Sun, October 21, 2018

“間違いない商品があるサイト”を目指す 永溪幸子●ジャパネットたかた 執行役員 ペーパーメディア・インターネット企画制作担当

ジャパネットたかたがネット販売の強化を着実に進めている。2016年に運営する通販サイトを大幅に刷新、ECでは主流のロングテール戦略とは一線を画し、取扱商品数を「自信を持って推奨できる厳選した商品のみ」に絞り込むなど大胆な戦略を採り、「ここにくれば間違いない商品がある」と顧客から信頼を受けるサイト作りを進めているという。ペーパーメディアおよびインターネット部門を統括する永溪幸子執行役員が目指すジャパネット流のEC の姿とは──。

強みである“少品種多量販売”インターネットでも追及

ジャパネットらしいECへ刷新

――2016年7月に通販サイトの名称を「Japanet senQua(ジャパネットセンカ)」と改め、それまで約8500点を取り扱ってきた商品を600点弱に絞り込み、また、全商品に商品説明動画をつけ、商品の特徴説明なども既存サイトよりも手厚くするなど、運営する通販サイトを大幅にリニューアルしました。改めてその狙いについて教えてください。

当社の強みとなるビジネスモデルの1 つに「少品種多量販売」というものがあります。当社が商品の中からジャンル別に特徴などを比較検討して、特に優れた商品を厳選し、それをお客様にご提案していく形ですね。これをテレビやラジオ、新聞折り込みチラシなどでは展開してきたわけですが、インターネットでは、いわゆるロングテールという考え方があったため、これまでは多数の商品を販売してきました。

ただ、当社の強みはやはり、“目利き力”にあり、これはインターネットにおいても同様だろうと考えました。そうであれば、他の媒体と同様にインターネットでも「少品種多量販売」、つまり、当社がしっかりとお客様に代わって商品を選び、「これだ!」と自信を持って紹介をしていく形が当社らしいと考えたことがサイト刷新の大きな理由です。
また、取扱商品を絞り込むことで関連業務の負荷の軽減にもつながるという利点もありました。つまり、これまでは約8,500点の商品を取り扱っていたため、当然、その商品数の分だけ、仕入れの際のやり取りや販売するための商品登録当該商品のサイト上の商品ページの制作、在庫管理など関連する業務が発生していたわけですが、リニューアルによる商品の絞り込みでそれらの業務も削減できると考えました。また、商品を絞り込んだことで、ほぼすべての商品を当社の物流拠点に在庫を持てるようになり、当日配送が可能となるなど配送リードタイムの短縮にもつながるわけです。
一方でこれまでも売上上位の商品が全体の売り上げの大半を占めているために、業務を削減できるメリットに対し、(商品の絞り込みによる)売り上げ面の影響は少ないはずで、さらに言えば、これまで以上に厳選した商品の詳細な説明などに力を割くことができる体制となるため、今まで以上の売り上げが期待できることからサイトをリニューアルすることにしました。

コンバージョン率アップに成果

――サイトを刷新してから間もなく2年が経過しますが、狙い通りの成果は出ているのでしょうか。

狙い通りの方向には一歩ずつですが、しっかりと進んでいます。ユニークユーザー数は伸び、また、売り上げ面でも成果を出しています。

――売り上げの増加はどのあたりが寄与しているのでしょうか。

刷新前と比べて、コンバージョン率が向上したことが1つ要因としてはあります。紹介商品を厳選し、商品の品質にこだわったことが大きいのだと思います。刷新後はお客様からのレビューの掲載を始めましたが、それらも参考にしながらお客様からの評価が低い商品は掲載をやめるなど商品の入れ替えは常に実施してきました。商品数を絞ったからこそ、1つ1つの商品によりしっかりと目を通すことができるようになったと思います。また、以前のようなロングテール商品は掲載せず、1つ1つの商品について「なぜこれを選んだのか」という理由をお客様に理解していただけるよう商品の特徴を訴求するクリエイティブにもこだわりました。その一環として全商品の商品詳細ページに45秒の商品説明動画を付けたことも最後の一押しとして効いていると思います。この商品説明動画に関してはスマートフォン時代に対応してより進化させています。

スマホ視聴前提の動画へ

――具体的には。

スマホでの視聴を前提とした動画にシフトさせています。「ジャパネットセンカ」ではこれまでも音声が出せない公共の場などでの閲覧も考慮してテロップ表示を付けた45秒の商品説明動画を全商品に掲載してきました。これ自体もスマホでの視聴を意識したものではありましたが、動画の作り方に関してはテレビショッピングと同様に、MC(番組司会者)がしっかりと商品を説明する「ミニテレビショッピング」のような形でした。ただ、その形は大画面であれば見やすいのですが、スマホでは必ずしも見やすいとはいえないと考え、MCは顔を出さずに商品説明の音声で出演し、画面上には商品本体や機能紹介に比重を置いたビジュアルに半年前くらいから切り替え始めました。まだ、すべての動画を切り替えられていないですが、主力商品は随時、取り直しや新規撮影をしております。

――スマホ用動画の効果は。

コンバージョン率でいうと、スマホサイトでは1.2倍くらい効果が出ています。やはり、テレビショッピングの画面の動画よりも、商品の本体や機能をクローズアップする形の方が移動中により見ていただけるようです。また、商品説明動画はPCとスマホで共通ですが、PCサイトでも動画閲覧者のコンバーション率が上がっていますし、商品説明動画としてはデバイスによらず、この形の方が訴求力が高いとみていますので最終的には全ての動画を切り替えていきたいと思っています。

外部モールに初出店

――サイトの刷新によるデメリットはなかったのでしょうか。例えば、商品を絞り込む中で、コンセプトにそぐわない商品などを出てくるわけで、そうした商品の処理の問題も出てきます。

確かに「ジャパネットセンカ」では紹介する商品の品質にこだわり、その基準を厳格にしていますので、お客様からの評価が当社の基準に満たない場合は販売を終了します。また、モデルチェンジのため重複を避けてサイトでの販売を終了することもあります。その場合、商品によっては一定数の在庫量を抱えてしまうこともあります。
そのため、2017年7月に「ヤフーショッピング」に「ジャパネットアウトレット」という当社としては初めて外部モールに出店して別サイトを立ち上げました。ここでは在庫処分品のほか、お客様から何らかの都合で戻ってきた新品同様のキャンセル品や訳あり品を販売しています。売り上げ拡大を意識しているサイトではないため、お客様にはお得な価格で提供できますし、また、アウトレットであっても当然、商品のメンテナンスや納期、お客様への対応などは通常商品と同様に行いますから、お客様からの評価も高く、きちんと機能しています。
このほか、サイト刷新後の2~3カ月後から毎週水曜日に「予約参加型ショッピング」というものを始めました。商品の購入予約者が増えれば増えるほど価格を安くする企画です。売り上げ面では全体に与えるインパクトはそう大きくないですが、お客様にご満足いただける価格で商品を紹介でき、また、企画の特性上、楽しさもあり、企画自体は好評で再来訪者数も大きく増えました。

お客様を“迷わせない”よりよいものだけに絞り込む

似ている商品、2つはいらない

――現状の課題は。

短期的な課題という点では“商品の“厳選”の深め方がまだ十分ではない”ということです。もちろん、現時点でも厳選した商品を紹介しているわけですが、商品の選定、その商品を見せるクリエイティブはまだ道半ばだと考えています。カテゴリーによっては、もっと紹介する商品を絞り込む必要があると思っています。例えばですが、特徴が似ている2つの商品があり、現状では両商品とも優れた商品であるために、どちらも取り扱っているケースがありますが、お客様からするとどちらを買ってよいかわからなくなってしまうわけです。そこはやはり、当社がそのどちらかにきちんと絞り込み、商品の特徴を突き詰めて「こういうタイプが欲しい方はこの商品が一番」だとご紹介することが本来のコンセプトであり、そのようにサイトを進化させていくことが今年のテーマです。現状ではまだ、商品の特徴を明確にすみ分けできていでないケースがありますので全商品ジャンルで見直しを進めていこうと思っています。

――現状よりももっと商品数を絞っていくということでしょうか。

商品の切り口をきちんと整理していく過程で、紹介している商品の取り扱いをやめてしまうこともあると思いますが、逆にこれまで取り扱っていなかった切り口に気づき、増やすこともあると思います。重複しているモノは整理し、足りていないモノは追加して、商品数としてはむしろ、少し増える可能性もあると思っています。

紙とネットの連携を強化

――「ジャパネットセンカ」の今後およびネット販売事業全体の方向性を教えてください。

ECサイトとして目指したいのは「ここに来たら間違いない商品があるサイト」です。当社の通販サイトに来訪されるお客様はテレビショッピングなど他の媒体を見たお客様も多いですが、最終的にはテレビを見ていなくても「ジャパネットのサイトにいけば自分が求めるものが見つかるのでは」と期待して訪問頂けるサイトになりたいです。そのためには「選び抜かれたよい商品が分かりやすく説明されていること」が前提になると思います。そこを目指して今年中に先ほど申し上げた課題をクリアしたいです。
インターネット販売事業全体の方向性としては他の媒体との連携、特にペーパーメディアとの連携を強化していきたいです。私は執行役員としてペーパーメディアとインターネットを担当しているのですが、これまではそれぞれの媒体ごとに動いていた販促策を一部で連動させるようにしました。具体的には昨年8月ころからDM(ハガキ)を送付する前に、どのようなクリエイティブにするか、どのような特性のお客様に配布するかなどを、先に送付したメルマガでテストを実施し、その結果を踏まえてDMの施策を確定するようにしました。従来まではペーパーメディアとインターネットは各々が個別に商品バイヤーと打ち合わせしていましたが、3者で連携しデータを共有することにしました。
DMはメルマガよりもアプローチ可能な顧客が多く、売り上げ面への貢献も大きいですが、コスト面の負担も重いです。一方でメルマガは低コストでABテストなどを行うことができます。そのため、DMを発送する前にメルマガでテストを実施して、レスポンス率などを見た上でDMのクリエイティブや配布対象を決めるようにしました。メルマガとハガキでは媒体特性が異なるため、結果は関連しないかもしれないと思っていましたが、やってみると連動するものがあり、メルマガでのテスト結果をDMに生かすことが効果的であることが分かりました。DMでのアプローチが採算として合うか迷う場合でもメルマガでのテストを踏まえてジャッジできるのは非常に大きいです。この半年はこのような土台部分での連携強化に注力してきました。今後もさらに強化していくつもりです。

――中長期的な目標を教えてください。

当社のインターネット販売の売り上げは伸長傾向にありますが、インターネット市場全体の伸びと比べるとそこまでの爆発力にはまだ至っていません。そこに至るためには先ほど申し上げたように「何か欲しい時に選んでもらえるサイト」への土台固めをしなければいけません。そのためには商品やクリエイティブ、そして当社の強みである「動画」を強化し、インターネット販売の売上高についても当社の全体の売り上げ成長率を超えるよう目指していきたいと考えています。

◇プロフィール

永溪幸子(ながたに・さちこ)氏 1981年3月5日生まれ。佐賀県武雄市出身。佐賀大学卒。2003年4月にジャパネットたかたに入社後、ペーパーメディア関連事業などを担当し、2017年8月から同社の執行役員に就任。ペーパーメディア企画制作部およびインターネット企画制作部を統括する。

取材後メモ

ネット販売において自社が進むべき方向性に悩みを持つ通販事業者は少なくありません。しかし、永溪さんが描く進むべき方向は明確でした。要はECのセオリーは確かにロングテールな品ぞろえですがそれに固執するのではなく、テレビ通販で紹介する商品などと同様に、商品選びのプロである同社が消費者に代わって“目利き”し、ECでも最も良い商品を紹介するという「ジャパネットらしさ」を突き詰めていくというものです。EC専業ではない、従来型の通販事業者がECにおいて本当の意味で正しい答えにたどりついたケースはまだありません。同社が向かうと決めた道の先に“答え”はみつかるのか。注目したいです。

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