ジンズ、美容院と組んで眼鏡を販売 ――店内で仮想試着し、通販サイトで購入

「サロンdeメガネ」ではサービスに加盟する美容院のスタッフが来店客に眼鏡を提案する。その場で“試着” から購入まで可能となる

眼鏡ブランド「JINS(ジンズ)」を展開するジンズは4月から、全国の美容院と連携して眼鏡の販売を開始した。美容院の来店客に対して、ヘアスタイリストがジンズの眼鏡を提案する。店内に商品在庫はないが、ジンズの仮想試着サービスの仕組みを使い、タブレット端末やスマートフォンを使って眼鏡を“試着”してもらう。気に入ったものがあればその場で通販サイトから購入してもらう。ジンズからすると顧客との新たなタッチポイントの構築につながり、美容院にとっては眼鏡の提案で他店との差別化につなげることができる。開始時点で美容院100店舗と連携。年内に全国1000店舗での展開を目標にしている。

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美容院との関係を生かす

ジンズが美容院とともに始めたサービスは「サロンdeメガネ」。このサービスが立ち上がった背景に、美容院との関係づくりやテクノロジーの進化などがある。
「メガネ男子」や「メガネ女子」といったキーワードが広まり始めた5年前頃に、ジンズではこうした言葉に絡めた新しいコンテンツを立ち上げた。それが眼鏡の着こなしをスナップ写真で紹介する「JINSSNAP(ジンズ・スナップ)」。その取り組みの中で美容院やサロンとのリレーションが生まれていった。

「バーチャルフィット」で仮想試着した画像を掲げ るジンズの中里記子氏。美容院にサービスを提案し た際の反応は良いという

ジンズではそうした関係を生かし美容院やサロンのチャネルを使って販売に結び付けられないかと検討したものの、「それをやるには何らかのソリューションが必要でした」と、ジンズデジタル事業部デジタルコミュニケーショングループの中里記子氏は振り返る。
そんな中、ジンズが仮想試着の仕組みを構築。それができたことで「在庫がなくてもバーチャルで試着ができてそこに接客が加わると販売につながるのではないかと考えました」(中里氏)。

それとは別に眼鏡を販売する上での悩みとして、同社のアンケートの反応として「自分に似合う眼鏡が分からない」という声が半数程度あるという。それに対して、客の好みなどを把握している美容院の担当スタッフが提案することで購入を後押しできるのではないかと予想した。こうした思惑で始まった今回のサービスだが、「思いついてすぐ始められるものではなくて、『ジンズ・スナップ』を5年間続けてきたのが資産になっています」(同)と、これまでの取り組みの延長上に立ち上がったようだ。

待ち時間を有効活用する

「サロンdeメガネ」では、美容院のスタッフが客の待ち時間や合間に眼鏡選びをアドバイスする。その際に利用するジンズの仮想試着システム「JINS Virtual-Fit(ジンズ・バーチャルフィット)」では、自分の顔写真をタブレット端末やスマートフォンで撮影してサーバーにアップロードすると、その画像に合わせて2000種類以上の中から眼鏡を“試着”することができる。
仮想試着で気に入った眼鏡が見つかれば、客がQRコードかURLを自身のスマートフォンで読み込み、ジンズの通販サイト「JINSオンラインショップ」で購入手続きを行う。
商品は自宅に届くため、来店客は手荷物が増えることはない。届ける商品にはジンズの実店舗で度付きレンズに交換できる「レンズ交換券」を付けることで、度付き眼鏡を購入するハードルを下げている。配送料は無料で、ジンズの店舗やコンビニなど自宅以外の受け取りも可能という。

この仕組みでは、美容院側には参加費用やノルマは課さず、眼鏡が売れるとジンズからインセンティブを支払う。これにより美容師に眼鏡を提案するモチベーションにつなげてもらう。
「サロンdeメガネ」の専用サイトではユーザーへの案内だけでなく、店舗の参加を呼び掛けている。サービスに加盟している美容院が同サイトにログインすると、「バーチャルフィット」の仕組みを利用できるため、美容師はタブレット端末からサイトを経由して、来店客に眼鏡の仮想試着を提案してもらう。
「試着用の画像は高解像度で作っているので、かなりリアルな試着ができます」(同)というのも特徴で、ゲーム感覚で試してもらうことで、美容院での待ち時間を有効活用してもらったり、会話を盛り上げるのに役立つのではないかと想定している。

眼鏡店以外のタッチポイント

ジンズの仮想試着サービス「バーチャルフィット」は、試着用の画像は高解像度で作っており、リアルの試 着に近い体験ができる

「サロンdeメガネ」を始めた狙いについて中里氏は「お店を無尽蔵に出せるわけではないので、その中で新規のお客様を増やすとなると、眼鏡店以外のタッチポイントがほしいということがありました。新規だけでなくリテンションという意味でも、ジンズ店舗以外のところで眼鏡に触れる機会があればその分だけ購入につながるチャンスがあるかなと考えています」と説明する。
今回の施策の成否を握る重要なポイントの1つに、美容院の“提案力”が挙げられる。美容師にとっても顧客に眼鏡を提案するのは初めて体験となるため、ジンズでは提案を補助するためのツールを用意している。
その1つが専用のヘアカタログだ。「会話のきっかけになれば」(同)と、最新の眼鏡100本と100通りのヘアスタイルを掲載したカタログを新たに制作。眼鏡選びに役立つ知識も載せている。初回分として5000部用意。非売品で美容院には無料で配布し、他の雑誌とともに陳列してもらっている。これ以外にも「メガネ、はじめました。」と書かれたポップやポスターなども用意して無償で提供している。

また、加盟美容院向けに眼鏡の扱いなどについてセミナーを一部始めており、今後は美容師向けに「眼鏡マイスター」のような資格の付与も検討している。

美容院は全国に20万店舗あるとも言われ、販路として大きなポテンシャルを秘めている。スタッフによる提案力を高めれば、サービスが“大化け”する可能性もあるかもしれない。

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