾンが最も消費者に支持されている強さの源泉であることは間違いない。

条件撤廃でアマゾンにどのような変化が生じることなるか、または実際問題、変化はさほど生じないのか。出品者はしばらく行方を注視していく必要がありそうだ。

公正取引委員会の栗谷康正上席審査専門官に聞く アマゾンの審査終了の背景は?

「〝違反なかった〟とも言ってない」

公正取引委員会が問題視したアマゾンの取引条件から生じる“問題”の概 念図(出典:公正取引委員会)

アマゾンジャパンが出品者と結んでいた契約が独占禁止法に違反する恐れがあると、2016年8月に同社に立ち入り調査を行い、それから1年弱に渡って調査・審査を行ってきた公正取引委員会が「疑いは晴れた」と6月1日付でアマゾンへの審査を終了させたと公表した。責任者である審査局上席審査専門官の栗谷康正氏に調査終了の背景などについて聞いた。

Q:アマゾンジャパンについて独禁法違反の疑いでこれまで調査をしてきたが“終了”させた理由は。

A:我々はアマゾンジャパンと「Amazonマーケットプレイス」の出品者との間で結ばれていた契約が、出品者の事業活動を制限する疑いのある内容となっており、昨年8月に同社に立ち入り調査を行い、独禁法の規定に基づいて審査してきたが、アマゾン側からそうした契約内容を全面的に変更するとの申し出があり、それにより独禁法違反の疑いが解消されたことから審査を終了した。

Q:公取委が調査をしてその結果、行政処分や指導を行わないのは珍しい。

A:審査の“打ち切り”という処理は年間、何件かはある。

Q:今回も“打ち切り”なのか。

A:処理区分としてはそうなる。

Q:ただ、審査を打ち切ったということを公表するのは異例だ。

A:そうだ。ただ、10年以上前には平成16年に行ったキヤノンおよび平成17年に行ったグーグル・オーバーチュアといった企業への調査では審査の打ち切りを公表している。これらも調査中に当該事業者が“改善”を行ったため、それを踏まえて審査を終了し、公表したという処理をしている。

Q:審査を打ち切った案件を公表するかしないかの基準は。

A:ケースバイケースの判断だ。

Q:今回は。

A:「Amazonマーケットプレイス」は非常に多くの出品者や消費者が利用しており、多くの方々に影響がある話だと判断し、公表した。

Q:これまでのアマゾンの契約内容に独禁法違反の事実があったかどうかを調査・審査してきたわけだが、そののちにアマゾンが自発的に契約内容を修正し、今後は疑いがなくなるから審査をやめ、処分もしないという流れは腑に落ちない。

A:例えば談合やカルテルでもこのような処理はしない。悪質な違反行為であり、また、当該企業が我々の調査の過程で「もうやりません」としても再発があり得るからだ。将来に向けた是正をきちんと指導するため、違法かどうかをきちんと認定し、違法性を認定した上で行政処分や課徴金納付命令も行う。他方、本件(アマゾンへの調査)はそういったものではない。アマゾン側が会社として結んでいる契約のすべてを見直し、我々が問題にしていた条件をすべて撤廃したので、我々が是正を命令、指導する必要がないということになる。したがって違法性の認定も行わないということになる。

Q:審査打ち切りで「アマゾンは独禁法違反に抵触するような違法性はなかった」という“お墨付き”を公取委からアマゾンが得たと捉える向きもある。

A:そうではない。「違反があった」という認定はしていないが、「違反がなかった」とも言っていない。いずれにせよ、制限があった部分が撤廃されることになったので今回の件は出品者にとって不利益になる話ではない。

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