話題の売り方、どうやればいい? 効果はあるの? ライブコマースのすゝめ

中国のEC ではもはや定着した機能の1つで、日本でも徐々にネット販売事業者の間で広がり始めている生配信動画で商品を説明・販売するいわゆる「ライブコマース」。仮想モールがライブコマース機能を実装し始めたこともあり、その話題の「売り方」に挑む事業者も増え始めているようだ。しかしながら、言ってみれば生放送のテレビショッピングに近い、同手法を活用するのは一般的な事業者とってはハードルが高そう。また、実際の効果なども見えにくいといった側面がありそうだ。ヤフーやBASE、Canbee、メルカリといったライブコマース機能を提供するプラッフォーマーごとに実情について見ていく。

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開始10日間で100の動画配信顧客との接点作りに効果

【事例① ヤフーショッピング】

ヤフーは運営する仮想モール「ヤフーショッピング」の出店者が販売する商品を紹介できる動画のライブ配信機能「Yahoo ! ショッピングLIVE」を11月5日から開始した。希望する出店者は事前に予約をすれば無料で自らスマートフォンで撮影、テレビショッピングさながらに商品の特徴などを最大30分紹介でき、販売につなげることができる仕組み。ヤフーでは従来のメールマガジン以外にも出店者が顧客に直接、アプローチできる新たな手段を提供することで各出店者のファン作りや売り上げ拡大につなげ、「ヤフーショッピング」全体の流通総額拡大に貢献させたい狙いだ。

「自ら出演してライブで商品を紹介する」という行為自体がハードルが高く、チャレンジする出店者が少ないのではとの懸念も当初はあったようだが、スタートから10日目現在、すでに配信番組数は100を超えており、動画へのコメントなどもユーザーから多く付くなど順調な滑り出しを見せているようだ。

昼12時から夜11時まで生配信

「Yahoo ! ショッピングLIVE」は「ヤフーショッピング」のアプリのトップページに設ける「ライブチャンネル」というコーナーで毎日、リアルタイム配信する商品紹介動画だ。なお、「Yahoo ! ショッピングLIVE」はまずは「ヤフーショッピング」のiOS版アプリで11月5日から配信をスタートし、アンドロイド版アプリへの配信は来年3月までに実施予定。ウェブ版はその後、対応していくという。
ライブ動画配信を希望する「ヤフーショッピング」の出店者はヤフーが11月から配信を始めた外出先などでも売り上げの確認などができる法人出店者向けのストア管理用アプリ「店長アプリ」をダウンロード後、同アプリから「Yahoo! ショッピングLIVE」の配信時間の中から、1回の持ち時間となる30分枠を予約し、スマートフォンで当該時間に販売したい商品を紹介する動画を撮影、配信できるもの。1回のライブ配信で最大10商品まで紹介、販売が可能となる。自社開発した動画配信機能を使用しており、他社のライブ配信サービスよりもラグを少なく抑え、8秒程度の遅れとほぼリアルタイムに配信できる。ヤフーは利用料や配信料は徴収せず、出店者は無料で同機能を利用できる。なお、事前に収録した動画は配信できない。ちなみに動画配信時間はスタート当初は午後6時から11時までとしていたが、出店者からの要望もあり、開始後間もなく昼12 時から夜11 時に拡大している。

なお、当初はライブ配信に親和性の高いファッションやキッチン用品、食品、化粧品など7カテゴリー

「ヤフーショッピング」のiOS 版アプリ上に生動画を配信する「Yahoo ! ショッピングLIVE」。ユーザーの反応 をリアルタイムで画面上に表示。紹介商品の販売ぺ―ジにも誘導できる(画像はイメージ)

を販売する出店者の中から一定の売上規模を持つ上位出店者である約3000 店に限定して受け付けている。

ユーザーの要望に即座に対応

「Yahoo ! ショッピングLIVE」の動画配信画面の下部のストアボタンをタップすると、紹介中の商品の価格や星によるユーザー評価など簡単なスペックが表示され、さらにそれをタップすると当該商品の販売ページに遷移する仕組み。また、ライブ配信画面にはユーザーからのリアルタイムのコメント表示や「いいね!」投稿などを受け付ける機能も実装しており、例えば「産地はどこか」などの問いかけにすぐ答えたり、「裏地はどうなっているのか」などコメントに対し、デモンストレーションの内容を臨機応変に変えて裏地を見せるなどユーザーの質問や疑問点にすぐに対応できるという。

「Yahoo ! ショッピングLIVE」開始の狙いについて「配信後のアーカイブ視聴には今のところ対応していないため、その時しか見ることができない。また、お客様との双方向なやり取りができるというリアルタイム性が大きな売りだ。我々はポイント施策などで『ヤフーショッピング』に多くのお客様に来て頂いたが、そうしたお客様を今度は『ストアのファン』になってもらうことにも注力したい。これまでストアがお客様にアプローチする手段はメールなどに限られていたが、中国のECではすでに当たり前のものになっている効果が高いと思われる『ライブ動画』も活用頂き、“どの店舗でもいい”ではなく、“この店舗で買いたい”というストアのファンを作るファン作りに役立ててもらいたい」(ショッピングカンパニー・プロダクション1本部の河内俊介部長)とする。

スタートから毎日配信する強者も

慣れてない人にはやや難易度が高い「生配信動画による商品紹介」は当初、希望する出店者が少ないのではないかと懸念されていたものの、配信を開始した11月5日から同15日までの10日間ですでに動画の生配信を行った店舗はキッチン用品やコスメ・美容商品の出店者などを中心に20店舗を超え、配信動画数は100 超となっている。
例えば無農薬野菜などこだわりの食品を販売する「割主烹従hiryu飛竜」では同社の社長自らが出演し、「HIRYU健康生活LIVE」と題して同社で販売する食品や健康などについて語る形式でスタートの11月5日から毎日、配信している“強者”も出てきているよう。また、芸能事務所のアネットが運営するパーティグッズの販売を行う「アネットショップ」なども所属タレントなどを起用した動画の配信を積極的に行っているよう。一方でバリ島発のハンドメイド雑貨などを販売する「OneWeb」のように出店者は顔を出さずに、商品のみを紹介するスタイルの動画を配信する店舗もあるようだ。
ライブ動画は原則、出店者が自由に商品を紹介できるが、事前に公序良俗に関することや暴力行為などいくつかの禁止事項を規定したガイドラインを設けており、配信中に問題のある言動や行動を繰り返したり、ライブ動画画面上の「通報ボタン」で視聴者からクレームが寄せられ、それをヤフーが問題だと判断した場合はヤフー側で当該動画配信を強制終了することもあるという。また、動画配信後にも動画を確認し、問題のある言動や行動を行った出店者には指導を行い、その後も改善が見られない場合、当該出店者は動画配信ができなくなるようなペナルティなども課すなど、安全面にも配慮しているがその一方で「ライブ動画の出演や撮影はハードルが高いと感じている出店者はいると思うが、しっかりした番組でなくとも、例えばテーブルの上に商品を並べて紹介していくようなラフな内容でもよいと思う。肩の力を抜いてまずはやって頂きたい。それもライブコマースの1つの形だと思っている」(ショッピングカンパニー・プロダクション1部の相田隆一氏)。また「国内大手の仮想モールとしては初実装の機能で出店者も我々も初めて。ライブコマースは流通(売り上げ)に直結するものというより、エンターテイメント性などショッピングだけでない価値をヤフーとしては生み出したい。これからストアの皆様とともにトライアンドエラーを繰り返しながらよりよいものにしていければ」(河内部長)とする。
なお、スタートから10日間現在までに配信されたライブ動画で最多のコメント数・いいね数を獲得したのは「ヤフーショッピング」が「いい買物の日」として大規模セールを行っていた11月11日に実演販売士によって調理器具の商品紹介動画を配信した家庭用品などの実演販売を得意とするコパ・コーポレーションとなっている。また、「Yahoo ! ショッピングLIVE」を最もよく視聴する層は男女とも35~44歳で、最も「いいね!」やコメントが付く、要はよく視聴されている時間帯は午後8時から10時の2時間となっているようだ。
今後、「Yahoo ! ショッピングLIVE」ではライブ動画の視聴者のみ割引クーポンを付与できたり、配信中だけ割引価格で販売できる機能や、ライブ動画は基本にしながらも事前収録動画などもライブ配信中に挿入できるような機能の導入も視野に入れているよう。また、現在は一部に絞っている動画配信可能な店舗の制限を順次、撤廃していくほか、出店者の管理画面内で実施しているバナー広告の作り方など出店者にとって役立つ様々なノウハウを動画で解説する「ヤフゼミ」などで効果的だったライブコマース動画の成功事例の共有など、より出店者にとって利用しやすい機能の導入や支援体制を作っていきたい考えのようだ。なお、ライブ動画配信の有料化については「当面は考えていない」(同)という。

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