Sun, July 15, 2018

有力事業者にみる“送料アップ時代”に採るべき施策とは “送料値上げの前”にすべきことは?

大手配送事業者の相次ぐ送料の値上げにより、多くのネット販売事業者が顧客から徴収する配送料の値上げに踏み切っている。ある意味で仕方ない措置と言えるが、ただ、一方で配送料は上げずにコスト負担を軽減しつつ、顧客からも支持を受ける独自の取り組みを展開して成果を上げているネット販売事業者もいる。“送料アップ時代”に値上げの前に打つべき有効な施策とは。有力EC事業者の事例を見ていく。

ポイント付与で配送日を誘導

出荷平準化で費用削減や遅配防止

【事例① アスクル】

出荷体制に余裕がある日に追加ポイントを付与す る(「ロハコ」の注文画面)

アスクルが実施している物流センターの出荷体制に余裕のある閑散日に配送日を指定した顧客にポイントを付与し、出荷量を平準化させる取り組みが成果を上げている。
同社では2年ほど前から販促キャンペーンの実施日などの急激な出荷増への対応に苦慮しはじめていたという。例えば、運営する個人向けの日用品通販サイト「ロハコ」ではグループのヤフーが運営する仮想モール「ヤフーショッピング」で毎月5・15・25日に実施している購入者への付与ポイント増などを軸とした販促キャンペーン「5のつく日キャンペーン」に参加しているが、当該セール日の翌日などは出荷量が平常時の倍から3倍程度まで跳ね上がるという。物流センターの設備はそもそも出荷のピーク時に合わせた設備や人員としているわけでないため、繁忙期は作業時間や人員を増やしたりすることは一般的だが、ピーク時の出荷量が2年前のピーク時と比較すると2.5倍となってしまい、センターの稼働時間を伸ばしたり、一時的な人員増にも限界が出てきたという。そうした中での対応ではコストもかかり、慣れていない人員では生産性も下がってしまう。また、それでも出荷が追い付かずに結局、遅配してしまうことも多々あった。遅配が発生するとコールセンターへの問い合わせも増え、オペレーションコストも増す。さらに「どうしても指定日に商品を届けて欲しい」という顧客には別便を仕立てるため、その分のコストも発生していた。「なにより、遅配はお客様への信用問題となり、離反の一因となっていた」(フューチャープラットフォームアーキテクチャ プロダクション本部の上村謙介プロダクトマネジメント統括部長)という。

作業の余裕がある日にポイント

そこで「ロハコ」で商品注文時の配送日時指定画面で、出荷体制に余裕がある日に共通ポイントのTポイント(※使用期間などを制限した「期間固定Tポイント」)を“追加ポイント”として付与することを表示し、顧客がその日を選べば当該ポイントを付与するという試みを2017年10月から開始した。例えば、出荷体制にかなり余裕がある日には100ポイント、やや余裕がある日は50ポイントという具合にし、販促キャンペーンの実施日翌日などに集中する出荷作業を別日にずらす狙いだ。まずは「どのくらいのポイントを付与すれば配送日を変えてもらえるか」などを探るためテスト。10ポイントを下限に最高150ポイント程度まで試した結果、40~50ポイント程度、場合によっては10~20ポイントでも意外に“動く”ことや、例えばある日を10ポイント、別の日を5ポイントとするとポイント付与数は低くても相対的に付与数が高い日に誘導できることなど配送日を変える”条件”を把握した上で12月11日からは「5につく日」など受注が集中する日に当日の受注量や物流センターの出荷体制などから、付与できるポイントの予算を入力するだけで機械的に追加ポイントを付与する配送日やポイント量の設定、また、ポイント付与による配送日誘導の結果を受けて、リアルタイムに各日の付与ポイントを変える仕組みを自動化し、運用を本格化させた。
結果、「現時点では生産性は下がらず、ほとんど遅配も発生しない」(上村部長)という。この試みには付与ポイントの原資負担など毎回、数十万円程度の費用がかかるが、実施しなかった場合の人件費などに加え、離反客による機会損失で「数百万円程度の負担が発生していたはずで十分に元が取れている」(同)という。
また、この試みは配送時の不在率の低減にもつながっている。「ロハコ」では顧客が注文時に配送日時を指定しない場合、当日や翌日など最短出荷を行っているが、その場合、顧客側は配送日の意識がないが、この試みでは配送日および日時を指定するため、配送日を覚えていることが多く、不在率が減るなど配送効率の面でも寄与している模様だ。
今後は自社配送や配送を委託する配送会社などと協力しながら“配送体制”も考慮して、同じように配送の繁忙期にポイントを付与して配送日をコントロールするなどの試みの実施も視野に入れているようだ。

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