用途や予算に合わせて使いこなせ! EC各社の最新「LINE」活用

LINE上級執行役員の田端信太郎氏は「メリットとデメリットを考慮して選択を」と述べる

LINEがサービスメニューを増やしている中、EC事業者が利用できる選択肢も多くなっている。公式アカウント、LINE@、ビジネスコネクト、さらにはメッセージングAPIなどといったものも出てきている。どのツールで何ができるのか。やっぱり高額で中小企業には手が出ないのか。事業者の中には混乱している担当者もいるようだ。新規獲得やリテンション、顧客対応などカシコイ企業は施策や予算によってうまく使い分けているらしい。EC実施企業による最新の活用状況はどうなっているか、探ってみた。

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消耗戦のリスティングや価格比較ではない世界観を

LINE 上級執行役員 田端信太郎氏に聞く

LINE社の無料通信アプリ「LINE」は国内6800万人のユーザーに使われており、人々の通信インフラとして定着したと言っても過言ではない。もちろんビジネスの現場でも以前から活用は進んでいる。ただ、LINE側が提供する商材が増加している中で、EC事業者からは「どのツールが何に向いているのか分からない」や、「結局、高いんでしょ」という声も聞かれる。今、最も賢く「LINE」を使いこなすにはどうすればいいのか。高額なコストを払わずに顧客との接点を作る方法はあるのか。LINE上級執行役員でコーポレートビジネス担当の田端信太郎氏に話を聞いた。

公式と@で役割が異なる

「(各種サービスについて)混乱があるというのは正直私もある程度は認めざるを得ないです。公式アカウントだけでなくLINE@のAPIも解放したことなどが一因となっているようです」
田端氏の説明を補足すると、企業が「LINE」で顧客と接点を持つためにアカウントを開設する必要があるが、その種類は大きく「公式アカウント」と「LINE@」に分かれる(※「ビジネスコネクトアカウント」や「カスタマーコネクトアカウント」などもあるが、ここでは省略する)。公式アカウントとLINE@では金額が大きく異なり、実施できる施策や用途も変わる。

「公式アカウントはよりワイドにリーチするためのものです。大抵の場合はスポンサードスタンプと紐付けて友だち(フォロワー)を数百万人に一気に増やします。固定費は月額250万円と高いですが、1ユーザーあたりで割り戻すと必ずしも高くないというモデルです。一方のLINE@は新規ユーザーというよりも、来た人をリピート化させるという役割です」
右ページの表はECに関連するLINEのサービスをその用途や料金別に列挙したものだが、田端氏も指摘するように、公式アカウントとLINE@は費用が異なるというだけでなく、役割も変わってくるようだ。片やマスにリーチ
て新規を獲得する、片や既存顧客のリピート化を促進させる。そういう意味ではこの後の事例に出てくるメガネスーパーのように公式アカウントもLINE@も両方使うという選択肢も理にかなったものと言える。

公式アカウントか、LINE@かどちらがいいかは企業によっても変わる。

「例えば大手の小売チェーンさんで数百、数千の店舗がある場合に、公式アカウントを開設してビジネスコネクトでターゲティングして店ごとにメッセージを打ち分けるのと、全店で個別にLINE@のアカウントを設けて、各店の施策を店長さんが打つのとどちらがいいですか、と尋ねられてもなかなか…(答えられない)。メリットとデメリットを考慮して選択してくださいと言うしかない。小売店でも本部で決めた戦略を店舗が忠実に実行していく場合と、店長が主役で本部はそれをサポートしているパターンがある。それと同じで、どちらかが正しいというのは言いにくいです」
要は、複数のツールが用意されており、料金や機能などを理解した上で各社の戦略に合わせて使い分けてほしいということのようだ。
田端氏によると、廉価版のLINE@の場合、友だちが100人を超えたあたりからメッセージ配信に対するアクティブ度が変わるようだ。例えば実店舗の店長さんが合間の時間にメッセージを打っても来店につながらなければ意味がない。ところが仮に「雨の日割引」などをLINE@経由で実施した場合に、来店につながる好循環に入り出すのが100人オーバーくらいだという。
このようにLINE@でもうまく使うと成功につながる方程式が見えてきた。ただ、LINE@の機能が拡充されたことで、公式アカウントを運用する企業からは差別化を求める声も聞かれる。

実際、1to1のメッセージ配信だと、かつては「公式アカウント+ビジネスコネクト」の掛け合わせによって可能だったが、今では「LINE@+メッセージングAPI」などの組み合わせでも実現できる。もちろん抱えるユーザーの母数が大きく変わるため一概に比較はできないが、施策としての可能性という意味では同じと言っていいだろう。

「(差別化を求める)ご指摘は私もいただいております。そうしたご不満がこの半年、1年で非常に強くなってきています。そこで公式アカウントについては別アプリで展開している『LINE LIVE』のような生中継の機能をブラッシュアップして付加することなどを検討しています」

関係性を築く土台に

最後に、改めてLINEが提供できるEC事業者へのメリットや強みを尋ねてみた。
「リスティングは高値争いになっています。『LINE』であれば消費者とつながり信頼関係を構築したり、需要を作ることができるので、消耗戦のリスティングや価格比較ではない世界観を生み出せるのではないかと思います。商品が届いた後に『LINE』経由で『ありがとう』と返事がくるような顧客との関係性を築く土台にしてもらいたいです。そこが検索エンジンやディスプレイ広告などでは絶対に真似できない『LINE』の強みだと思います」

田端氏はこの説明の中で「飲み物は典型ですが」とワインを例に挙げた。ワインを1本1万円で通販で販売する際、検索エンジンでたどり着いた時点であとは安く買うかしかない。結果、店同士が競わされる。それに対してワインの由来やなぜワインを購入するのかなどコミュニケーションを図ることで、高い安いだけではない付加価値を提供する。そうした世界観をLINEは目指すというのだ。
それでは次に、EC各社の実際の取り組みを見ていく。

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