Wed, April 25, 2018

アマゾンジャパン、「参考価格」で有利誤認 ―― 割引率、不当な吊り上げで処分

消費者庁は12月27日、不当な二重価格表示を行っていたとして、アマゾンジャパンに景品表示法に基づく措置命令を下した。実態の伴わない「参考価格」を表示し、割引率を不当に吊り上げていたことを「有利誤認」と判断した。アマゾンは数億点もの商品を扱い、国内の年間流通総額は2兆円を超える。だが、違法認定されたのはわずか5商品。ほかにも不当な二重価格表示が行われている可能性もあり、適切な再発防止策が示せなければ、今後もアマゾンの二重価格表示問題は尾を引きそうだ。

約6倍の「参考価格」表示も

6本分の価格が表示され不当に高い割引率が表示された甘酒

違法認定されたのは、クリアフォルダー3商品とブレーキオイル、甘酒の5商品。事務用品等製造のプラスが製造する「プラス クリアホルダー(100枚入り)」の場合、参考価格が「9720 円」のところ「1000 円(90%オフ)」で販売。同様に自動車用エンジンオイル等を製造する和光ケミカルの「ブレーキフルード」は、参考価格「4640 円」を「3558円(23%オフ)」、酒類製造の篠崎の「国菊甘酒」は、参考価格「3780 円」を「956円(75%オフ)」で販売していた。
だが、クリアフォルダーは、製造事業者が社内の商品管理上、便宜的に定めた価格で「メーカー希望小売価格」といった形で、一般に広く示されたものではなかった。ブレーキオイル、甘酒は「メーカー希望小売価格」自体はあったものの、「参考価格」として表示されていたのは、ともにこれより任意に高く設定された価格。甘酒に至っては、「メーカー希望小売価格」6本分にあたる価格を表示し、不当に割引率が示されていた。

表示期間は、最長でクリアフォルダーの約2 年半(14 年10 月~17年5月)、ブレーキオイルは16年9月~17年6月末、甘酒は17年6月~7月まで表示していた。そもそも、「参考価格」は、ユーザーだけでなく、事業からみてもその実態が捉えにくいものだ。

制約受けにくい「参考価格」

二重価格表示を行う際に比較対象に使われることがある「当店通常価格」などの場合、相当期間、通常価格で販売した実績が必要になる。景表法のガイドラインも示され、ルールを逸脱すれば「有利誤認」で処分対象になる。
「メーカー希望小売価格」もメーカーが広く告知している必要がある。カタログやパンフレットなどで示されていることが必要だ。販売事業者ではなく、仮にメーカー側が市場の一般的な売価より不当に吊り上げて提示し、割引率を高く見せようとしても独占禁止法で指導対象になり、過去には「メーカー希望小売価格」の適正化が図られてきた経緯がある。
一方、定義があいまいでこうした制約を受けにくいのが「参考価格」だ。アマゾンの違反にも「市場の売価を相当調べた上で設定した参考価格ならば理解できるが、メーカーから聞いたみたいな数字であればいくらでもサバ読みでき、実態が伴っていない。どういう理屈が知らないが、よほどプレミアのついた商品でなければ『メーカー希望行為価格』より高いというのはあり得ない」といった行政関係筋の指摘がある。

プレミア高騰の値段を表示?

「参考価格」表示の仕組み(一例)

今回、不当表示と判断された商品の場合、製造事業者はアマゾンと直接の取引関係になく、表示への関与を否定している(プラスは本誌掲載までに未確認)。その上で、アマゾンのサイト上で表示されていた参考価格について、ブレーキオイルを扱っていた和光ケミカルは「対象の商品は3564円。価格はホームページやカタログ記載のもの以外出していない」と回答。参考価格は「4640 円(割引率23%)」と表示されていたが実際のメーカー希望小売価格との差はわずか数円だった。

甘酒も、参考価格は「3780円(割引率75%)」と表示されていたが、製造元の篠崎によると実際のメーカー希望小売価格は713円(税込)という。これについて、篠崎は「昨今の甘酒人気で一時期、製造が追いつかず、転売屋が横行した。その過程で便乗値上げがあり、4000 円近い市場価格になっていたことはある」とは話す。ただ、これは一時のもの。現状は数百円が市場における売価だが「アマゾンの入力の方が戦略的に参考価格としたのでは。定価ではなく(こちらとしては)不本意。参考価格に明確な定義があるわけでもなく誤認を招く」と話す。
アマゾンは、出品者に示す参考価格のポリシーの中で、「広く小売業者に告知している価格」であることを求め、メーカーカタログやパンフレット、ウェブサイトなど参考価格の根拠となる価格が印字された資料を入手し、保管することを求めている。同時に「最新の価格」であることを求め、過去の販売価格は表示できないとしている。だが、実際は自ら行っていた表示でそのルールに抵触していた。

誰でも入力できる「参考価格」

ただ、アマゾンにおける「参考価格」の問題はこれにとどまらない。アマゾンでは、通常の販売価格とは別に「参考価格」が表示される商品がある。その際、同時に割引率も表示される。
「参考価格」は、アマゾンが委託した仕入れ先や出品者が管理画面から任意に入力できる仕組み。メーカー希望小売価格などが一般的だが、アマゾンが出品者に示す「参考価格」のルールに沿って利用できる。アマゾンを含め、複数の出品者が「参考価格」を入力することが想定されるが、ユーザーが確認できるのは販売価格が競合他社より安いなど諸条件を満たし、トップに表示される、いわゆる〝カートをとる〟という状態となった出品者が表示する参考価格のみ(アマゾンはトップ表示の基準について非公開)。
一方、出品者の管理画面から見ると、「『販売価格』と『セール価格』の入力欄がある」(出品する事業者)という。少し分かりにくいが、「セール価格」を入力すると、「販売価格」として入力した価格を比較対象に「参考価格」が表示される。「販売価格」のみを入力した場合、サイト上で割引率は示されず、「価格」のみが表示される。「メーカー希望小売価格」の根拠を持っている場合は、これを入力する欄もあるという。こうして、「参考価格」が算出される。今回は入力の責任をアマゾンが負っていたと判断された。

「参考価格」システム悪用した販売も横行

ただ、「アマゾンの『参考価格』のシステムが妥当かといえば出品者からみても不信感がある」と、出品するある事業者は話す。これまでも実態のない「参考価格」を利用した販売が横行してきたためだ。事業者が続ける。
「例えば、2カ月後にセールをやりたいと考えた事業者が、事前にあえて『販売価格』を吊り上げて入力しておく。セールになったら『セール価格』を入力すれば、セールが始まった時に〝半額以下〟など不当に高い割引率で表示でき、トップ表示もされる可能性も高い」。
ほかにも「出品者は賞味期限切れが近い商品の在庫を早く処分したいと考える。このため競合品と比較して、安価な販売価格を入力し、『参考価格』とともにトップ表示させることで自社の商品を購入されやすくして売りにつなげる」(別の事業者)といった事業者もいる。「参考価格」をマーケティングに利用する事業者がいるためだ。今回の場合、その主体者がアマゾン判断された。

アマゾン、処分に「見解の相違」

アマゾンは今回の事態に陥った理由について「消費者庁と見解の相違がある」としており、「命令書の内容を慎重に検討して対応を決定する」と、処分不服の申し立てに含みをもたせている。適切な「参考価格」の表示に向けても「数億点の商品があり、正確な参考価格が法事されるよう継続的に監視している。入力した仕入れ先、販売事業者に根拠の確認や参考価格の削除の措置をとることがある」とも話す。

措置命令を受けた事業者は、消費者庁から「誤認排除措置」が命じられる。一般的には、日刊紙2紙に謝罪の社告を掲載するのが決まり。だが、今のところアマゾンがサイト上や新聞にお詫びを掲載していない(1月17 日時点)。

アマゾン自身が話すように自社通販サイトで扱う商品数も数億点に上る。販売者の側面を持つアマゾンが現状のシステムのまま、数億点の商品表示を管理するのは容易ではない。再発防止策を示せなければ、再び同じ問題が起こる可能性もある。

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